夢みることを諦めないで
お互いに気になる存在でありながら,しずくは小説家,せいじはバイオリン職人という,それぞれの夢を抱き,刺激し合い,ティーンらしく精一杯の力で夢を実現していこうとする姿がなんとも清々しい作品。中でも視聴者を惹きつけてやまない魅力は,新しい世界へ足を踏み入れる描き方ではないだろうか。作品冒頭では,コンビニ,団地,ご近所さんとの擦れ違い,学校,保健室でのお弁当タイム・・・としずくの日々の生活が私たちと大して変わらないかがふんだんに描かれている。そんなしずくがある日いつもの電車に乗っていると,猫が電車に乗っている。猫についていくと,今まで足を踏み入れたことのない住宅街。おしゃれなアンティーク店。煌びやかで神秘的な雑貨たち。そして優しいおじいさんとの出会い。ひとつひとつが未体験で,驚きの連続で,まさにファンタジー。私たちが潜在的に求めている,ありふれた日常からの脱却願望を刺激してやまない。この非日常空間への誘いは,恐らく本作品前半部分最大の魅力でもあり,宮崎作品の秀逸さを物語っている。これは日常生活から一歩勇気を出して足を踏み入れれば、非日常の体験を得られるのかもしれない,と希望を抱かせてくれるだけの力がある。夢をみることをやめないで欲しいというメッセージを受け取った視聴者には,もう新しい世界への扉が開いているのかもしれない。
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