私の過去と娘の未来 - 耳をすませばの感想

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耳をすませば

4.504.50
映像
4.50
脚本
4.10
キャスト
4.40
音楽
4.60
演出
3.50
感想数
5
観た人
8

私の過去と娘の未来

4.04.0
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
3.5

目次

反抗期は誰にも訪れる

これぞ思春期の心境を上手く表現した作品だ。細かい描写に風を肌で感じるような印象を受けた。主人公の少女が感じているごく普通の感情が、私が彼女と同じ年に感じたものと良く似ている。そんな感情はみんなが抱くものなのだろうか。誰かに恋をしたり、側にいるだけで心臓がバクバクして彼に鼓動が聞こえてしまうのではないだろうかと更に焦ったものだ。今日は一言だけど、彼と喋った!と嬉しくて仕方がなかった頃のあの淡い気持ちが記憶の奥底から蘇ってきた。ここまで記憶が蘇ってくるのはこの作品の様々なシーンから感じられる懐かしい風景や空気の匂い、友達の笑い声、その全てが蘇ってきたのだ。

私は反抗期というものを経験したことがない。一般的に誰も通るらしい道だが、私にはそれがなかった。私の母もそう言っていた。珍しいのかもしれない。思春期の時期になっても反抗期らしきものはなかった。なぜだろう。自分でも良く分からないが反抗期というものを経験していないせいか、今現在私の娘が抱えている思春期にある反抗期などの気持ちがあまり理解してあげらない。今私の娘はまさに反抗期だ。何を言っても反抗的な態度をとってくる。父親にまで対抗して逆らう。見ている家族の方が驚いてしまう。娘と父親は性格がソックリでお互いプライドが高く短気だ。私とは真逆の性格をした2人は、もう口も聞かなくなってしまった。お互いが意地を張っているのだ。素直に謝れないのは自分にとってもマイナスになってしまうのになぜこの親子はここまで意地を張るのだろうか。2人が同時に損をしていると私はいつも思う。私は思春期の子供というものがこんなにまで大変だと思っていなかった。どのように接してあげればいいのかが分からない。反抗的な態度にいつも悩まされていた。怒りっぽくなり、急に涙目になりながら反抗的な態度になった時はこっちが悪いのかと思ってしまう。しかし彼女もきっと学校と家庭の中で少しずつストレスが自然に生まれているのだろうと、私は理解し彼女を見守る事にした。今まで長女だから何でも出来るだろうと思い接していた自分を反省したいと思う。子供は成長してもいつでも子供なのだ。

初恋

作品に出てくるような甘い恋愛を私の娘はしているのだろうか。きっと今がちょうどそんな時期なんだと思う。だからこそストレスを溜めて涙するよりも、今しかないこの環境を楽しんで欲しいと私は思っている。好きな男の子が出来て、学校で目が合うとそらしてしまうような気持ちを今はして欲しい。

私が中学生の頃に転校生を好きになったように、私の娘も転校生の男の子に恋をしたことがある。似たような状況に話を聞いた時、自分の初恋の相手の顔が名前と共に蘇り私に微笑みかけてきたような気がした。その顔は、私の1番大好きな顔で、どんな表情かというと満面の笑みを浮かべた時に見せる顔だ。その時にできる片側だけの笑くぼがはっきりと私の目に飛び込んだ。あの頃学校に行く事が楽しくて仕方なかったのも彼がいたからだ。今頃どこで何をしているのだろう。地元の京都に戻ったのだろうか、そんなゆらゆらした波のように数え切れないほどの思い出が浮かぶ。

葛藤と将来の不安

将来への不安も常に感じていたような記憶がある。この先自分はどんな大人へと成長していくのか、それとも成長すら出来ずに亡くなるのか、そんなことまで考えていた。人はいつ死ぬのか、死んだらどうなってしまうのか、、私の頭の中はかなり繊細だった事を思い出したのだ。そして今の娘が置かれている状況を理解出来る様な気がした途端、心がふわっと軽くなった。そうか、こんな感情を今彼女は抱えながら思春期という難しい毎日を送り、葛藤や未来への不安に押しつぶされないように踏ん張って頑張っているのだろう。

作品に出てきた太った猫のように気ままに生きてみたいものだ。自分の居場所がいくつもあり、名前も一つではない。行くその場その場で態度を変えてみたり、表情を変えてみせる、そんな猫が少し羨ましく思う。自由を持っている”あの猫”には、毎日自由と共に危険が伴う。それは分かっているのだけれどつい羨ましく思う自分がいるのだ。同じ毎日を過ごしている私の生活と自由な”あの猫”では、どちらの方が沢山の未来を描くことが出来るだろう。私は自由な時間が全くないわけではない。でも同居という環境が私を苦しめている。ふと思う時がある、もうあの家に帰りたくない、猫のように自由になりたいと。でも現実はそう甘くはなくて私は結局いつものように家に帰る。自由になりたいと考える時にいつもこの作品が見たくなる。猫が電車に乗っている姿や綺麗な景色を眺めなら自慢げに歩く姿が、非常に自身があり気でまるでその景色を自慢しているかのようだ。猫は自由気ままでこんな素晴らしい絶景をいつでも眺められると言われているようだ。主人公が恋や将来について悩むシーンが現れると、私はそこになかった自分の心がふと戻ってくるのだ。そうだ、今は自分のことよりも娘のことだと。それから私はいつもの生活に再び戻るのだ。そんな毎日が続いていく。自分の思春期を思い出しながら今の娘の心配をする私は、結局平凡な主婦だ。

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夢みることを諦めないで

お互いに気になる存在でありながら,しずくは小説家,せいじはバイオリン職人という,それぞれの夢を抱き,刺激し合い,ティーンらしく精一杯の力で夢を実現していこうとする姿がなんとも清々しい作品。中でも視聴者を惹きつけてやまない魅力は,新しい世界へ足を踏み入れる描き方ではないだろうか。作品冒頭では,コンビニ,団地,ご近所さんとの擦れ違い,学校,保健室でのお弁当タイム・・・としずくの日々の生活が私たちと大して変わらないかがふんだんに描かれている。そんなしずくがある日いつもの電車に乗っていると,猫が電車に乗っている。猫についていくと,今まで足を踏み入れたことのない住宅街。おしゃれなアンティーク店。煌びやかで神秘的な雑貨たち。そして優しいおじいさんとの出会い。ひとつひとつが未体験で,驚きの連続で,まさにファンタジー。私たちが潜在的に求めている,ありふれた日常からの脱却願望を刺激してやまない。この非日常空間への誘いは,...この感想を読む

5.05.0
  • yhayashidayhayashida
  • 73view
  • 566文字

もがきながらも成長する少女の姿に共感

1995年のスタジオジブリのアニメ映画柊あおいのマンガが原作本が大好きな主人公、月島雫と彼女が図書館で借りた本をすべて読んでいた少年、天沢聖司との恋と成長の物語。スタジオジブリらしく、登場人物が実に生き生きとしている。映像も美しく、テンポもいい。素晴らしい完成度を誇っているといえる作品だ。ジブリ作品の中でも特に、登場人物の心情を繊細、かつ丁寧に描いた作品といえる。見どころは、主人公の悩み、もがきながらも自分の道を探っていこうとする姿だ。家族と衝突したり、周りに助けられたりしながら、前に進もうと努力する月島雫の姿は、同世代の共感を呼ぶだろう。楽しいのは、天沢聖司のバイオリンと聖司のおじいさんたちの楽器演奏をバックに、月島雫が、カントリーロードを歌うシーン。心が躍り、何とも言えない心地よさがある。この映画の中で、アクセントとなっているシーンといえる。恋愛物語としても十二分に楽しめる。最後の...この感想を読む

5.05.0
  • ayaaya
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  • 520文字

感情移入してしまう!

この作品はヒロインの「しずく」の思春期の女の子の感情がとても素敵に描かれています。「しずく」はあかるく元気な女の子。友達思いで、やさしくて、末っ子らしい天真爛漫なところもあり、それがまた魅力として描かれています。本を読むの好きで、少し妄想癖もあり(笑)そんな「しずく」が顔も知らない一人の男の子を意識しはじめ、恋に落ちていくのですが、現実ではありえない世界観とストーリーが、また面白いですね。あこがれの男の子が、最初はチャラそうな感じで「しずく」と出会いうのですが、本当は誠実で、将来の夢をしっかりと持っているあたりは、観ている側もどこかであこがれてします。そんな男のです。ストーリー中盤で男の子がバイオリンを弾いていると、その男の子のおじいちゃんとその仲間たちが、演奏に加わり、プチセッションの用になる場面は、何度も巻き戻して繰り返し見ました。イケメンでバイオリンが弾けるなんてかっこよすぎます...この感想を読む

3.53.5
  • Qou0710Qou0710
  • 57view
  • 533文字

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