広大な舞台ナイロビに対して、ちっぽけなテーマ - ナイロビの蜂の感想

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広大な舞台ナイロビに対して、ちっぽけなテーマ

3.23.2
映像
3.4
脚本
2.8
キャスト
3.2
音楽
2.8
演出
3.0

目次

内戦や戦争をテーマとしていなかった

「ナイロビの蜂」という題名で、戦争や内戦の事を訴えた映画だと思っていたのですが、まったく違ったテーマの映画でした。妻のテッサが、製薬会社の陰謀に気づき、事の真相を突き止めようとする作品となっています。この製薬会社の陰謀と言うだけのストーリーだったのなら、もう少し納得したのかも知れませんが、内戦で食べ物や病気、住む場所に苦しんでいる人達を背景にしているために、製薬会社の陰謀と言う話が、あまりにも小さい事のように見えてしまい、この作品で言いたかったテーマがさほど重要でないと、強く感じます。

個人的に思った感想ですが「ナイロビの蜂」は、作品として失敗だったのではないでしょうか?製薬会社の陰謀とともに、夫に対する妻の愛を描きたいしているのですが、かんじんのテッサの愛が全く伝わってはきません。その理由として、テッサは、主人公の子供をお腹に宿し、あんなに危ない場所に行っています。その結果として夫を守るため、巻き込まないためと、社会的な事ばかり主張していますが、大切にしなければいけない、自分の子供と夫を死なせてしまったのです。私には、納得の行かない映画でした。

レイチェル・ワイズがキュートです

作品としては、いまいちで感動もないのですが、女優のレイチェル・ワイズがとってもキュートで彼女の表情やしぐさにくぎ付けになってしまいます。大胆な彼とのベッドシーンのキレイさや、妊婦としての美しい姿が、女性本来の美しい姿を見たような気がします。

冒頭シーンのテッサは、夫となるジャスティンに、猛烈に抗議しますが、このような強い主張をし、不正を絶対に許せない女性にピッタリで見事に演じています。ただし、不正を暴くという女性にしては、知性を感じさせてくれないのが、残念な所でした。始めのうちのテッサは、積極的で攻撃的な女性として写りましたが、物語の中ほどになると感情をあらわにするところや、ずうずうしく人に質問するところからは、知性を感じるどころか、精神的におかしくなってしまったのかと思いました。レイチェル・ワイズの演技は素晴らしいのですが、この作品としてのテッサの描き方は、上手いとは言えません。

リアル感のある映像と臨場感

どこの場面を切り取っても、映像と臨場感は、素晴らしいと思います。テッサの死体置場には、ゾッとするほどリアルでしたし、その反対に、ナイロビの自然を美しさは画面を通して伝わってきます。そして、本当の日常風景のように思える、ナイロビの人達の生活空間は、まるで本物としか言いようがありません。映画のセットと全く感じさせない舞台を用意し、まるでナイロビにいるような感覚が味わえました。そして、イギリスとナイロビの対照的な日常生活は、観ている者に何かを訴えているようでもありました。

なんのために、難民たちを映し出しているのか?

ナイロビの人達は、生活に困り、病気や飢えに苦しんでいます。そして、内戦や戦争で何人もの人が犠牲になっているはずです。そんな状況の中で、白人の女性1人が亡くなったからと言って、悲しんだり感動させたりできるでしょうか?申し訳ないですが、私にはそんな気持ちは起きませんでした。テッサがナイロビの人達の事を考えて、いろいろな行動を起こしているを、ナイロビの人達と仲が良いというだけ、困っている人達に援助をしたりする善意は素晴らしいと思うのですが、ただそれだけとしか思えませんでした。

ロンドンにいれば幸せに暮らせていたのに、自分の意思でナイロビに行き、そこで、苦しんでいる人達を助けるということは、善意ではありますが、インパクトに欠けます。

なぜ、この映画の中で難民たちやナイロビの子供たちを映し出しているのか?も、とても疑問として残ります。もしも、住人が、人体実験という過酷な現実にもっと焦点をあてていたのなら、テッサと同じ気持ちになれたのでしょうが、そうではありませんでした。地元の人達は人体実験や医薬品で、誰一人として苦しんで様子が描かれていないのです。「ナイロビの蜂」の中で、レイチェル・ワイズことテッサのしている行為が、理解できません。。

優しいけれど、振り回されている夫

テッサの夫であるジャスティは、情けない夫だと感じます。この作品を見る限り、テッサに振り回されっぱなしで、ただ優しいだけした。これでは主人公として役不足な人物ではないでしょうか?もしもですが、彼が悪の親玉であったのなら、もっと面白くなったのかもと想像します。また、テッサが夫思いの妻だったのですが、映画の中で描かれている彼女からは少しも感じ取ることができませんでした。

構成が工夫されている

時間系列で、物語が進行しているのではなく、過去にもどったり、現代に戻りながらストーリーが展開させて工夫された構成だと思いました。見ていて混乱する事もありますが、飽きさせずに、考えながら作品を楽しむことができました。良く練られている構成でした。

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社会派とラブロマンスの両A面

医療支援と称して先進国から食い物にされるアフリカを救おうと活動する女性、テッサ。彼女はその過激なまでの活動のさなか、不審な死を遂げます。妻の死に疑念をぬぐいきれない外交官の夫ジャスティンは、自身の立場が危うくなるのも構わず、彼女の活動の足跡をたどっていきます。アフリカが抱える、貧困の負のスパイラルに切り込んだ社会的側面と、お互いを守ろうとする夫婦の深い愛情を描いた人間ドラマとの、2つの側面を持つ作品で、どちらもきめ細やかに描かれていて両立している、非常に優れた作品だと思います。映像のつくりにはこだわりが感じられます。特に印象に残ったのは、色彩感覚の緻密さです。風景と人物との全体的な色の調和はごく自然に配置されておりほとんど意識させられることがありませんが、ふとした瞬間にその繊細さに気づかされて感心します。エンディングについては賛否両論あるかもしれません。ジャスティンは、殺されることがわ...この感想を読む

4.04.0
  • 93view
  • 494文字

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