いつの時代に行っても「行動派仁希」と「知識が豊富な有理」はいいコンビ - バビロンまで何マイル?の感想

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バビロンまで何マイル?

4.754.75
画力
4.25
ストーリー
4.50
キャラクター
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設定
5.00
演出
4.50
感想数
2
読んだ人
3

いつの時代に行っても「行動派仁希」と「知識が豊富な有理」はいいコンビ

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
4.0

目次

知らぬ地でたくましく生きようとする力

小さい頃、雑木林でウルトラマンとバルタン星人に扮した有理と仁希が遊んでいた。池に溺れたノームを助けた。ノームがお礼にやってきたのは、12年後!ソロモンの指輪の改訂版をはめて赤く光ったら、恐竜がいた時代へ。仁希が持ち込んだ新型ウィルスで、恐竜が滅びてしまうというおもしろい説になっていました。仁希は、バイタリティーのある人だなと感じずにはいられないほど、たくましい。「毒キノコじゃないのか?」という有理に「大丈夫大丈夫、試しに昨日食ってみたけど、まだ生きている」と仁希は返事しています。きのこを山ほど、山から採ってきて、図鑑で調べてなど悠長なことをやっていられません。恐竜時代の知識ですから、何が生息していたのかわかりません。だから、試しに食べてみるということを仁希はしています。昔は年上のお姉さんや友人に伝え聞いて、遊びの途中でお腹が減ったら、野イチゴを食べたり、グミとか食べたりしたものでした。今ほど、食べ物屋さんも周りになく、あるのは自然ばかり・・・。そうなると、やはり何か買いに行こうではなく、周りにある木の実などを食べようとします。仁希も有理と一緒に遊びながら、自然のものを食べています。きっと彼らも食べられるものと食べられないものをきちんと知っていたのだと思います。自然のなかには、食べてはいけない植物がたくさんあります。今は、スーパーに行くと、食べられる野菜が売られています。世の中の便利さを垣間見る瞬間です。有理と仁季は、何とかお腹を満たすために食べる物を探しています。お腹を満たさないと、動けなくなることを知っているからです。恐竜の時代に動けなくなることは、死を意味しています。指輪が光るのがいつなのかわからないから、青く光る瞬間を待ちながら、全然知らない地でもたくましく生きようとします。小松左京さんの「復活の日」までさりげなく登場しています。今度読んでみようと思いながら、本を読み進めると、有理と仁希は、お次は15世紀のイタリアへ。

実在した人物をもとにしてあるので、何かと役に立つ

あの有名なチェーザレ・ボルジアとルクレツィア、海外ドラマになったり、漫画になったりして話題にかかないふたりです。川原先生の漫画では、レオナルド・ダ・ヴィンチ、デジデリウス・エラスムスも登場。歴史上の有名人が出てきます。豪華メンバーです。巡礼者は、この頃マントを着て巡礼していたという細かい設定もちゃんと出てきています。この頃の時代を想定して物語を描くってすごいことだなと思います。城も洋服もこの頃に生きてみていたわけではないのに描かれなければならない。史実をどこまで盛り込むのか、有理と仁希が脇役にならないように上手に描かなくてはならない。刺客が潜り込んだという深刻な場面でも血を前にして、仁希が小人の足跡を壁につけています。小学校でよくやった遊びです。曇った窓ガラスについてた足跡を見て、最初びっくりしましたが、同級生から種明かしをしてもらい、手でそんな足跡が作れるのが不思議でした。仁希は動揺しながらも、なぜか壁に足跡を作ります。緊張感の漂うシーンなのに現代の遊びがちょっと入ってきて、当時はどんなことをして遊んでいたのだろうと気になります。大人の知らない子どもたちの間で伝承される遊びってありますよね。手遊びも地方がかわると歌まで変化する。時代が変わると、前のバージョンに最新の何かの歌が混ざっていたりして、長くなった手遊びになっていたりします。お寺のおしょうさんの手遊びが「忍法使って空飛んで、東京タワーにぶつかって、グルグル回ってじゃんけんぽん」がついて長くなっていました。これには衝撃でした。東京タワーが将来的には、スカイツリーに変化したりするのだろうか。地方になると、ここが大阪タワーになったり、福岡タワーになったりするのだろうか。ありうるなどと思ったりして、時代が変わると手遊びも変わってくる。言語も変わる。それがいいのか、悪いのかはわからないけど、世の中はいつも変化があるのだというのを川原先生の漫画は教えてくれます。

2巻が読んでみたい!バビロンまで飛んでほしい!

この「バビロンまで何マイル?」の漫画には、恐竜時代と15世紀イタリアしかないわけなのですが、すごい満足感があります。細かいところまで、文字がびっしりなので、1冊読むのに小説を読むくらいの時間がかかります。見落としたところはないかなど読み返していると、また時間がかかる。「空の食欲魔人」の方が1/3ほど本が厚いのにすぐに読めてしまう。でも、この文字びっしりなのを読ませる力がある。それが川原泉さんの魅力なのだと思います。花とゆめコミックスで1巻が出たときには、うれしくて、2巻が出るのをいまかいまかと待っていました。月日が流れて、文庫で完結していた日には、びっくりすると同時に連載的にはどうなっていたんだろうと少しいらぬ心配をしてしまいました。有理と仁希のコンビがすごくいいので、ここで終わりでも満足感はあります。でも、もっと他の世界に飛んだところも読んでみたいと感じているのは、私だけでないはずです。ここで終わりなのは、もったいない。完結した作品なんだよねとわかっていながらも、まだバビロンまで飛んでないので、是非その時代も描いてほしいです。これは切なる読者としての希望です。

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他のレビュアーの感想・評価

続編を待ち続けている

多分、ボルジア編を描いたら燃え尽きてしまったのだと思う。設定としては無限に(作者には酷かもしれないけど)お話を作り得るのに。歴史ものというのは、作家のメンタルとか色々なものを疲弊させるものらしい。しかしながら本作品の緻密さのおかげで、ボルジア家のことを知ることができたし、ルネッサンス期の有名人(笑)があんなにも同時期にいたのだということを認識した。しかも、ネットで検索する限りの情報で恐縮だが、ねーちゃんに見惚れてタマゴ割ってた偉い先生は本当に頭が大きかったのらしい。そんなトリビアは世界史では習わないので、肖像画を見るたび「うぷぷ」となりそうだ。あの二人をまたタイムトラベルさせてもらえるなら、是非とも古代中国でお願いしたい。土器作ってるあたりの日本だって面白いかもしれない。さみーけど、皇帝時代のロシアだってきっと面白く読ませてくれるに違いない。なぜに続編がないのか?「気が向いたら描くよ」的...この感想を読む

5.05.0
  • にゃうちゃんにゃうちゃん
  • 87view
  • 526文字

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