正しく考え、判断することの難しさ - 十二人の怒れる男の感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

正しく考え、判断することの難しさ

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
4.5

少年の父親殺しの罪が死刑になるかの裁判。12人の陪審員たちがある部屋でその裁判について議論をする様子を描いている。1957年アメリカの映画。

少年は有罪か無罪かを議論するため、ある部屋に集められた12人の陪審員。12人のうち11人が有罪を主張するが、ただ一人、無罪を主張する者がいた。それを聞いた有罪を主張した11人たちは…。

この映画の見どころは、正しく物事を考え、判断することが、いかに人間にとって難しいか、というところだろう。裁判は、陪審員たちには実際には無関係な問題といえる。それゆえ私事、固定観念にとたわれた決定を、何度も下しそうになる姿が実に見苦しく、かつ人間らしい。

過去に起こった、見てもいない事件を知ろうとすることは、困難で危険を伴う。そのストレスにさらされた12人の陪審員たちの逃げ出そうとする心理や、逆に立ち向かおうとする心理が丁寧に描かれていて、惹きつけられてしまう。この映画のシーンはある一室のみ。一見退屈してしまいそうだが、そこにいる12人の陪審員たちの熱がすごい。セリフの巧みさ、言葉の投げ合いの間合いの良さ、それらがある一室ににいるだけであることを忘れさせるほど、物語を奥深いものに作り上げている。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

人間は誰しも完璧ではない

裁判員制度の難しさを、この作品以上に的確に解りやすく描いている作品を知らない。評決は12人全員一致でないと提出できないのだが、11人が有罪であると判断する中、1人だけ無罪であると主張する。この場合における無罪というのは、被疑者の17歳の少年が罪を犯していない、とするものではなく、判断できない、という意味だ。もしかしたら罪を犯しているかもしれないし、犯していないかもしれない、しかしどちらにせよ、今法廷で聞いてきた話や提出された証拠、証人の話では、疑問の余地が残る、よってもう一度法定で議論する必要がある、というものだ。日本とアメリカでは裁判の仕組みが違うが、裁判員の判断によって一人の人間の人生が決まるのは同じだ。そのことを深く考えさせてくれる。一幕劇としても、弁論が戦う劇としても、一見の価値はある。派手なアクションシーはなくても思わず引き込まれて、あたかも自分も同じ部屋にいる錯覚に陥る。途中で降...この感想を読む

5.05.0
  • 96view
  • 416文字

感想をもっと見る(4件)

関連するタグ

十二人の怒れる男が好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ