満島ひかりの演技力
この作品を観るとなんとも清々しい気分になる。
満島ひかり演じる主人公は父親の病気をきっかけに、父親のシジミの加工工場を継ぐ、という話だが、まず、シジミの加工工場という設定がなんとも地味だ。そして、同じく登場人物もどこにでもいそうな感じでみんな地味だ。
主人公は自分の人生を「中の下」と言っている点も面白い。自虐ではなく、開き直っているのだ。だからこそ、ここぞという時に力の出る人物なのだと思う。
主人公はシジミの加工工場を立て直すために、まずは働き手の気持ちの改革に取り組んだ。いつもやる気のないパートのおばちゃん達、、、そんな人達と一緒に自分が作詞した社歌を歌うシーンが一番好きだ。内容は社会や自分の人生への嘆き、そして「シジミのパック詰め〜」という、一見社歌とは思えない内容の歌だが、自分の腹の中にある愚痴や不満を朝みんなで大声で歌うことで、みんなすっきりした気持ちで仕事に臨めるのだ。歌い終わった後の主人公達の顔はスカッとしていて、思わず笑ってしまった。
そして最後には父親は亡くなってしまうのだが、主人公が父親の骨壷を持っている凛とした表情に心が動かされる。
そして、川に骨を撒いた後に、空を見上げて笑顔になる主人公は、確実に物語の初めよりも生き生きして人生を送っていることに気づかされるのである。
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