洋の東西で普遍！　三角関係の方程式 - 天使とデートの感想

人は良さそうだがちょっとトロい青年ジム・サンダース（マイケル・E・ナイト）は、分不相応な化粧品会社社長令嬢パティ・キャットことパトリシア・ウインストンとの婚約披露パーティで、独り浮かない顔。

いい年をしてミュージシャンになりたい、などと夢を語るタイプのありがちなフリーター、ジムをなんとか更正させるべく、婚約者のパティは彼を自社の営業職に就かせ、真面目に働かそうとするのだが、羽根が傷ついて墜落した小悪魔な天使のために台無しになってしまうお話。

それにしても、フィービー・ケイツ演じる社長令嬢と、エマニュエル・ベアールの天使を両天秤に掛けるなんて羨ましすぎる。死んでしまえ、ジム！　と思っていたら、本当に彼は脳腫瘍で天使はお迎えに来ていた、というのがオチ。

上目遣いのまなざしでキスを迫り、パ・パ・ピピピ……とさえずることしかできず、フライドポテトを口いっぱいに頬張り、実は羽根が治っているにも係わらず、ジムと居たいがために不器用な手つきで包帯を縛る（天使なのに仮病）。Ｅ・ベアール天使の小悪魔テクには、ジムのみならずとも魅了されてしまう。彼女はこの前年、仏映画「愛と宿命の泉」で天使と見まがうばかりのキュートさを披露したのち、ハリウッドに進出して本当に天使役を射止めた。

「天国から来たチャンピオン」にせよ「ゴースト／ニューヨークの幻」にせよ、不慮の事故でこの世に思いを残した主人公が、仮の姿でやり残したことに再トライするストーリーは、悲願を成就することがすなわち、この世との別れ、愛するひととの決別に繋がる切なさが感動を呼ぶ。しかるに我が主人公ジムは、夢を語るだけでなんら努力しない。

どこかでこんな話を呼んだ覚えが、と記憶をたぐると、浮気でいい加減な高校生諸星あたるの下に鬼娘のラムが降臨したのが1978年のことだった（「うる星やつら」高橋留美子）。回を重ねる毎に影が薄くなったが、あたるにも黒髪ショートのパティのような勝ち気な彼女がいた。

女性が結婚、出産し、育児をするのは重労働だ。長い髪を手間暇かけて染めている余裕もなくなり、勝ち気にならざるを得ない。そんな女房を横目にイクメンを装いながらも、旦那は明るくブリーチしたくるくる巻き毛のお姉さんに、天使や鬼娘のようなスーパーナチュラルな魅力を感じる（ちなみにＥ・ベアールも地毛はブルネット）。

これこそが有史以来、人類の男女が巻き込まれてきた三角関係の普遍の方程式。そして本作のテーマであり、男の永遠の夢、と言えば女子からdisられるかな？