東ベルリンから来た女,ベルリンの壁,ドイツ
冒頭から、主人公の女医のバルバラは滅多に笑わず、愛想がない女性だなと感じていた。
毎日自転車で通勤し、仕事をこなす。何が楽しくてこの人は生きているのだろうという表情をしながら。この時は彼女が受け取る紙袋の意味が全く分からず、怪しい女性だなと思っていたのだが、西ドイツに住む恋人からの物資の援助であることがしばらくしてわかった。そして、恋人と逢瀬を重ねる主人公は、冒頭の愛想がなく楽しくなさそうな女性ではなく、女性としての輝きの人物になっていたことが伝わってきた。
東ドイツから西ドイツへの亡命を目論む彼女だったが、医者としての責任感もある。そもそも、自分が本当に西ドイツに行きたいのか、向き合うことをして来なかったように思う。確かに西ドイツで暮らした方が生活は豊かになるが、彼女は医者という仕事を放棄しなくてらならず、果たしてそれを望んでいたのだろうか。
また、彼女の上司の男性医師は、どんな人でも時間でも患者を救おうとする医者の鏡であって、その心穏やかな男性が、西ドイツに住む恋人と対比されて描かれている。
彼女が亡命するか否か迷ったのは、その医師の存在も大きように感じた。
結局、自分に助けを求めに来た少女を代わりに亡命させるのだが、見送った時の清々しい表情から、彼女の強さを感じた。
そして、翌日何事もなかったかのように病院に出勤する彼女には脱帽した。
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