戦術と戦略の違いを見せつけられるロボットアニメ
他のロボットアニメとは一線を画す『コードギアス』
『コードギアス』はわざわざ語るのも憚れる、名作中の名作アニメだ。
分類としてはロボットアニメになるのだろうが、この枠組みが正しいものなのか少々疑問が残る。
というのも、『コードギアス』の見どころはロボットによる戦闘シーンだけには収まらないからだ。登場人物全てが主人公のようにも思える人間模様、次回放送への後ヒキ、ブリタニアの圧政に対するレジスタンスの反乱劇。これほどまで重厚な構成からなるアニメは、昨今では絶えて等しい。
ゆえに『コードギアス』は名作との賛辞を受けている。
実際、『コードギアス』放送当時、夢中になって視聴した人は多いのではないだろうか。ルルーシュの戦略がぴたとハマれば、爽快なまでの自軍(=黒の騎士団)の勝利が約束される。だが、スザク操るランスロットが登場すればそれも危うくなり、視聴者はハラハラする。
随所に挿入される戦闘シーンで視聴者の心を釘づけにしたかと思えば、恋と復讐の間に揺れる同級生シャーリーのエピソードが挿入されたり、妹ナナリーが誘拐されたりと、順風満帆なルルーシュの戦いを脅かす展開が、何度も繰り広げられ全く安心ができない。
また、和平の道を提示したユフィを誤ってギアスにかけてしまい、イレブンの虐殺に走らせたことは、コードギアス一期二期通しての最大の悲劇であるといえるだろう。こういったエピソードの一つ一つが、二期である『コードギアスR2』の伏線となり、のちのルルーシュの運命を大きく変えることになる。
主人公たるルルーシュの魅力
ルルーシュは、漫画『DEATHNOTE』の夜神月とよく比較される。いずれも知能を武器に世界へ混沌をもたらす主人公キャラクターであるためだが、両者の間には大きな違いがある。
夜神月には天才であるがゆえに人間らしさがなく、突然「新世界の神になる」と理想を掲げられても読者は全く共感ができなかった。
だが、ルルーシュは違う。ギアスを行使することによって作る覇道は、あくまで妹であるナナリーの幸せのためだ。
弱者となってしまったが故に父親から否定されたナナリーを、兄であるルルーシュは守っていくことを誓う。いわゆるシスコンであるのだが、そのギャップもまた面白い。冷酷無比なゼロの正体は、妹想いの兄。ややコミカルだが共感のもてる設定が、ルルーシュの魅力といえるだろう。第二期『R2』になって、ルルーシュのやってきたこと全てがナナリー自身に否定されることになるとは知らずに…。
また、ルルーシュを担当した福山潤の演技も素晴らしい。福山潤は男性にしては声が高く、少年役を担当することが多い声優だった。だが、低めでやや演技がかったような喋り方をするルルーシュを見事に演じ、自身の役の幅を広げることに成功した。戦略がぴたりと決まったときの哄笑は、特に必聴であろう。
ルルーシュの話とは少しずれるが、スザク役の櫻井孝宏やカレン役の小清水亜美も素晴らしい演技をしている。
男っぽい喋り口調のカレンを演じることで小清水亜美は役の幅を広げているし、ベテランで演技に定評のある櫻井孝宏はスザクの難しい役どころを見事に演じた。スザクがちょっと強すぎたせいで視聴者から色々言われたらしいが、それは櫻井さんのせいではないので頑張って欲しいと思う。
スザクとの確執、ユフィの悲劇 歯止めの利かない展開
もう一つ『コードギアス』が他のアニメと一線を画しているのは、取返しのつかないことが多々起こる、ということだ。
普通のアニメでは主人公が何かミスをやった場合、その後関係を修復できたり、挽回できることが多い。
だが、『コードギアス』にはそれがない。ルルーシュ(=ゼロ)の行うことはほとんど取返しのつかないことで、それがやがて大きな火種になってしまうことがある。
前述したユフィのエピソードが特に顕著なものであるが、スザクとの関係がわずかずつ悪化していくことも大きなポイントだ。
ルルーシュは、当初スザクをナナリーの騎士にしようとしていたが、ランスロットのパイロットであることに気づき計画は頓挫。親友であるスザクがランスロットに搭乗し幾度となく邪魔をしてくる中で、ルルーシュの考え方も変化していく。幼少時代の親友が憎い敵へ変わっていく様は、視聴者の心に切ない感情を与えただろう。
それはアニメ・漫画によくあるご都合主義とは真逆のもので、新時代の創作物が持つ”現実らしいリアルさ”への方向性を位置づけた作品といえるだろう。
物語は『R2』へ
『コードギアス』ではスザクにゼロの正体がバレてしまったところで物語が終わり、二期である『R2』に物語は続いていく。
そのため一期を取り上げた本考察内でオチがどう、エンディングがこうとは語れないが、一期クライマックスのブラックリベリオンは、アニメ1クールの結末にふさわしい内容だった。特にルルーシュ・C.C.の搭乗するガウェインの存在感は圧巻で、一期中の強敵の立ち位置にいたコーネリアを圧倒する様は爽快の一言である。
一期の結末は二期を意識したため中途半端にはなってしまったが、それも二期が約束されたアニメの仕方のないところと諦めてもらいたいところだ。
『コードギアス』シリーズはまだ、始まったばかりだ。
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