トニオ・クレエゲルの評価
トニオ・クレエゲルの感想
芸術と俗世界の間で揺れ動く感情
主人公のトニオ・クレーゲルは自分の中の、芸術に惹かれる心と俗世間の中の一般人的な部分がせめぎ合うのを自覚しており、それが物語の主題となっています。堅実な北ドイツ的な商人の父の感覚と、イタリア的な奔放で芸術的な気質の母の部分。その両方が自分の中にあると自覚し、それゆえに学校でもちぐはぐな感覚を持ちます。自分と異なる、俗世間の中の健全な友達や美しい少女に惹かれるもやはり違いが自分との違いを自覚させられます。かといって自分の求める芸術の世界でも、その中途半端さからいまいち馴染むことができません。その相克が主人公の変わらない悩みともなります。大人になってかつての憧れていた二人を再び見かけますが、やはり住む世界が異なると感じ、芸術の世界に生きようと主人公は決意します。