偶然の祝福の評価
偶然の祝福についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
偶然の祝福の感想
エッセイと小説のイイトコ取り!文学職人小川洋子全部乗せ!
2000年刊行、この時期を勝手に中期と名付ける1988年のデビューから12年、彼女の初期作品「揚羽蝶が壊れる時」や「完璧な病室」は繊細はあるが修飾語過多で正直なところかなり読みにくい。若手女流作家という肩書もあり、その時期独特の美しさはあるが、読み手を選ぶ作品が多かったように思う。 10年の歳月を経て、表現力へのこだわりは修飾語の選別よりも語彙の洗練に向かっていった。2000年以降の彼女の作品は初期のゴテゴテ感は影を潜め、むしろスッキリしていて文章そのものは誰にでも読みやすいものなっている。独特の少し不思議な世界観は残したままで、しかし読み手は選ばない、という方向に進化したのだ。2003年の「博士の愛した数式」でブレイクする間際のこの時期、多くの言葉を使って表現の限界に挑んできた彼女は、少ない言葉で豊かな表現をする境地への扉を開いたと言えるだろう。この傾向はさらに進んでいき、2010年...この感想を読む