海と毒薬のあらすじ・作品解説
「海と毒薬」は、1957年に発表された遠藤周作による小説である。 この小説は、太平洋戦争で捕虜になった米兵が、九州帝国大学の医学部生により生体解剖された事件をモチーフとしたものである。持病の治療のためにある病院に通院している語り手が、実はその病院の医師・勝呂が、生体解剖実験に参加をしていたことを知ることから、物語ははじまる。当時、勝呂は、2人の教授の派閥争いに巻き込まれ、B-29に登場していた戦闘員の生体解剖実験に関わることになる。 著者である遠藤周作はクリスチャンであり、キリスト教では確固とした倫理規範が存在し、それに基づいて行動するが、無宗教主義である日本人は、個人の確固たる規範を持たず、集団心理に基づいて行動する傾向があるのではないかという考えを持っており、小説に反映したとされている。小説に出てくる生体解剖実験に関わる人物が、いたって普通の人物として描かれているのは、そのためである。