東京奇譚集の評価
東京奇譚集についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が3件掲載中です。
各項目の評価分布
東京奇譚集の感想
なにであれそれが見つかりそうな小説
過去に彼に起こったいくつかの出来事、という始まり方この本には5つの短編が収められている。その一番初めの「偶然の旅人」の冒頭部分で、作者村上春樹がこう述べている。「過去にいくつか自分に起こった不思議な出来事を綴ってみたい」としている。だからこの本の全ては村上春樹が体験した不思議な出来事を文章にしたとずっとそう思っていたのだけど、最近読み直してみてそれは違うのではないかという気持ちになった。一番それが顕著なのが「品川猿」だろう。色々考えた挙句、恐らく彼が体験したのは一番初めの「偶然の旅人」だけなのではという結果になった。多分それが正解なのかもしれないけど、そう考えると随分自分が分別たらしいみすぼらしい中年に成り果てたと感じてしまったものである。とはいえ、実際彼の身に起ころうと起こるまいと、架空であろうとそうでなかろうと、ここに収められている物語全ては愛すべきものであり、時々読み直したくなる...この感想を読む