きいろいゾウの感想一覧
西 加奈子による小説「きいろいゾウ」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
原作のみ
「きいろいゾウなんかいるん?」このタイトルをはじめて見たとき、ボクはこう思いました。皆さんはどう感じたのでしょうか。内容は夫婦の物語です。私は、映画を見てから、この原作を読みました。登場人物は、統一性がなくて、なにかいい意味で不安定でした。この作品からは、自分の過去や未来にとらわれることなく、現在をちゃんと見つめてということが伝わってきました。なにか1文1文が大切な言葉なのだとも感じました。そして、クライマックス。ムコとツマの悲しみが同調する場面は、ボク的に少し冷めてしまいましたが(これは映画でも同じ)、映画じゃなくて、この原作だけ見れば面白いと思います。
憧れの夫婦
ムコさんとツマは本当に素敵な夫婦だなーと作品を通してひしひしと感じました。前半は、ゆるーい田舎の空気と、ムコさんとツマのほのぼのとした生活風景が流れ、ふたりが『世界不思議発見』の話をしてるくだりとか、生活観あっていいなーと、とっても穏やかな気持ちで読んでいきました。後半に向かうにつれてはいろんな事を考えさせられました。夫婦であり、毎日一緒にいても、分からないことなんてきっと沢山ある。でもそれも含めてその人を愛することができるか。とか、夫婦の形について改めて見つめる機会を与えてもらったような気がします。そしてクライマックスで、一気に鳥肌立ちました!すばらしい!結婚、夫婦っていいなーって思いました☆こんな夫婦になりたい!
夫婦の愛情物語
背中に鮮やかな鳥の刺繍を持つまだまだ売れない小説家ムコさんと、動物や植物をはじめ周りに存在する様々なものと対話できてしまうツマさん夫婦の物語です。都会を離れ夫婦で移り住んだ田舎の一軒家、最初は何もかもが幸せだった夫婦生活。ところがムコさんあての都会からの手紙を機に段々と二人の間に溝のようなものができてしまう。前半がほっこりとした内容だったので、ほんわかストーリーのまま終わるのかと思いきや、読み進めていくうちにどんどんと重量感を増すストーリー展開でした。かといって重苦しいわけではなく、純愛とも呼べるストーリーに、ファンたー要素がうまく絡みあって読後は幸せな気分になれました。個人的にはキーになっている童話の存在がいい味を出していると思います。
感動物語
夫の名は無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名は妻利愛子(つまり・あいこ)。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合う都会からやってきた若夫婦が、田舎暮らしを始めます。背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。夏から始まった二人の話は、ゆっくりゆっくりとその年の冬まで進んでいき、「ある出来事」を機にムコがツマを残して東京へ向かう。それは背中の大きな鳥に纏わる出来事に導かれてのものだった。泣きたいならこの本を読むべきです。きっと、温かい気持ちにつつまれます。
夫婦のひとつの形。
ファンタジーな要素が入っているのにとっても現実的な感じがする。ツマが動物や植物の声が聞こえたり、月の満ち欠けに圧倒的に支配されているちょっと不思議ちゃん。ムコは売れない小説家で、大人な感じだけどツマに言わない過去がある。お互いをあまり知らない2人が夫婦として暮らすんだけど平和な日々も一通の手紙でだんだん崩れていく。その表現がなんとも切なく、でも引き寄せられるように読んでしまった。2人の周りにもいろんな夫婦がいて、それぞれ、事情があって夫婦のあり方みたいなものを教えてもらった感じがする。ムコが東京に行ってからの話の流れはグッとくる。でも、西さんのお話はどれも最後のオチがいい。最後はホッとさせてくれる。読んでよかったし、これからも何度も読み返す一冊になった。