アカペラの評価
アカペラについての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が2件掲載中です。
各項目の評価分布
アカペラの感想
山本文緒『アカペラ』レビュー
ゴンタマとカニータこの小説の視点人物は二人いる。崩壊しかけの家庭で、大好きな祖父との二人暮らしをあっけらかんと満喫している中学三年生のタマコ(通称ゴンタマ)と、その担任である三十代前半の「デモシカ」教師蟹江清太(通称カニータ)だ。タマコが「就職」と書いた進路調査票を提出したことがきっかけとなって、カニータはタマコに深く関わり始める。物語はタマコ(ゴンタマ)パートとカニータパートを交互に繰り返しながら進む。二人の登場人物の視点から書かれた小説は決して珍しくないが、このゴンタマ・カニータほど絶妙な組み合わせはそうそうないだろう。二人は中学生と担任教師という立場ではあるが、家庭環境もあってか大人びたところのあるタマコと、私服なら大学生にも間違えられるほど若いカニータは、学校内での関係に捉われないまっすぐな目線でお互いを観察している。カニータの目を通じて「もう子供ではないタマコ」の姿が、タマコ...この感想を読む