歪笑小説の感想一覧
東野 圭吾による小説「歪笑小説」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
東野圭吾の小説、キャラクターの役割と作品のメッセージ
東野圭吾の小説のキャラクター東野圭吾の小説にでてくる主人公が、私は大好きだ。小説において主人公のキャラクターは重要な役割を持っている。東野圭吾の小説には正統派の主人公も出てくれば、そうではないキャラクターも登場する。まずは正統派の主人公。私が思い浮かべるのは、日本橋署勤務の「加賀恭一郎」。所轄の刑事なのに独自の視点で事件と被害者の関係を紐解いていく。地道で時には遠回りしながらも、最後は真相に必ずたどり着く彼の姿は読了後にさわやかな気持ちにさせてくれる。「浪花少年探偵団」では、「忍センセ」とクラスの子供たち。きっぷの良い大阪弁と忍センセの気質が見事にマッチしていて、引き込まれる。正しいことは正しいという忍センセと共に、加害者に向き合い、生徒の親や生徒自身が事件に関係している時の忍センセのコメントに共に涙することができる。歪笑小説における作家のキャラクター共感しやすいこうした作品以外で、東...この感想を読む
ブラック加減が面白い!
怪笑、毒笑、黒笑~と続く「~小説」シリーズです。小説家、出版社の舞台裏を描いた短編集。本好きの方なら、必ずや楽しく読める内容かと思います。ブラック加減も程よく、かなり笑わせてもらいました。登場している作家たちは実在の人物をモデルにしているの?と想像をふくらませて読みました。意固地、空気読めないのにびっくり。ブラックユーモアの中にも、とても感動的な話が入ってきてちょっとほろりとしてしまいます。「小説誌」で中学生に本音を語ってしまう青山とか。熱海圭介や唐傘ザンゲの小説、本当に読んでみたいなぁ巻末の出版案内や、表紙を見返して再度笑わせてもらいました。
ブラックな笑い
東野さんのほかの本を読んで、シリアスで切ない恋愛ミステリーを想像されるなら、本書はちょっと違います。ほかにいくつかの類書がありますが、これは東野さんの小説のうちでは「名探偵の掟」「怪笑小説」などの系統に属する本です。本書では「小説家」「編集者」「出版業界」などを舞台にして、登場人物と彼らにまつわる家族や周囲の人を巻き込んだドタバタコメディです。いずれも多少極端に描いてはありますが、小説家や出版業界の笑えない現実を笑える形で物語に仕立ててあります。現実の作家業や文学賞の裏や人間関係、出版のサラリーマン的な現実、これを短編の形で中心となる人物を話ごとにずらしていって、全体で一つの小説に仕上げています。「現実はこんな風なんだろうなあ」と思わせられると同時に、コメディチックな話はまさに「歪笑」にふさわしい笑いを与えてくれます。
舞台は小説業界
「笑」シリーズ第4弾作品。著者である東野圭吾さんのブラックな笑いあふれる連作短編集です。出版業界の実情、作家稼業の厳しさやつらさや喜びを巧みに混ざりこんだエンターテイメントに仕上がっています。小説を作るのに関わっている様々な人々について笑いありで知りたい人がいればぜひとも見て欲しい作品。読んでいても飽きが来ないし、著者の本への愛情なども伝わってきて、様々な面で心がホカホカ温まってきたような気がします。見落としてしまいがちなところ表紙と巻頭をちゃんと見てください。見落としがちな部分なので気づかなかった人も多いと思います。まぁ漫画の要領で表紙や裏表紙などを細かくチェックする私なので見落としませんでしたが。