月とサンダルのあらすじ・作品解説
月とサンダルはよしながふみによるボーイズラブ漫画で、のちに「西洋骨董洋菓子店」や「大奥」などがテレビドラマや映画の原作にもなったよしながふみの商業漫画デビュー作。第一話は1994年「花音」(芳文社)に掲載された。全2巻で、2巻は同人誌で発表した後日談をまとめて2000年に刊行された。 高校生の小林と、クラスメートの兄・鳴海東洋の恋愛模様がストーリーのメイン。ストレートな性格の小林と、眉目秀麗だがプライドが高くて性格が悪く、「ジャイアン」とあだ名される東洋が反目しながら惹かれ合う様子が描かれているが、並行して小林がかつて好きだった教師の井田とその恋人、板前の橋爪の恋愛も同時進行で掲載されている。どちらもゲイカップルならではの周囲の目や職場や両親へのカミングアウトといった重いエピソードも多いが、よしながふみ独特のコミカルなタッチで悲壮感なく描くところが読者の共感を得、よしながふみ初期の傑作として評判は高い。
月とサンダルの評価
月とサンダルの感想
淡々と食べたり笑ったりする、よしながふみのデビュー作
よしながふみの商業デビュー作品です。フツーの高校生・小林は世界史の先生・井田に好意を持ちますが、彼には同棲する仲の恋人・橋爪がいます。成さぬ恋、井田をあきらめた後に紆余曲折の末結ばれる鳴海東洋との恋、井田と橋爪の関係…いくつもの恋を、作者はかぎりなくやさしく、見守り続けるように描いています。よしながふみといえば目下「うまいもんを語らせたらページがつきない」漫画家となっていますが、この話にすでにその片鱗が伺えます。井田の恋人・橋爪の職業は板前、小林の趣味は料理で、井田に夕食を作ってあげたり、自分と東洋の弁当を作ってしまったりしています。ホンワカムードはさることながら、登場人物たちの悩みは現実的なことばかりで、一読よしながふみの「ぶれなさ」を実感する、ヤるだけじゃないBLの骨子がしっかりしたお話です。