バーバーの評価
バーバーの感想
トラヴィスじゃない孤独な男
コーエン兄弟はあるきっかけが偶然が積み重なって重大な事件に発展してくという犯罪映画を得意としているが、私にはその中ではこの作品が最高傑作ではないかと思う。派手なところがないが、静謐で寂寞とした感じに満ちている。主人公のエド・クレインは仕事を機械的にこなすだけの寡黙で無欲な理髪師だが、今までの単調で無意味な生活に飽き果てて大金を得るべく妻の浮気相手を恐喝をするが、それが相手に発覚し、殺害するに至る。そのあとの経過は複雑でエド・クレイン以外には知りえないことばかりだが、結局彼は最後まで皆から誤解されたまま、静かに電気椅子に送られていくのだ。この孤独感には共感を覚えずにはいられない。この最も凡庸な男の極限的な経験は結局は誰からも理解されず生きていくしかない我々の姿が映しこまれている。