西行花伝の評価
西行花伝の感想
恋愛がとても美しく描かれている
西行の伝記を読むつもりで、この本を手に取ったのですが、読んでいるうちに、これは恋愛小説だなあと思いました。それも切なく美しい恋物語。私は恋愛をここまで美しいと感じた話を読んだ事がありません。桜の花の描写や西行の歌の雰囲気が、美しさを引立てているのかもしれません。時代背景や彼の武士としての足跡も描かれてはいるのですが、ストーリーが面白いとか、西行の人生がどうだとか、この際どうでもいいんじゃないか?と思うほど、待賢門院への思慕の表現が印象的で素敵です。話の中に創出された、岩絵の具がキラキラ輝く日本画のような空間に身を置き、読むというよりも観るといった感覚を楽しむ小説だと思いました。