その言葉に隠された真実の愛
平凡な家庭に訪れる不幸というありふれたシナリオのはずだった。
とっても幸せな家族。子供が2人いてラブラブな夫婦。そんな日常にやってきた姉の癌という不幸。壮絶な毎日の始まりだったという始まり方。妹が出来て成長し姉の癌も再発してしまうところを何気何しに見ていたらその妹は姉を救うために生まれたと言う事を知った時正直、スペアなんてすごいこと考えたなと驚きました。そして、自分だったら嫌だな、ととっさに思ってしまいました。しかも幼い頃から針をグサグサ刺されるなんてたまったもんじゃないです。なので、妹アナが母親に対して訴えるといったときは自然と応援してしまいました。ほかに見た方もそうなのではと思います。そこに込められた別の意味があるなんて思ってもみなかったですし、むしろ疑問さえ湧かず、アナを応援し、母親はひねくれてると思ってしまった自分がいて恥ずかしいです。すべては愛のある行動だったのにそんな事考えもしなかったですね。姉ケイトの思い出のアルバムとともにいろんな視点からだんだんと紐解かれていく感じが気持ちよく映画の成り行きを見守る事が出来ました。
母親であるサラをみる。
この作品は特殊なようでごく普通の家庭にもある愛のすれ違いを描いているのかなと思います。母、サラは娘の、長女のケイトの、命を救いたい伸ばしたい一心で妹、アナに体にメスや針を入れる事を強要してしまいます。ケイトの命を救いたいという気持ちはアナにも当然ありました。姉のことは大好きでしたから。でもケイトは十分幸せを感じている事ともう妹や母親に迷惑はかけたくないという気持ちとで延命したくないと思っている事を母は気づきませんでした。いや、もしかしたら気づいていたのかもしれません。けれど、本人から聞いたとしても娘の死なんて認めたくなかっわだと思います。そして、どんどんかたよった愛に変わっていってしまいました。サラの教育の仕方や愛情の注ぎ方は客観的に見たら偏った、ひいきしているように見えます。しかし、サラにとってはケイトを助ける、延命するためにしてきた事、当たり前の事をしているだけ。
なぜ、最初に普通の家庭でもある事かと思うと書いたかというと、例えば結婚当初はラブラブだった夫婦も子供が出来てラブラブではなくなり、子供中心の生活になっていく。これも同じような事なのかなと感じたからです。母親になるという事で本人からみたら当たり前の事をしているだけが、旦那さんにとっては愛を感じられなくなってしまったりするんだろうと思います。
家族愛。
家族の愛って本当に素晴らしいものだなと観ている人に痛感させます。裁判を申して立て、裁判中まで、アナは姉から頼まれてやっている事だと隠し通して自分にだって選択の意思はあるんだ!と大人たちに言っていました。ひいきしている事を引き目に延命を止めようとします。それがどうしてもサラは納得がいきません。それは自分にとってケイトのためにしてきた事が否定されているように思えたんだと思います。先ほども言った通りそれがサラにとっての当たり前だったからです。否定されている事にばっかり目がいって、その言葉の裏側までサラは追いつかない。残念ながらわたしも追いついていませんでした。アナはいつだってケイトの事を思って行動している事。話している事。冷静に考えれば、そうですよね。お姉さんの死を望む妹なわけがありません。今まで、姉が生きることを助けていた妹が。お母さんにどんなに言われたってアナが訴えを取り下げなかったのはケイトを愛しているから。命をつなぐ事に必死になりすぎて本人の意見なんておそらくどうでも良くなっていたと言ったら言い方が悪いかもしれませんが、本人の意志を聞く耳なんて持っていなかったのでしょう。
家族とそれぞれの無条件の愛の形とは。
家族とはというのをとても考えさせられます。愛していることを表現する事は自分の幸せを押し付けるのではなくてその個人の選択を尊重すること。例え自分にとって悲しい選択であってもそれは本人にとって幸せの選択かもしれないということを忘れてはいけないということを考えさせられました。しかし、この作品ではそれは命に関わることですから、サラのように周りの意見や相手の意見があることを忘れたり無視したりして取り乱してしまうのが「普通」なのかもしれません。不幸に見えがちなケイトが一番冷静に物事を見ていたように思います。誰が1番愛してたかというよりは愛の形は様々なんだということ、愛することに対しての考え方の違いというのが見えて面白いのかなと思いました。また、人生の選択において何が正解で、何が不正解なのかというよりは幸せになる事が選択する上で大事であるというのを伝えたかったのかなと感じました。この作品はわたしに自分にとっての幸せを相手に押し付けるのではなくて相手にとっての幸せもきちんと聞き入れることそれこそが愛なのだと教えてくれました。
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