あの頃のみゆきちゃん
高遠とはじめちゃんは似ている?
「常に隣にありながらも、決して交わることのない平行線」・・・漫画
「光と陰」「コインの表と裏」・・・ドラマ
これらは、地獄の魔術師高遠が金田一に言っている言葉である。
お互いを永遠の宿敵と認めてはいるものの、殺人を行う高遠と事件を解決する金田一、信念は真逆のように感じるが、高遠は更に自身と金田一を比べ「双子のように」と表現をしているほど。一見似た者同士だと言っているように捉えられる。ただ、金田一側からのこういった発言はない。
私は正直、似ていると断言はしにくいものの、根本的な【人間の軸】となる部分は似ているのではないかと思っている。
まず、金田一はじっちゃんの血を受け継いでか、異様なまでに”正義感”が強いと言える。私なら、身の回りで起こった事件には関わりたくないだろうし、ましてや「ここがおかしい?」とあれこれ詮索したのちに(それくらいはするだろう)、わざわざ担当の警察官に伝えようとか話を聞こうとか、一緒に捜査をしたいなんて、そんなバカなことはしない。そんな”正義感”が強い金田一と高遠はやっぱり真逆じゃないか!と思う方もいると思うが、本当にそうだろうか?
高遠は、殺人を犯して逃げ回っているが、理由のない殺人は犯していない。むしろポリシーがある。(決して、理由があれば殺人を犯しても良いと言っているわけではない。)後に高遠は、殺人の方法やトリックを提供していく側に回るが、彼自身、復讐の手助けをすることで自身の”正義感”を満たしてるのでは・・・と、私は考える。
金田一と高遠、二人の行動を考察したところ”正義感”という言葉がどちらともに現れ彼らを表現したが、特に違和感はなく、共に”正義感”の元で行動を起こしていると考えられる。”正義感”の現れ方が極端に違うだけで、やっぱり二人は似ているのだと感じた。まあ、極端に違うということが問題なのだが。
みゆきの身体が華奢になりつつある・・・。
金田一少年の事件簿も他の漫画と同じで、日が経つにつれキャラクターの描き方が変わっている。
はじめの頃の、男も女も全員が肉厚な身体をしていた描き方は個人的に好きで、今読んでもミステリーっぽい雰囲気を確実に表している。時代に合わせて読みやすく?変えて行ったのかもしれないが、イマイチ犯人や被害者にも感情移入しにくい。
特に問題なのが【みゆき】である。
豊満なボディラインが特徴的だったのが、最近では華奢すぎる。あの、触り心地の良さそうな肉感の描き方は芸術だったと言えるだろう。あの頃の【みゆき】の一ファンとして、胸や尻はともかく、腕や太もも顎のラインなど、すべてが今では細すぎるのだ。悲しい。
金田一少年の事件簿において、みゆきの存在は剣持さん明智さんをも上回る大事な存在と言える。みゆきはどんどん助手のような立場で金田一について周り、どんどん金田一の”正義感”に染まりつつある。初めに書いたように、金田一の”正義感”は異様なので、そんな彼に染まることは一読者として避けてもらいたいところだが、おっちょこちょいなみゆきが出すヒントなしではなかなか解決に至らないのもポイントである。ただ、【みゆき】の役割としては、読者や金田一を癒すことである。ストーリーの中で金田一を癒すことはできても、視覚で読者を癒せていない。
もうこの件に関して、どうすることもできないので、あの頃の【みゆき】にまた会いたくなったら一巻を手に取るようにしている。そして、思うのだ。やっぱり芸術だと。
今後の注目は・・・場所!
勝手な感想だが、一通り近い人物の過去や巻き込まれた事件に関しては描き切った感がある。(高遠との対決は本筋と言っても良いレベルなので置いておきます)となると、”人”ではなく”場所”が重要になってくるだろう。
オペラ座館がついに燃えてしまったので、再びオペラ座館に変わって”因縁の場所”を描いて欲しいところだ。あの、「また来てしまった」や「戻って来た」が聞きたいのである。ワクワク、ゾクゾクするあの感覚がオペラ座館に終止符を打たれたことでもう経験できないのかと思うととても悲しく切ない気持ちになったものだ。
長く続いているミステリー小説や漫画の特徴は、”戻る場所がある”ことではないだろうか。主人公たちの”戻る場所”は、読者からしても”戻る場所”であり、読み物の中で「この場所知ってる」感を味わえるのはとても貴重な体験なのだ。
2回目3回目と同じ場所での新たな事件を描くことは、何よりも作者の本気を感じられる。話の質は落ちないだろうかと勝手に期待混じりの不安を抱えて見たり、地形や建物の構造をある程度知っている分どんなトリックが仕掛けられるだろうかと先読みを試みてみたり、「この場所知っている」を味わいながらページをめくっていくワクワクは他では経験できないだろう。本筋(高遠との対決)が忙しいかもしれないが、読者の新たな楽しみを作っていただきたい。
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