死ぬまでに読んでおきたい作品 - Papa told meの感想

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Papa told me

5.005.00
画力
3.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
5.00
演出
5.00
感想数
1
読んだ人
1

死ぬまでに読んでおきたい作品

5.05.0
画力
3.5
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

女性向け漫画だけど色恋沙汰がない

女性漫画誌で連載している女性向漫画ですが、色恋沙汰がなく、ドキドキ感がないのが特徴です。もちろん、恋愛の話題が出てくる場面はあるのですが、どちらかというと「わずらわしい人間関係や、恋に縛られないで自由になりたい」というテーマの方が強調されているので、ドキドキではなく、それを客観的に傍観している視点であることが多いです。失恋をして恋に疲れた人や、ガンガン攻めていくパワーのある漫画には疲れた、という人にとっては、癒される内容が多いです。「次頑張ろう」みたいな希望のある終わり方をしている話ばかりなので「辛いけど頑張ろうかな」と思えます。日常生活に疲れて、軽井沢の別荘で数ヶ月過ごしましょう(人生の休息)みたいな避暑地的な作品だと思いました。人生に疲れた、という時に何度でも読み返したいです。

哲学的な漫画で読み切りなのが魅力

一般的な「おもしろい漫画」とは線を引く哲学的な漫画で、いわゆる「楽しい、おもしろい、わくわく」という感じの娯楽を求めている人には合わないですが「世の中、理不尽だよな。間違ってるよな」と疑問を持っている人には受け入れられる漫画です。ファンタジー的な要素を取り入れつつ、ちょっと懐かしい(バブル期の)雰囲気もあって、ピンクハウスなんかを着ていた人には馴染み深い絵柄だと思います。主人公は小学生の女の子、母を早くに亡くし、小説家の父と二人暮らしです。基本的にはこの設定を忠実に守って、1話完結の読み切り漫画なので、どこの巻から読んでも話が繋がる、というところも魅力です。1巻を読んで、すぐ25巻を読んでもOKで、違和感がないのがすごいです。絵柄にも違和感がありません。

主人公に憧れる

この作品を読んで「いいなあ」と思う人は、男女問わず「知世ちゃんに憧れる」のではないでしょうか。知世ちゃんは小学生にしてはしっかり者で、自分の頭で考え行動しています。お父さんに愛されていて、そのことに感謝もしています。お母さんがいない、という寂しさはありますが、誰もが知世ちゃんのように「何かが欠落したような気持ち」を持っているので自分を重ねやすいのかもしれません。知世ちゃんになりたい、と思うのは、外見がおしゃれでかわいい、頭がいい、性格がいい、というのもありますが、何より「大人がそのまま小学生になったような女の子」への憧れ、つまり、今からもう一度小学生(知世ちゃんの姿)になって人生やり直したい、という気持ちが反映されているんじゃないかな、と思います。

小物使いが秀逸

「papa told me」を読んでいて思うのは、出てくる小物がかわいい、ということです。このあたりは、作者の榛野先生のセンスが光る部分です。知世ちゃんが集めている雑貨や、包装の箱、リボンなど、普通の人はなんとも思わずに捨ててしまうような些細なグッズが「とてもいいもの」なのです。言ってみれば、これらの些細なものの魅力に気づけない人は、この漫画を読んでもときめきを感じることはないでしょう。表面的なものの見方しかできない人や、数字でしか物事を測れない人など、これらの「些細なものの魅力」というキーワードであぶり出すことができるのでは?と考えさせられます。

100点満点の幸福な人は登場しない

主人公の知世ちゃんは「母を早くに亡くした子」で、お父さんは「妻を亡くした人」。ここからスタートして、物語には「人生100点満点」の完全に幸福な人は一切登場しません。たまに出てくるのは「自分は幸せだ」と信じ込んで平気で人を傷つける人だったり、自分が幸せだということに気が付けない自称不幸な人、だったりします。全巻を通して読んだ感想として「みんな傷のある場所は違えど、それぞれみんな傷があり、フェアなんだ」と感じました。自分ばかりが完全に不幸な人ではないし、誰かが特別に選ばれて幸福になっているわけでもない、ということです。また、一時的に幸福を感じても持続はしないし、不幸が永遠に続くものではないです。一番欲しいものはいつも手に入らず、自分が欲しかったものを手にした人はその価値に気がついていない。「それじゃ辛いじゃん」と思いますが、どうやらそのことに「気づく」ことで人は前進するようです。知世ちゃんはそんな人たちを客観的に見る立場にいることが多く「ま、そんなに悩まないでお茶しましょ」という感じで優しく笑いかけてくれます。「悩んだってしょうがない、みんなそうだよ」というメッセージがこめられているような気がします。

時代に流されない普遍的なもの

1987年から連載開始、それ以来ずっと同じテーマで変わらず連載されています(途中、休載はあったが現在も不定期に連載中)。なぜそんなに昔から全く同じ題材、全く同じテーマで今なお新鮮に感じることができるのでしょうか。知世ちゃんは流行を無視して、リボンなどの装飾のないクラシックなワンピースを好んでいますが、それと同じように「クラシックでベーシックでシンプルなものは、時代に流されずに愛され続けるから」だと思います。LGBTの問題や、女性蔑視問題など、今話題になっている様々な問題が、すでに連載当初から作品に盛り込まれていました。今までも人気のある作品でしたが、今後もっとたくさんの人に読んでいただき、些細な幸福を見つけるきっかけになればいいな、と思います。

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