おっこの活躍に勇気をもらえる - 若おかみは小学生!の感想

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若おかみは小学生!

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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おっこの活躍に勇気をもらえる

4.04.0
文章力
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
5.0
設定
3.0
演出
2.5

目次

小学生が若おかみになるという奇想天外な設定

主人公のおっこちゃんが、ふとしたことから祖母が経営する旅館の若おかみになって、さまざまなトラブルを解決していく成長ストーリー。両親を事故で亡くした小学6年生の女の子を引き取って一緒に生活していくことになる祖母の関峰子。峰子の経営している旅館を若おかみとして手伝ううちに、さまざまな問題が主人公のおっこに降りかかるが、持ち前のガッツと好奇心、優しさや行動力、そして、まわりの大人や幽霊(!)に助けけられて、問題解決していくストーリー展開が面白い。主人公のおっこの本名は関織子。皆からは「おっこ」と呼ばれている。交通事故で両親を亡くしたおっこだが、引き取って一緒に住むことになる、祖母の関峰子。峰子の経営する旅館「春の屋」の若おかみとして毎日修行に励んでいるおっこ。毎シリーズ毎に、おっこが成長していく姿が大人の私が見ても、痛快ですがすがしくて楽しめた。一冊に一つの話が集約しているので、疲れず気軽に読めるところがいい。学校図書でも図書館でも必ず紹介されるほど有名なこの若おかみシリーズはシリーズだけに子供の夏休みに読ませようとずっと思っていた。某有名子役も中学受験合格の話題になっているときに、幼稚園高学年だったか、小学低学年だったか、読んではまっていた本として紹介されていたので、私も娘に読ませようと思ったきっかけだった。若おかみシリーズと検索すると大抵が小学中学年向けと紹介されているのだが、愛菜ちゃんが幼稚園時代に読み始めたというから、驚かされた。

次々と巻き起こる難題に引き込まれる

ストーリーとしては、幽霊なのに友達みたいにくっついて助けてくれるウリ坊や、ライバルにありがちな大旅館の跡取り娘のお嬢様など、分かりやすいキャラクター設定があるので、女の子にはすんなり入りやすい。お客さんにいたってはとくにそうである。そして女の子にありがちな、自分が好きな男の、自分を好きな男の子など出てくるのも、人気の出る要素だ。私自身もいつのまにか好きなタイプの男の子が登場すると、恋の行方が気になった。娘も読むわきで私も読み始めたが、主人公のおっこは優等生でもなく、どちらかというとドジで世間知らずなところも親近感があって応援したくなるキャラクターだった。娘も学校では優等生でも人気者でもない、普通という言葉が一番似合う女の子だが、そんな子たちにおっこが人気なのもうなづける。金銭感覚や友達なども庶民なので、等身大の私たちの小学校にいたであろう、そして今もいるであろう女の子がおっこなのだ。旅館ということで、毎シリーズが一癖も二癖もあるお客さんの登場で、その問題解決に乗り出すのだが、最初からうまくいくことがなく、読んでいるこっち側もいつのまにか、お姉さんのような気分になって応援したくなっている気分にさせられる。おっこが主人公なので、素人の私は、どうしたっておっこびいきになるし、おっこのライバルのお嬢様はかわいくないし、正直キライになるのだが、作者の令丈ヒロ子先生は、さすがプロ、このお嬢様のライバルも最後は憎めないようにセリフや行動にさせている。そうじゃないと小学生の女の子がお金持ちでお嬢様で、上から目線の子はみなキライになってしまうのだろうし。ライバルのお嬢様も、気難しいお客さんも、和菓子屋の同級生も時としておっこのために力を貸すシーンがいくつも出てくる。お客さんも霊感のつよい頭ぼさぼさのおじさんのような18歳だとか、性格に難のある子供と父親とか、ホテルの御曹司の若造だとか、親と真逆な太り気味な女の子とか、超ワガママな人気子役だとか...。そんな癖のあるお客さんと対峙するおっこがまた面白いほど、痛快で健気でかわいいのだ。そんなおっこをみて、そこはちゃんと周りの大人が得意分野を発揮してフォローするところも気持ちいい。問題あるお客さんも、最後は会心するというベタな終わり方も、スカッとする。スカッとしないと小学生向けのお話にはならないので、こういう単純な締めでいいのだと思う。まさに「ワン・フォー・オール&オール・フォー・ワン」の話のなのだ。子供のために与えた若いかみシリーズなのだが、改めて子持ちのママとなった私が読み返してみてみる。

実際は、若おかみなれる小学生もいないし、幽霊も見えて、話せる小学生もいるわけではないけれど、主人公の「おっこ」の人の気持ちを読み取る気持ちと行動力が私たち大人にも必要なんじゃないかと思わせてくれるいい本だと改めて思った。

おっこのような女の子になってくれたら、嬉しいなとチラッと思ったりもする。お母さんとなった私が、読んでもおっこを娘としてみるのではなく、自分も小学生の時代にタイプスリップしたような感覚になるのが、全シリーズにはまってしまう理由なんだと思う。しかも温泉街で東京からやってくるお客さんが多いので、住んでいる場所はちょっと田舎なのではないかと思う。神社の木に登ったりするシーンもあるのだが、私の子供の頃も、神社の境内は子供の遊び場だったり、木登りなどしてたので、懐かしい気分になった。

私自身地方の田舎出身なので、そういう東京から来る人の匂いにドキドキしたりするおっこの気持ちがわかるのでなおのこと共感できたかもしれない。子供向けの本なので、残酷なシーンもなく必ずハッピーエンドになる爽快感があるので、安心して途中のハラハラドキドキの過程も楽しめるのだと思う。最初、おっこの両親が交通事故で亡くなったと書いてあったので、いつか読み進めたら、事故の残酷なシーンがあったり、涙なしでは語れないお別れのシーンがあるのかと、不安も期待もなかったわけじゃなったが、全然なかったのだ。まあそこは小学生向けだからいいのだ。子供の本を、親の私が借りて読んでいるのだ。切ないシーンは中学生向けの本になったら、徐々に出てくればいいのだ。

いつの間にか自分も成長できる物語

若おかみは小学生 花の湯温泉ストーリーから始まってスペシャル編も含めると23巻もあるのだが、23巻まで読まなくても充分楽しめる本だと思う。おっこも最後のほうは東京の彼氏ができたり、海外にまで行ったりとだんだんと大人になっていくところも面白い。実際私の娘は小学4年の夏休みに、スペシャル編の2巻と途中の台湾編は読んでおらず、パート1から20まで読んで、ひとまず若おかみシリーズを終えて満足げであった。後で知ったことだが、若おかみシリーズはテレビでもアニメ放送がされているそうだ。そして映画化も決定されたそうである。でも私には、本で充分だ。いや、もしかして後で子供に見たいと言われたら、私も見たくないわけではないけど。でも先に本を読んでおいてかった。目で見て簡単にセリフや風景を理解するよりも、字で追って、おばあちゃんの恋愛話やウリ坊の過去や、温泉街の匂いなど想像して自分なりの感傷に浸れるのが本の良さだからである。娘にもそれを望んでいる。おっこの驚いた時の声やおばあちゃんの立ち姿など、字だけで想像をしてみてほしかった。20巻の最後には作者の令丈ヒロ子先生も、こんなに長く付き合ってきたおっこと離れるのは寂しいと書いてあった。私も妹を見送るような姉のような気持ちだった。同じ青い鳥文庫でも人気の「黒魔女さんが通る」シリーズで「若おかみシリーズ」とコラボしている作品も出ていたり、それはそれで、黒魔女さんから読み始めた娘の友達としばらく、この話で盛り上がっていた。社会人になったおっこにも会ってみたいような、会ってみたくないような、そんな余韻に浸れる作品だった。

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