小説における殺す側と殺される側についての考察 - Goth 夜の章の感想

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Goth 夜の章

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小説における殺す側と殺される側についての考察

4.04.0
文章力
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ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
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4.0
演出
3.5

目次

暗黒系の犯人についての考察

暗黒系における猟奇連続殺人事件では、若い女性たちが殺されています。夜も被害を受けています。本人は気が付いていません。犯人は夜のお気に入りの喫茶店の主人でした。

その主人は少なからず表に立つとき、誠実で人がよさそうな性格に見せていたのではないでしょうか。夜が言う主人の認識は、でしゃばらないといったものです。夜が拾った犯人の手帳には、被害者に声をかけて車に乗せたという記述があることからも推測できます。

逆に、主人の猟奇殺人犯としての顔はどうなのでしょうか。なぜ、書き留めていたのでしょう。それは、暗黒な顔を隠すため、落ち着かせるため、自身が世間で生きていくには必要なものであり、猟奇殺人は必要な作業であったのではないではないかと思いました。僕が夜を助ける、見つけるため、主人と会ったとき、僕は主人と心を通わせることができた気がしたようなので、僕が行なった推理は正しかったと思います。そして、僕と考え方が似ていると思った主人は信頼に似た感覚を僕に対して持ち、喫茶店を黙って出ていったのでしょう。僕もまた同じように感じ、もうこの街には姿を現すことはないと言い切ったのだと感じました。隠したい感情があっても完全に隠すこともできず、欲求は出てきてしまうのなら、最低限の欲求を改善、解放したいと考えたのだと感じます。 

この事件のキーワードに若い女性と山という単語があったように思えます。

主人が狙った被害者は、夜が水口ナナミの服装に似せた格好をした結果、さらわれたことから若くおしゃれを楽しんでいるような女性だと思います。そういった女性に対して嫌悪や若く魅力的な女性に対し優位にたちたいと考えたのかもしれません。そのくらいの年代への感情が強くあったのだと感じます。もしくは暴れられたときに対応がしやすかったから、騙しやすいということも考えられます。

どうであるにしても、犯人の二面性のある性格の持ち方は、人間には二面性があるものだというメッセージ性を持っていると思えてきます。良い人に見えても、その人に裏の顔があったとしてもおかしくありません。それがどれくらい強いインパクトのあるものであるのかがわからないけれど、あるものなのです。

また、異常と呼ばれる人たちにも考えや溶け込むための努力をしている面があるのだと僕と夜を通じて考えさせられる小説だと思いました。自分の姿をいかれてると思われないように取り繕うことをしなければ生きていけないのだと、暗示しているように思えてきました。

夜が異常な事件に興味を持つ理由についての考察

異常な殺人事件が好きという夜は、なぜ好きになったのか理由は2つあると思いました。一つ目は、彼女の姉の事件からです。異常な事件が好きという感覚は、自分の姉を殺したのは自分なのではないかという罪の意識、姉を思いながら9年間生きてきた彼女ならではの感覚があるからだと感じます。自分の罪の意識さえも、夕としての感覚や記憶と共に心の奥底にしまいこんだ彼女は、夕としての罪の意識から異常な事件、殺人という人の命に係わる出来事に心の奥底から心の叫びとして、惹かれるのではないでしょうか。

二つ目は、子どもの頃の経験と夜としての感覚に由来すると考えられます。よく似た双子は、一卵性双生児だと考えられます。その遺伝的な性格はほぼ同じといえたでしょうが、環境によって変化するでしょう。首吊りの遊びを思いついたことが、遺伝的な性格の方で考えつかれたものだとしたら、双子にそういった感覚があってもおかしくないはずです。夜が首を吊っていることを考えると夜のその風景が夜としての感覚を思いながら、夕がその考えの足跡をたどるようにしていたのかもしれません。

僕と夜()の事件に惹かれる理由の違い

この物語の主人公の「僕」という少年が殺人事件などに興味が惹かれる理由とはまた違う理由だといえます。この物語は二人の人物、僕と夜()の殺人事件など異常性のある人の心理に惹かれる思考への理解や楽しみを思いながら読むものだと感じます。

二人の性質は対極の位置に存在します。人を殺したいと考える僕と人に殺されたいと考える夜()の感情が、異常な殺人事件に引き合わせると思わせてくれます。僕が記憶で、夜()に彼女の実家から持ってきたという犬の首輪をつけてあげるというシーンでは、僕がつけてあげる側で、夜()がつけられる側でした。この関係は二人が殺す側と殺される側という性質を物語っているのではないかと思いました。

また、暗黒系では、殺人犯など特殊な人間に対する僕の感情について描かれています。いけないことをしている自覚はあるが、直す気もなければ、自分の考え方を改めるつもりもないと感じられます。

僕はこの性質が他人からすれば気味悪がられるということに気が付いており、二人には性質の違いがあることについて気が付いているようです。しかし、夜は前者については気が付いていますが、後者については気が付いていないようです。きっと、僕が彼女にその違いについて明確に言葉で伝えることはないのだろうと思いました。彼女の犯人たちに対する鈍さはこの小説に穏やかさと天然なかわいさをもたらしてくれるものでしょうから。

 

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