新築の家に、みんな興味津々! - みんなのいえの感想

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みんなのいえ

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キャスト
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新築の家に、みんな興味津々!

3.03.0
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.0

目次

家を建てるのも、コメディだ。

「みんなのいえ」を視聴した感想です。
三谷幸喜監督らしい、上品なコメディ映画だと思いました。面白かったです。

新築の家を建てる際のドタバタコメディですが、全体的に落ち着いた雰囲気で、大人から子供まで楽しめるような作品だと思いました。

唐沢寿明さん演じるデザイナーの柳沢と、民子の父であり、ベテラン大工の長一郎のチグハグなやり取りと、どちらにも顔を立てようとして空回りする直介。
そのドタバタのやり取りが終始続きます。

長一郎を演じた田中邦衛さんも、味のある演技をしていたと思います。
「おれは、インチなんかで家は立てられねえ」みたいなセリフが、自然に出てくる人なんだなと思いました。
ベテランの日本の大工の、誠実な仕事への姿勢が演技から感じられました。

最初は素人とバカにしていた柳沢と打ち解けていく様子が、見ていて気持ちが良かったです。
最後に柳沢と意気投合して、二人で丘の上から家を見ているシーンも良かったです。

また、直介を演じた田中直樹さんも、芸人とは思えないほど演技がうまいと思いました。
優しくて気を遣いすぎの直介を、自然に演じていたと思います。
一ヵ所だけ柳沢に一喝するシーンがあるのですが、普段が優しいだけに、ドキッとさせられました。

また、地味に劇中劇の「おとぼけマンション」も面白かったです。

必ず「それは妻だ!やめろ!」ととぼけるんですよね。笑ってしまいました。
中井貴一さんを、この為だけに使っているのが、なんとも言えません。

また、細かいのですが、声優の山寺宏一さんが出演しているシーンも面白かったです。

新築の家を妬んで嫌なことばかり言ったり、最後に子供に落書きさせたりして、思わず笑ってしまいました。

義母に小便小僧を贈られたら、飾らない訳にはいかないだろう…


タイトルの「みんなのいえ」の通り、家主の飯島夫妻や柳沢、長一郎、直介の母…みんなの意見が取り入れられた家が、最終的には建つことになります。

ただ、気になったのは、「みんなのいえ」ではありますが、家主の飯島夫妻の意見があまり出てこなかった事です。
新築で家を建てるのですから、普通はもっと「ああしたい、こうしたい」と要求があるのではないかと思います。
しかし、作中での夫妻の要求は「柳沢にデザインをさせること」だけです。
初めのうちは、外野からあれこれ言われる度に「そんなの困るよ」と言っていましたが、中盤からみんなの意見を妥協し過ぎでは?と少し思ってしまいました。
夫妻がみんなに気を遣いすぎですよね。
柳沢も、長一郎も、直介の母も、色々言うけど結局そこに住むわけではありません。
なのに、みんなの顔を立てようとし過ぎだと思いました。

そもそも建築士の資格を持っていなくて、図面も引けない柳沢を、夫妻が庇いすぎているような気がしました。
顔色を伺いすぎですよね。
物語上、そのような立ち回りが必要なのは分かるのですが、見ていてそうした役割が透けて見えてしまうのは、少し興醒めな気がしました。

大工、デザイナー、脚本家…溢れる物を作る人へのリスペクト


また、一つ気になっているのは、柳沢がペンキを壁にぶちまけるシーンです。
その前に柳沢は、バーでバーテンがひたすら「これは自分の問題なので」と言ってソルティドッグを作っては捨てを繰り返すのを見ています。
その後に、妥協で白く塗った壁に、茶色のペンキをぶちまけてしまうのです。
その気持ちがちょっと分からなかったです。
プロとしてこんなに妥協した仕事はしたくなかった、という気持ちを表現したのでしょうか。
それにしても、家にそんな粗相をしてしまったら、それこそプロ失格に見えますが…。
そもそも仕事に対して、こんなに公私混同するものなんでしょうかね。

その後のシーンで、台風の夜に家の様子を見に来た長一郎が、柳沢と鉢合わせをするのですが、普通に敷居を跨がせているのも違和感がありました。

あのような事件があって、長一郎も「二度とここに来るな」と柳沢を投げ飛ばしていたのに、そこは揉め事にならないんだな、と観ていて思いました。

ただ三谷監督が、柳沢をプロとして妥協したくないキャラクターとして描きたいのかな、とも思います。

というのも、ドラマの脚本家である直介は、事あるごとに妥協を強いられ、プロデューサーに意見が全然通らない様子が描かれています。

直介は三谷監督をモチーフにしたキャラクターなのかもしれません。
そして、実際仕事上は、こんなことばかりなのかもしれません。
だから柳沢だけは、不器用だけどこだわりの強い男として、描いているのかもしれないと思いました。

この作品は、大工やデザイナー、脚本家など「物を作る人」がテーマの作品です。
物を作る過程での苦悩や葛藤、そしてリスペクトを感じることができました。

映画のタイトルの通り、できた家がみんなの気持ちを反映しているように、この映画もスタッフみんなの気持ちが入っている、というように監督は考えているのかもしれませんね。

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