実話ならではの退屈さはあるけれど見応えのある映画 - 真夜中のサバナの感想

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実話ならではの退屈さはあるけれど見応えのある映画

2.52.5
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
2.5

目次

実話をベースにしているからこその盛り上がりの少なさ

この映画を選んだ理由は、監督がクリント・イーストウッドだったこととケヴィン・スペイシーが出ていたからだ。おまけにジョン・キューザックまで出ているのに、なぜ今まで観ていなかったのだろうと不思議に思いながら観始めた。するとしばらく観た後に、やはり観ていたことに気づいた。ところどころ覚えていたからだ。しかし細かいことはほとんど忘れていたため(衝撃のラストも観るまで忘れていた)最後まで観ることはできた。とはいえ、観たことを忘れる映画である。あんまり期待できないだろうなと思っていたら、意外にもそれほど悪いものではなかった。しかしスタッフロールを最後まで観なくても2時間30分もある。その長さを感じるくらいの退屈さのある映画ではあったけれど、役者たちの深い演技がそのダラダラした感じをひきしめてくれていたように思った。
しかしこの話は実話をベースにしたものだ。実話であるからこその盛り上がりの少なさがこの映画を平坦に感じさせるのだろう。
この映画は記者だったジョン・ベレントが取材目的でサバナを訪れたときに出会った人々を書いたノン・フィクション小説を映画化したもので、この事件も実際にあったものだ。面白いのは、強烈なキャラクターであるレディ・シャブリは実際にサバナに住む本人でもある。いわゆる本人出演だ。
私は原作を読んだことがないので、架空の犬を散歩させている人とか、既婚女性の会とか、どうしてこんな突拍子もない設定がでてくるのだろうと不思議だったけれど、実話だったことで納得した。サバナで本当にあるものの数々なのだろう。
そういう意味ではこの映画はリアルで、巨匠クリント・イーストウッドの力量が感じられるものなのかもしれない。

ジュード・ロウの圧倒的な存在感

この映画は主演であるケヴィン・スペイシーとジョン・キューザックはもとより、「見たことあるな」という顔ぶれが多く出演している。というよりいきなり度肝を抜かれたのは、車を洗っていたチンピラ風情の男がジュード・ロウだったことだ。しかも彼ほどの俳優がDVDのパッケージに写真はおろか名前さえ載っていなかったのだ。この映画は1997年に公開されているが、同年に名作「ガタカ」も公開されている。だから無名だったとは考えられないのだけど、とにかくこのパッケージを見ただけでは彼がでていることはわからなかった。
とはいえ、この映画でのジュード・ロウの存在感は素晴らしいものがある。ケヴィン・スペイシー演じるジムに早々殺されてしまい、それほど登場回数は多くないのだけど、その少ない登場だけで強烈な存在感を感じさせた。
ジュード・ロウが演じている若者はビリーといって、ジムの恋人のような存在でもある。恋人というよりは男娼のような雰囲気だったけれど、その妖しい魅力をジュード・ロウは実にうまく演じていた。
印象的な場面が数多くある。ジムとビリーが言い合いをして腹立ちまぎれにビリーがジムの柱時計を壊した時の表情。「やってやる」という怒りもあるけど半面、ジムの表情に少したじろいだような子供のような表情がとてもリアルだった。ビリーの「やってやる」という怒りと、腹立ち紛れにやってしまったことの大きさに対して自分でたじろぐような幼さ、そしてまたそう感じてしまった自分への怒りなどの感情が沸き立っているように見えた。そしてそれこそがあの時のビリーの感情なのだと思う。一瞬でそこまで感じさせるジュード・ロウの演技力の深さを実感した。
また最後、ジムが心臓発作で倒れたときに彼は隣にビリーを見る。死んだときの姿勢のままこちらを向いたビリーの、最初は穏やかだった顔つきがだんだん妖しくそして邪悪なまでの表情で微笑んだとき、ジムは死んでしまう。あの妖しい微笑みは、限りなく邪悪なものだったけれど限りなく美しくも見えた。
この映画で観るべきは、ジュード・ロウのその卓越した演技力だと思う。

魅せるキャスティング

この映画には脇役たちも有名どころが多く出演している。ビリー側の弁護士は「ショーシャンクの空に」で悪所長を演じたボブ・ガントン。彼はドラマ「24」にも出演していた。味のある存在の俳優だと思う。糸で結んだアブを体の回りに飛ばせていた変わり者ルーサーはジェフリー・ルイス。ジュリエット・ルイスの実父でもある。面白いのは看護婦のサラを演じたパトリカ・ダーボ。この人は本当に色々なところにちょいちょい出てくる。しかしちょい役ながらもその役に魅力をあふれさせるよい女優だと思う。今回も、無邪気で人が良く忙しいながらも平凡に生きてきた看護婦が法廷に証人として呼び出されてしまい、緊張しながらもちょっと主役になったような得意な感じがよく出ていた。あの看護婦はきっとあの日を忘れないだろうなとそこまで想像させるよい演技だったと思う。
あとはなんといっても本人役のミス・デポー、レディ・シャブリだ。オカマでショーガールだからこその芸達者さ加減を遺憾なく発揮していた。彼女が登場するところはいつも大騒ぎで好きだ。特にジョン・キューザック演じるジャックとアリソン・イーストウッド演じるマンディがビリーの死体を確かめに死体安置所に忍び込むために、目をそらすために大騒ぎしろと彼女に頼むところ。期待以上の大騒ぎで病院に担ぎこまれるのだが、その時になんとカメラ目線をするのだ。映画でカメラ目線なんて相当な演出でないと出てこないけれど、この時のカメラ目線のおかげで仮病で大騒ぎしている時のコミカルさが倍増した。好きな場面のひとつだ。
あとこの映画で一番の美人はアリソン・イーストウッド。名前の通りクリント・イーストウッドの娘でもある。優しげな目元がよく似ていた。

心に残った好きな場面の数々

この映画は全体的には少し平坦なものだったけれど、それでも印象に残っている場面は多くある。舞台のサバナはアメリカ南部の歴史ある街だ。アメリカ南部らしい独特の文化を感じるところもあった。「既婚女性の会」や「黒人の舞踏会」などそれにあたる。原作を読んでいないのでどうしてこのような会が唐突に出てくるのかと思ったけれど、考えてみれば南部ならではだ。
特に「黒人の舞踏会」は厳かで格式高く、彼らがこの会を誇りに思っているのがよく伝わってきた。
あと、自分の証言でジムが「ゲイは目を見て分かり合う」と言うのだけど、それを聞いた陪審員の黒人が目を少し伏せたのはうまい演出だと思った。彼もゲイなのかもしれない。
最後にジムの弁護士が言った「ゲイは神の意思だ」という言葉。本当にそうだと思う。ゲイの人々を差別し忌み嫌う人々に聞かせてやりたい言葉だと思った。
もうひとつ、ジムに弁護士がどこかの婦人からの差し入れであるシチューを手渡す場面があった。待ってましたとばかりに飛びつくジムなのだけど、そのシチュー、土色と言うか粘土色と言うか、どう見てまったくおいしそうでない。しかしもしかしたらあれも南部独特の料理なのかもしれないと思った。見かけよりもおいしいのかもしれない。
あとはブードゥの女性の出てくる場面の全てだ。実際に死者と話しているのかどうかわからなかったけれど、ジムの死に方を思うと彼女の言っていることは正しかったのだろうなと思った。

少し勿体ないジョン・キューザックの使い方

ジムの強烈な個性を演じきったケヴィン・スペイシーも良かったし(あの「ンーフーン」という気だるげな相槌が良かった)、前記したようにジュード・ロウの存在感もすごかった。しかしジョン・キューザック演じるジョンはよそ者で取材目的だったから主に聞き役である。マンディと出会えたというところはあるけれど、大体が人の話を聞くだけでなにもしない役どころは、何もジョン・キューザックでなくてもいいのではと思ってしまった。とはいえ、ブードゥの女性やアブを飛ばしている男性を見る時のあからさまに驚くあの表情は、ジョン・キューザックしかできないかもしれないが。
この映画は全体的には実話ならではの退屈さはあったけれど、それでも「現実は小説よりも奇なり」と思える見ごたえのある映画だと思った。

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1997年公開のアメリカ映画、クリント・イーストウッド監督、ジョン・キューザック、ケビン・スペイシー主演。一言で言うと、富豪のパーティーを取材に行ったジャーナリストが、殺人事件に巻き込まれる物語。これはアメリカの共和党の一派、リバタリアンの思想がばりばりに含まれてます。みなくちゃいけません、これは心の脳のヒダヒダを心地よく擽ってくれます。ロンポールが出てないってのは何でかなって、笑ってしまいますが、そこはティパーティの親分、映画なんかには出てくれません。ところがイーストウッドは実際にこの町のような処に住んでいるのですよ。ある一定の階級の人々が集まって、死んだ後も飼い犬の散歩を頼めるような昔の古きよき時代に戻ったかの様な隣近所付き合いのある町。この町は自前でガード雇ってますから、町自体に入る時点で検閲を受けないような、まぁ時前で一つ国を作ったとでも言うと良く理解できるかも知れません。クリント...この感想を読む

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