人間同士の心の通じ合いや理解と愛情の問題を考えさせ、人間に対する厳しい問いかけを感じる 「イルカの日」 - イルカの日の感想

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人間同士の心の通じ合いや理解と愛情の問題を考えさせ、人間に対する厳しい問いかけを感じる 「イルカの日」

3.53.5
映像
3.5
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
3.5

「イルカの日」という映画は、当初SF映画として紹介されていましたが、観終えた感じでは、そんな風なものではありませんでした。"サイエンス"という枠づけが無意味であるように思われたのです。

この映画は、フランスの作家ロベール・メルルのベストセラー小説を、「キャッチ22」の才人バック・ヘンリーが脚色し、「バージニア・ウルフなんかこわくない」の名匠マイク・ニコルズが監督しています。そして、このバック・ヘンリーとマイク・ニコルズ監督は、かの名作「卒業」以来のコンビです。

タイトル・バックは、イルカの能力を見せる場面が重ねられます。その最後は、円と三角と四角の図形をそれぞれ見せて、水上に置かれた円や三角や四角を持ってこさせる実験だ。そして、見学者らしい男の注文で、すでに水上にはない図形を見せると、取りに行ったイルカは、何も持たずに戻って来て、さらにその図形を見せられると、否定的なそぶりを見せるのです。イルカの理解判断力の高さが、まず提示されるシーンなのです。

次いで、イルカの生態を映写した画面と、ジェイク・テレル博士(ジョージ・C・スコット)の講演。そして、講演の後で聴衆のひとりが「イルカは人間の言葉を話すことが出来るそうですが?」と聞く。するとテレル博士は、それを否定します。タイトル・バックの場面で出て来た男も聴衆の中にいます。しかし、この男の正体はわからない。それが、前半のサスペンスになっているのです。

テレル博士は、ボートで研究所のある島へ帰ります。そこには、妻のマギー(トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー)や、若い男女の助手たちがいます。テレル博士は、ある財団から金を貰って、イルカの研究を続けているのですが、ここで生まれたアルファ(愛称はファー)というイルカに人間の言葉を教え込んでいます。そして、これは財団にも知らせていない秘密だったのです。

ところが、例のタイトル・バックに出ていた男が、財団の理事を脅して、記者というふれこみで島へやって来ます。このマホーニーと名乗る男は、テレル博士の秘密をかぎつけたらしいのです。そして、財団の方からも、ファーが人間の言葉をしゃべるのを見せろと言って来る。

そういうことがあった後、テレル博士の留守中に、博士の名をかたった電話によって、ファーとその友だちのベータ(愛称はビー)の二頭が、舟で何者かに連れ去られるのです。後で、助手のデーヴィッドが、何者かと内通して打った芝居だったことがわかります。デーヴィッドは、むろん二頭のイルカと共に消えてしまったのです。

この後は、アメリカ政府部内の陰謀による大統領暗殺事件に物語が発展していくのです。そこで、このイルカが重要な役割を果たすことは言うまでもありませんが、そのあたりのところは、事前情報なしで内容を知らないで観た方が、遥かに面白く感じられるだろうと思います。

とにかく、この物語は、陰謀物語のサスペンスに、イルカを絡み合わせた点に着想の面白さがあるのだと思います。ここでは、二頭のイルカが重要な役を演じており、それはほとんど擬人化された存在になっているのです。そこで、テレル博士とイルカとの間の"ヒューマンな感情"が、この映画の重要なモチーフとなって浮かび上がってくるのです。

また、水中撮影はヴェテランのラマー・ボーレンが担当していますが、イルカの感情が実によく表現されているのには、まったく感心させられます。

私は、この映画に出て来るイルカを観ていて、よく映画に出て来る悪い大人に利用されそうになる純真な子供を連想しました。だから、サイエンスという特殊な感じを受けなかったのかも知れません。

テレル博士とイルカが別れなければならない結末は、非常に悲しいものがあります。そして、その悲しさが、人間同士の心の通じ合いとか、理解と愛情の問題をあらためて考えさせられます。人間とイルカは、愛情と理解で通じ合えるのに、人間同士はそうではないのです。そこに我々人間に対する、この映画の厳しい問いかけがあるように感じました。

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