めんどくさいよね大人って
人を好きにならないといろんな気持ちが見えてこない
「東京アリス」と同じ感じではあるけど、やっぱりちょっと色が違う。ちょっと前の、OLの女ばっかりだった時代の恋物語。ケータイ持ち始めましたって時代だと、連絡の取りづらさとか、どこかもどかしさがあるね。やってることは今とさほど変わらず。恋に奥手になっていて、不倫してみたり、がっついてみたり、戸惑ってみたり…くっついて、離れて、またくっつく人もいるのに、離れることを選ぶ人もいる。そういうのは、時代が移ろっても変わらないらしい。
大人女子のめんどくさい人間模様を見ていると、人を好きにならなければ気づけなかったことが多すぎるってことに気づかされる。恋を知らなければ、人との関わり方って全然違うんだよ。他人事が自分事になって初めて理解できる。それはやはり体験してから気づくものらしい。外から聞いているのと、自分が当事者となって経験するのでは全然厚みが違うし、言葉の重みが違う。人の気持ちも、自分の気持ちも、わかっているつもりだったのに、実はわかっていないことのほうが多かった。そこになかったわけじゃなくて、見えていなかっただけ。もしくは、確かに見えていたのに、重要度が低かったから認識できなかっただけなんだよね。…世の中、本当にそんなことばっかり。というかむしろ悩みの種も幸せの種も、そういう複雑な人間模様の中にしか見いだせないものなんだなーと改めて考えてしまうよ。
だからね、人間恋して学べとは、まさに的を得た言葉だ。金持ちが言う、「いっぱい遊べ」の意味は、そういう複雑さに気づき、どう行動するかを考えることをしろってことなんだと思う。
社会人になると簡単なことがみえなくなる
好きなら好きだと言えばよくて、結果はイエスかノーのはっきりとした2択しかない。そんな恋は高校生くらいまで。大学入って、社会人になったら、もはやそれでまかり通る世界はないって嫌でも教えられるね。自分の気持ちだけじゃ成立するものじゃないはずだった恋愛が、自分だけの気持ちでうまいことまとまってしまうこともある。別に好きじゃないなら離れてればいいのに、職場という囲われた空間で、コロッとまったく逆方向へ展開することのほうが多い。片方の大きな気持ちによってうまく帳尻を合わせることができるパターンはまだいい方で、お互いが素直になれずに、タイミングを逃して壊れてしまうこともある。
お金も、地位も名誉も関係なくて、ただ一緒にいることを喜び合いたい。それが社会人になると実に難しい。なんでもかんでも考えなきゃいけなくて、シンプルなことなんて一つもないのに、表面上ではものすごく取り繕っていなきゃいけない。こんなの自分じゃないとか、必死に自分に言い聞かせて、頭でわかっているはずなのにカラダが動かないことのほうがほとんど…
だけど、大人って人のことはよく見えているんだよね。自分の事は全然見えないのにさ。だから、友だちとか、信用できる人間って絶対必要で、そういう人に自分を見てもらって、評価してもらったり、逆に協力してあげたり…。持ちつもたれつの関係は、曖昧なルートを歩くオトナたちにとって、非常に大事だ。絶対大事にしたほうがいい。沙耶や里季香、一葉たちは、お互いがいなかったら今の道を見つけられなかったことだろう。
大人の恋愛って
どれもこれも複雑だったな…そして、みーーんな一度は距離を置くか、別れを選択せざるを得なくなっている。泣いて暮らせど、仕事をせねばお金もない。恨み言を言いつつも、やるべき仕事からは逃げないのが社会人やなーと思う。「大人だから」という不思議な理由で、案外すぐに次の彼氏・彼女をつくったり、体の関係も容易に結べたりするんだよね。なのに、求めている相手は非常にシンプルで、余計なしがらみばっかり作って見えなくさせる。非常に面倒…このめんどくささを理解できて、それを当たり前だと断言でき、身のこなしを覚えた人が、本当にオトナなんだろうなーって、今ならわかる。
三者三様で、みんな苦労したね。とっかかりが里季香からになるとは思わなかったが、これはこれで辛かった…。央太みたいに若さで乗り切ってきた奴が、恋多き女の里季香と情熱的に愛し合う。そして離れなきゃいけない状況ができて、村岡さんが出てきて、でもやっぱり央太に戻る…。この恋では、奥さんあろうと迫ってくる男はわんさか・彼女いようとかわいい女の子に目がない男もわんさか、ということを教えてくれた。
主人公の沙耶は、初恋を忘れられなかったはずが、柘植さんにベタ惚れに。少し前まで絶対次の男なんて無理だと言っていた女が、あれよあれよという間に恋のどつぼにはまっていく。実にめんどくさい…純粋を笠に着た、ぶりっ子に思えてくる。でも柘植さんがあんたにベタ惚れだからさ…許されるのである。沙耶&柘植さんの恋では、惚れてしまったが運の尽き、という言葉が良く似合う。
おい一葉…!
ちょっと悲しかったのは、序盤であれだけ盛り上がったスポーツマンのカレとの関係を解消してしまった一葉だ。不倫の相手と、自分を好きだと言ってくれる若い男との間で揺れ動いた彼女。結局不倫相手には別れを告げられて、若干なし崩し的ではあるが若い男をゲットしたのに…丸く収まらない。1度ならず2度、3度と暗転と好転を登場させるのが非常に上手だよね、作者さん。
そしてまさかの後から出てきた男との結婚までが取り上げられた。もうね、彼がかわいそうでさ…めっちゃ好きでも、ダメなんだ。お互いの好きがうまくハマってないと、続いていかないんだね。ただ、これを大人の恋愛の手本とはしたくないね…。それが不倫だとわかっていて不倫してしまう女は、なんかいびつで、儚さもあるし、エロさもあるし、それが魅力でもあるし、難点でもあるんだろう。わかったふりして、わかってない。結局背伸びしすぎてから回っているんだ。
子どものくせに背伸びして大人になろうとしていた、「君に届け」のあやねちゃんのほうが、なんとなく共感できてしまう。一葉と同じで分厚いくちびるをしているから、リンクするのかもしれないけど。一葉はかわいげなかったからなー。
柘植さんの事故は余計だよね
ラストで柘植さんが沙耶のためにがらにもなく走って走って…車と衝突する描写。あれ、完全いらないと思う。もう沙耶と何度となく別れの危機にあってきて、最後に事故をもってきてしまうとすごく興ざめ。気持ちが決まったのは確実なのに、水を差されたよ。そのまま飛びついて、さらってしまうほうがよかった。ハルキやしおりの件に関して、お互いが意地を張って甘えられなかったのが悪かったと思うし、それを一気に解消させる出来事ではあったけど、なんか軽く交通事故とか出されると、いっきにチープになってくる気がする。お約束かいって思っちゃうんだよね。
社会人になった女性たちが、どんな人とどんな風に恋しているのか。いろいろなパターンがあって、誰にも理解されないものでもやめられないのが恋なんだ。この「クローバー」という作品の中では、ぶっとんだ設定があるわけじゃない。身近にあるオトナ女子たちの出来事に、丁寧にストーリーをつなげていった感じがする。24巻も出た作品だし、絵のテイストはどんどん変わっていったけれど、内容はキープされていたね。若干残念だったのは、女性陣は美しくなっていくのに、男性陣が徐々にダサくなっていっている気がするところ。確かに、恋する女は美しいが、これだけギャップがあると少し悲しさもある。
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