途中から違う方向へ進んでいるから不安
男女で最強は難しいが楽しい
陰陽師として禍野という異世界からやってくるケガレを払う。いつかケガレを一掃させ、人間の世界に平和をもたらしてみせる…。焔魔堂ろくろと化野紅緒は陰陽師としての目標は同じであったはずだった。しかし、双星の陰陽師として選ばれるまでの彼らの過去は、非常に暗く、重いもので…絶対幸せになってもらいたい。最強になってもらいたい。応援せずにはいられないキャラクターである。
ろくろは陰陽師として生きる道を捨てた人間。そして紅緒は両親の仇のために陰陽師としての道をひた走る人間である。真逆を歩いているように見せて、実はろくろがヒーローなんだと見せるまでが非常に上手。まんまと不安な気持ちにさせられた後にさらに高揚させられた。ろくろが2年前にいかにひどい経験をさせられたのかを徐々に明らかにし、一時は紅緒にとっての敵キャラであることをにおわせながら、実は無念のヒーローなんだと公開。いやーおもしろかったよ。
そして、双星の陰陽師として神託が下ったとはいえ、二人はまだ未熟な陰陽師。最初から最強なんじゃない。血だらけになって、ボロボロでも立ち上がり、そのたび学んで強くなる。そういうメインキャラクターって、ほんと応援したくなるよね。そして今回は男女が主人公。男ならいつも通りの少年漫画だなーってなるけど、夫婦となって神子を生む役目があって、少しずつ心通わせるまでがほほえましい。何も言わなくても繋がっている気がする。協力しなければ最強じゃない。こういう物語のつくりでは、どこかで裏切りがあったり、脱落が起きたりするもの。そこをこれからどう魅せてくれるのかが楽しみすぎる。
バサラの存在がキーになる
ケガレが力のある人間を殺すことでその人間の力を手に入れる。そうしてどんどん人らしく喋り、考え、行動するようになる…強いケガレほど、人に近い。この点はまだまだ真相が明らかになっていないことだけれど、ケガレ落ちというシステムがあることを考えると、結局あの異空間に隔離された禍野の存在は、人間が始まりなんだと思う。そして、陰陽師と言う存在は、もっと黒いもののような気がしてならない。
だってさ、今まで何千年と、何度となく双星の陰陽師が生まれて、双星の陰陽師たちから神子が生まれて、ケガレと闘ってきたわけでしょ?そして、ケガレがなくなってない。ってことは、陰陽師たちは幾度となくデカい相手に負けてきたことになる。そしてその分、大きくなってしまったバサラがいるってことなんだと思うんだ。そうすると、この世界は矛盾してくると思わないか…?いっそ陰陽師たちがつくる、別の世界がもたらされようとしているのではないか?すべての陰陽師、すべてのケガレ・バサラが事情を知っているわけじゃない。きっとどこかで人間であるはずの陰陽師と、ケガレはつながっているはずだよね。そのキーになるのがろくろだろうね。しょせん悠斗は、話の一端にしかすぎないんじゃないだろうか。そうでなければ、そんな簡単に、しかもまだ3巻だけど?というタイミングで過去のネタばらしをするわけないじゃんね。有馬様が怪しすぎるでしょ。ケガレが大きくなるために、双星の陰陽師を待っていると言っても過言ではない気がする。
恋心もまたドキドキ
ろくろと紅緒は運命の導きが定めた夫婦…ろくろはまだまだ気づきそうにないが、紅緒は今までの人生の中で最も信頼する相手だと思っているはず。そしてそれが恋だとも。男ってやつは…鈍感のほうがかわいいと言うが、女の子は大変である。
もう一人のヒロイン候補である繭良。ずっと小さなころからろくろが大好きだった。でも、父である清弦が陰陽師としての教育を繭良にはしなかったことで、ずっとそばで見ているだけの存在だった。そんな彼女が、父が陰陽師として再起不能になるほどの傷を負ったことで、その力を引き継ぐと決めた。もともと素質はあって、持っている力の大きさもデカかったことから、これでようやくろくろの役に…と思うわけだけれど、現実は全然甘くない。人が簡単に死ぬ世界で、もしかしたら人ならざる者として人を殺すようになってしまう可能性もある。しかも、自分が気持ちを押し付けてろくろを奪っても…紅緒の事を想うとやりきれない。
繭良は今までも利用されまくっているが、きっと大事なところでろくろは二択を迫られるよね。もしかしたらそれが神威かもしれない。陰陽師としてのパートナーを選ぶか、ずっと慕ってきてくれた友だちを選ぶか。ろくろはどちらの命もないがしろにしないと思うが、大事なところで繭良は利用される可能性が非常に高い。
個人的には、繭良の父である清弦は、最初の悠斗との戦いで死んでしまうもんだと思ってたんだよね。自爆を狙って飛び込んでいったし。でも、それすらも許さなかったろくろだからこそ、きっと彼なら、誰かが泣いてしまうような結末を選ばないんじゃないだろうか。
確かにレベルアップは必要だが
ちょっと困っているのは、話の方向がちょっとずれた時期に入っていること。確かに、双星の陰陽師としての修業が足りない状況だとは言え、すっかりバトル大会の話が長くなってしまって…おいおい、ケガレ払うのはどうしたの?大会で力比べするはずが、けっこうな勢いで殺しあっているし、そんな間をきっと狙われるよ…?「僕のヒーローアカデミア」でもそうだったけど、途中で大会開催して、容易に侵入を許すパターンがあるじゃない?非常に心配。
レベルアップが必要なのはわかるけど、個のレベルアップになっちゃってるじゃん?最初に紅緒との連携技を強化して、心のつながりを確かなものにする時間だったのかもしれないけど、紅緒いなくて、繭良と出し抜いたように別の島での生活が始まって…いつまで経っても紅緒は復活してきてくれない。式神と共に待つって…いったいいつまで?
紅緒が力をすべて失くしてしまうほどの何かって、いったいなんだ?神威も不思議に思っていたが、これも策略なんじゃないの?双星の陰陽師でありながら、ろくろが発動させる呪装は、大切な人の力を奪ってしまう側面を秘めているか、もしくは別の理由で離ればなれにさせられている可能性が高いよね。
最初の怒涛のような毎日の変化、修行、厳しい闘い、そこから生まれる絆と強さ…それが楽しかったのに、人同士の力比べなんか、マジでつまんなすぎる。早くこの流れが終わらないだろうか?いつまでもこれが続くなら、どこかで打ち切られてしまうんじゃないだろうか…人気作品だからこそ引っ張っているのかもしれないけど、早く話を進めてほしくてしょうがない。
ラストの予想
個人的には、神子はろくろなんだと思っている。だって強すぎるし、そして晴明の力を明らかに持っているもんね。紅緒は強い陰陽師の夫婦から生まれた子供だけど、ろくろの出生に関する過去は謎のままになっているし、ここからいかようにもネタは取り放題だと思う。実はすでにろくろの父親と母親が双星の陰陽師で、それを隠さなくてはならない何かがあったとか、神託のゆらぐ何かをまだじっさまあたりが隠しているんじゃないかな。核となる陰陽師たちの力量も考え方もオープンになっていないし、彼らがどんな思いで闘っているかも確かに大事で、ろくろや紅緒の仲間となってくれる存在が大切なのもわかるけど、早くネタばらししてほしくてしょうがない。
神子でありながら、双星の陰陽師。紅緒とだからこそ乗り越えられる。紅緒だから助けたいと思う。すでになんでも死闘を繰り広げてきたけれど、ラストをどうしめくくってくれるのか、気になりすぎる。
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