イタリアの良さが詰まった作品
イタリア映画の良さは、質の高さだと思います。 人間味といい、ストーリーといい、壮大さはそれほどなくても、とても密接な何かを観ている気がして、同じ映画というくくりの中でも、体験できることの質が他の国の映画とはまったく違うような気にさせられることが多いと思います。 マレーナは、イタリアの戦時中のシチリアが舞台になっていますが、今でもイタリアって郊外を歩いてみると戦争の爪痕が残ったままというか、けっこうボロボロになったままの家が並んでいるエリアがあったりするんですよね。同じ敗戦国だからなのか、国民の美意識なのか、美しい彫刻や石の建物が立ち並ぶだけの町並みではないイタリアを旅していると、なんとなく日本の昭和に似たものを勝手に感じてしまうのです。 この作品の魅力は、イタリア人の男の子の性への芽生えがとても素直に描かれているところと、イタリア人の持つ女性への力によるものではない、宗教的なまでの服従心というか、憧れというか、そういう心が絶妙に描かれているところだと思います。 心配した父親が初めて少年を娼婦の館へ連れていった時に相手をしてくれた女性がマレーナに見えたところは、彼にとっては本当にマレーナだったと思うし、大人の目で観ていると、なんだかとても美しいものに見えてくるのです。一般的な女性が見たら、嫌悪するシーンかもしれませんが、私にとっては、力強い人間的な魅力のある、よいシーンに感じました。 マレーナが歴史や環境に翻弄されながら、夫への忠誠を守っていたと信じている少年の目線は、本当は揺れ動き、複雑な思いを抱いていたかもしれない女性を、夫の前に清く美しい存在として完成させてくれた役割を持っていたと思います。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)