箱入りお嬢様を巡る男どもの争いのお話
ちょっとマツゲキラキラしすぎだよね
女の子はまぁ100歩譲ってかわいいとして、男の子がなー…マツゲ長すぎで、きらめきすぎなんだよなー…そして長髪がなー…律樹が改心してから髪を切ってマシになったけど、髪切らなきゃほとんどヒーローの悠河とパーツ変わらないっていうのもさ、悲しいよね。どっちにおさまっても大してビジュアルの変化はないという。
全体としてドタバタラブコメが楽しい物語だったのに、終盤はお家騒動が拡大しすぎて、あっちこっちの悲しい出来事がぶわっと出てきてしまうために、非常にやりにくい。最初のころは、一生懸命悠河と恋しよう・結婚生活を楽しいものにしようって永遠子もすごいがんばっていて、それが空回っているのがかわいかったんだよ。そしてたったの1~2週間かそこらで永遠子との結婚を決めた悠河が、彼女の空回りも全部自分への愛だととらえて、いつでも優しく歩み寄ってきてくれて。非常にうるさい展開ばかりだったけど、楽しい進み方だったように思う。
表紙は色彩豊かで表情もよく似合っているからお気に入りだった。どの巻も仕上がってるなーっていう印象がある。刹那のようななよっと見せかけた男こそ、もう少しシリアスなシーンでのイケメンな顔にしてほしかったかな。お姉さまが欲しくてたまらないんです…という切迫した気持ちと、実際にお姉さまを目の前にするとときめいちゃって動けない彼が好きだった。空木や椿に協力されているのか邪魔されているのか…という残念感もおいしい存在。終盤は良き協力者となり、モブ化だったのが悲しいところだ。
生年月日完全一致の相手っているのか
永遠子と悠河は生まれた年、月、日、そして生まれた時間までもが同じという存在。さすがにそこまで一致した命だと、何らかを運命づけたくなる気持ちはわかる。何時何分何秒まで一緒の人って、同じ日本でどれくらいいるだろうね…世界で考えたらポコポコ生まれているのかもしれないが、日本で考えるとすっごい貴重だよなーって思ってしみじみした。ラブコメだし、そんな真剣に考えるものでもないと思いながらも、こういう運命ならちょっと信じてみたいよね、とは思った。
永遠子の家は、代々そうやって結婚相手を決めてきたとのこと。お父さんがなぜかポリゴン化するので、もしかしたら悠河にもそういう変化が起こるかなー…と考えていたのだが、ずっとイケメンのままだった。1週間の間拘束されて、その間に同じように恋におちちゃったのかな?そのあたり、もう少し詳細に教えてほしかった。
脈々と続く五家の伝統とかって、閉鎖的・かつ特殊な文化が築かれていそうだよね。お家ルールがあるからこそ、華道お家元の家みたいな息苦しい世界になるんだろう。永遠子はものすごいお嬢様だけど、特に特殊な伝統はなく、ただお金持ち・箱入りお嬢様であるから、これまた異質。なんか特徴があれば、より永遠子の魅力にもつながったんじゃないかなと思っている。悠河が永遠子に惚れたのは、自分の元から離れていく可能性が非常に低くて、自分だけに一生懸命で、離れがたい気持ちにさせてくれたから。そして、家のために結婚するのではなく、悠河だから結婚したいと心を決めてくれている永遠子の強さが、悠河に響いたんだと思う。生年月日が同じだということが始まりだけど、そこで相手を信じるか信じないかは、会ってみて、関わってみないとわからない。そのための猶予期間なんだろう。
こんな妄想女嫌ですけど
永遠子は夢みすぎ女子だし、お嬢様として育ったからそれ以外の立ち居振る舞いを知らない人物。そのキャラクターは最後まで全然崩れなかった。他の漫画だと、お嬢様ではなくなって貧乏を知るような話も登場したりするのだが、お金持ちでない永遠子は永遠子ではない。
こいつまずいんじゃないの?と思った行動は、悠河との結婚が決まり、お互いに気持ち通わせ始めた段階で、永遠子が悠河の学校に転校してきたとき…。悠河の隣の席をお金で買収しようとするっていう、まさにいじめの格好の餌食になりそうなことをやらかすのだ。あれは…引いた。お嬢様だから、頼めば代わってくれる・席は私が一番最初に決めるものだったとはいえ、初めて乗り込む場所でも許されると考えてしまうのは、本当に文化が違いすぎて、引くよね…。
わき目もふらず悠河のために…というよりかは、悠河と自分が幸せになりたいから、一生懸命努力しているのが若干イタイところ。徐々に心を通わせて、相手のためにと考えられるようになっていくのはかわいかったし、悪いところばかりじゃないけどね。恋に恋して妄想しまくりの女に惚れてしまったのが運の尽き。それもまた俺のためだと思えばこそ、許してしまう悠河がこれまたかわいい男なのである。
必死になる男は嫌いじゃない
最初は永遠子をウザいものだと考えていた悠河だが、もう今どうしているかって気になって居ても立っても居られなくなっていく。翻弄されて、好きになって、結ばれて。お金持ちだからこそ、いろいろな人に婿の立場を狙われて、財産を狙われて、大変なんだよ。結婚したからといって安心というわけではなく、常に女は狙われるんだ。いったい何回危険な目に合えばいいのやら、そのたびに悠河が助けにいき、はじめは不本意な気持ちもあったけど、終盤は、
おれにお前が必要なんだよ!
と叫ぶくらい、大事な存在になっていく。一生懸命な男ってやはりカッコいいよね。ときめくわー。カッコつけるより、必死こいて迫ってきてくれる悠河は素敵。
もちろん、律樹もそれなりにカッコよかったよ。過ちを犯したからこそ、余計に永遠子を大事に想う。悠河よりも、俺のほうが永遠子を必要としている。永遠子がいなけりゃ自分には何一つ残らないという悲しみ…確かに心を揺さぶるキャラではあった。
ただね、やはり悠河と顔が全然違いがないから、ほぼ双子の中で永遠子が揺れ動いているんじゃないのって感じで、つまらないんだよなー…。そして律樹の永遠子を独占しようとする気持ちは、好きな気持ちよりも寂しさだと思うし、永遠子が記憶を失うことがなければ同じように律樹を好きになることはなかったと思うから、どこまでいっても律樹が悪者にしか思えないわ。
記憶喪失ネタって最終手段だよね
こういう特定の人物に関する記憶だけ失くしてしまうっていう設定、実に安易だわ。長く続いてきたラブコメの作品のラストに、重―い空気を流してシメを明るくするには、記憶喪失ネタが実に使いやすいのは理解できるけど。悠河と永遠子の愛がすでに仕上がっているところで、波乱を呼ぶには遭難か記憶喪失だよね…ただ、本当に最後のところに来るまで、永遠子の記憶喪失が長引いたのは割と工夫された流れだったかな。一時的な記憶喪失だと、一緒に過ごしてすぐに戻ることが多い気がするんだよね。記憶喪失と同様、永遠子が一時的な失明状態になったことも、なんかなー…とりあえずそういうすぐ回復する可能性のあるものをあてはめている感が嫌だわ。
全体としてドタバタ、なんでもありなお嬢様の物語。少しずつ心通わせる悠河と永遠子はかわいらしく、結ばれるところまでしっかりとみせてくれてよかったと思う。幸せなままで終わらず、後半はずいぶんとどす黒い展開を多くしていたので、わーきゃーうるさいのが見たかった人はおもしろくなかったかもしれない。結婚することを強制的に決められたとしても、心通わせるパターンもある。恋愛はいつ何時、どうなるかわからないってことは感じさせてくれた。
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