デリヘルとしての生き方が及ぼすもの - デリバリーシンデレラの感想

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デリバリーシンデレラ

3.753.75
画力
3.75
ストーリー
3.50
キャラクター
3.75
設定
4.25
演出
3.75
感想数
2
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デリヘルとしての生き方が及ぼすもの

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

昼間の地味女が夜の蝶に

大学2年生の雅美は、昼間は大学生、夜は週に45日はデリヘル嬢として働いている。メガネでおさげ髪の地味女だけれど、自分のことを卑下しているわけではなくて、単純にその恰好のほうが楽だから過ごしている、というスタンス。夜は、少しでもお客様に喜んでいただくために、カラダも、髪の毛もすべてを綺麗にしてご奉仕する、“ミヤビ”へと変身するのだった。

こういうタイプの場合、綺麗になっている時間は人格そのものも変貌してしまう設定が多い気がするが、この物語ではあくまで雅美もミヤビも同じ人物。多少見かけは違っているけれど、疲れた殿方を癒すために行動するところはまったく変わらない。そのあたり、好感が持てる作品に仕上がっている。

描写は確かにエロいけど、ただのエロい漫画ではなくて、ちゃんと考えさせてくれる物語になっているよね。デリヘルという仕事、風俗というものに対して、どうしても嫌悪感を抱いてしまう人が多い。そりゃーそこにはお金と、欲望が渦巻いて、何かしら悲しいことを起こす温床になっていることが多いのだ。その中で、そこでの経験をこれからの礎としようとしている人もどこかにはいるってことを伝えてくれているよね。肯定されるものではないかもしれないけど、お金をいただく仕事の1つ。そこに戦略もあれば、ぬくもりもあれば、笑顔だってあるし、本番やらせるようなひどい人・会社だってあるだろう。そう考えると、普通の会社と何ら変わりないものとも言えるよね。

友だち関係

雅美は、自分の仕事を心から楽しんでいたけれど、友だちには打ち明けることができずにいた。失うことが怖いもんね。大切な人が離れていくかもしれない、でも自分はこの仕事をしてお金をもらわなくてはならないのっぴきならない理由があるし、途中でやめることもできないんだよね。

それを、アキとかカオリが、理解してくれた。もちろん、その仕事が尊いものだとは思えないだろう。だけど、真剣に仕事をしているのだということ、理由があってやっているということ、雅美にも過去があって今があるのだということ。すべてがクリアになったとき、アキたちが雅美と友だちでなくなる理由なんてないのだ。

バイトの内容的に、妊娠したとか、傷つけられたとか、何かの犯罪に加担することになったとか、いろいろとあくどい事と結び付けられやすいのは事実。だから、そういうことにならないためにも、アキたちのような理解者を得ておくことって大事だよね。何かあれば相談できるし、ストップをかけてくれるだろうし。ただし、雅美のように、自分の意志でしっかりとお客様に向き合える人物でない限りは、やはりやってはいけない仕事なんじゃないのかなーとは思うよね。バカな人間は人気も出ないだろうが、簡単に利用されて、捨てられてしまうかもしれない。自分自身の軸をブラさずに、犯罪やお店に迷惑をかけるような事態を絶対に起こさないと決めて、それでもお客様第一に心から接客できるかどうか。これができる人がやっていい仕事なんだって思う。ただお金がほしいだけでやるなら、手を出すべきじゃない。

恋人関係

風俗嬢だって、恋をするだろう。そしてそういう人にこそ、本番行為はできないもの。好きだからこそ、すべてをさらけ出すには時間がかかるね。

最初、ノブくんが出てきて、告白もされたから、どうにかして乗り越えていってくれるのではないだろうかと思っていたけれど、自分の彼女が他の男に…って考えたら、やっぱり無理だったらしい。そりゃー嫉妬もするし、受け入れがたいことだろう。そしてそういわれれば、雅美は引くしかない。どんな言葉をかけて止めたらいいかなんて、わからないよね。それに、自分がノブくんを好きかどうかが判断できないなら、やっぱりお付き合いはできないはず。

そのあとに登場した黒木潤。彼は風俗嬢の彼女を持ち、婚約していたにもかかわらず、両親に彼女の仕事がバレて破談に。愛し合っていたのに、世間がそれを認めてくれない。マリアは嫌々その仕事をやっていたわけじゃなく、仕事と割り切って楽しんでご奉仕してきた人。だからこそ、それを否定されるということは、自分自身を否定されることなんだよね。マリアと結婚するために親の仕事を継ぐと言った潤くん。彼の気持ちを考えたら、もうマリアにはどこにも居場所がなくて、自殺…壮絶な経験をした彼がまた恋したのがデリヘル嬢で、しかもマリアの同僚・雫が見つけた原石。もはや運命というか、なんというか…

マリアと雅美が違ったのは、雅美はきちんと夢を持ち、明確な借金の目標があって、いずれはこの仕事を辞めてたどり着きたい職業があるということ。介護士って…いいじゃん。すごいイイ夢!ただ、デリヘルより絶対稼げないから、それだけはものすごく心配だよ。

仕事にポリシーを持つこと

雫やレン、マリアのように、ただお金のためだけにデリヘルをやっているんじゃないって人は、どこかにはいるのだろう。その中で、社会的地位をあげるためにわざわざテレビに露出してまで活動した雫は、本当にすごい人だと思う。性のために働く仕事を、どうしても肯定できない人もいるだろうし、容認したい人もいるだろう。妻からしてみれば敵対視される仕事だし、それが家族を破たんさせることだってあるかもしれない。

中には優しいお客さんがいて、本当に癒されたくてデリヘルを利用する人もいるかもしれない。誰かをいじめたくて、デリヘル嬢だったらどう扱ったっていいかと考える人もいるだろうし、逆にSMプレイをご希望の人もいるかもしれない。それがたまたま性欲という、できればあまりオープンにしたくないと考える部分だから、うまくいかないんだよね。同じように、どんな会社であろうと、どんな職種であろうと、同じように逆境もあれば追い風もあって、はっきりいって役に立っていないような会社もある。どっちがいいとも言えないし、どっちのほうがクリーンだとも言えないだろう。先頭きって女が一人で旗揚げし、立ち向かった姿は単純にすげーなって思う。それを引き継いだ女性もいたのだから、動いたことは決して無駄ではなかったと思うよ雫さん。

どんな仕事であろうと、責任もって取り組むことができなければ、お金をいただく資格はない。きっちりやり切って、ポリシーを持つこと。これは本当に大切なスキルだ。

性を商売とすることについて

確かに、後ろ暗いものではあるし、雫のような人物が実際報道番組に出てきたりしたら、それこそものすごいことになってしまうだろう。週刊誌がこぞって過去の利用客を調べたり、雫という人間の人となりを洗いざらいすべてスクープしまくって、ヴァルキューレのような会社は一気に社会からつまはじきに合う可能性が高い。

ただ、仕事として莫大なお金を動かすことのできるものであることも確か。どうしても女は立場が弱くて、利用されてしまうことだってあるかもしれないけど、もっと確立された方法があるなら、女だからという理由で泣き寝入りすることなく権利を主張できるようになっていくかもしれない。

結局最後まで、雫のやり方がきちんと肯定されることはなかったけれど、雅美が潤との幸せな結婚生活にたどり着くことができたこと、お父さんとの確執めいたものが払拭されたこと、友だちとは友だちのままでいれたことなど、雅美にとってはハッピーすぎるくらいの幸せな結末だった。がんばってきたんだもの、彼女のような天使には、ハッピーになってもらわなくちゃ困る。性を扱う仕事については、決断しちゃったら叩かれる可能性もあるし、きわどいところを真面目に描いてくれた作品の1つと言えるだろうね。

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3.53.5
  • すらりすらり
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