諦めない少女の勇気ある行動に共感
勇気と共感を与えてくれる最高傑作
読者の多くは小中学生の女子。この頃彼女達は年上男性に憧れがちですが年上の彼らからしてみれば年下の自分の事など女として見てもらうことは難しく付き合うなんて夢のような話に感じられます。早く女として認められたい、子供扱いから逃れたいという思いを抱く多くの女子達の心の支えになった作品なのではないかと思います。何十年過ぎてもこのような悩みは変わらないもので今の女子小中学生から共感を得やすい内容になっているかと思います。
普通の女の子が傷つきながらも勇気ある行動を起こしてゆく
今でこそあまり耳にしなくなった駆け落ちは時代背景的にマッチしていて、親から交際を反対されるカップルはこの頃特に多かったのではないでしょうか。好きな人と駆け落ち出来るなら今すぐにでもしてしまいたい、そう願いつつも結局そのような行動は起こせない若い男女の心の支えにもなった作品です。千絵が起こしてゆく行動は多くの女子を勇気づけるものとなったのではないかと思います。千絵はそこから恭司と郁子を引き離すきっかけを作ってしまい、千絵は自らの過ちを心から反省し親や恭司に涙を流し土下座してしまいます。そこから千絵は自分の悪どさを自負しながら少しづつ恭司に近づいてゆくのです。その姿は多くの女子の願望の姿であり、起こしたくても起こせず想像のままにしてしまう理想の姿なのではないかと思います。
どうせ別れてしまうならこのくらいのワガママは言ってもいい
ストーリーの後半から千絵は自分が恭司や郁子に対し本当に思っている事を自分の言葉で伝えるようになります。自分が恭司に選ばれることはもうないということを実感してから、素直でかつ勇ましくなる千絵の姿こそ恋に悩む読者を最大限に勇気づけるシーンとなったのではないでしょうか。最後別れの際に渡した手紙に「ファーストキスはあなたとしたかった」と伝え千絵は恭司にキスされる。このシーンから、頑張って告白したのだから相手にこのくらいわがまま言ってもいいんじゃない?といった読者達の背中を優しく押してくれる作者の愛情あふれるメッセージ性を感じます。たいていの少女漫画では最終的には主人公の恋が実る結末が多い中、こちらの作品ははじめから最後まで見向きもされないまま女として認めてもらえないまま終えるのです。現実にありふれる恋愛の悩みの多くは見向きもされないまま過ぎ去ってゆくパターンが多く、その有り様を作者は忠実に描き更には勇気を与えてくれます。女子小中学生だけに限らず広い年齢層の女性の共感を呼ぶものです。小花先生はこれまで数々の作品を発表されてきたが、この作品こそ小花作品のルーツなのではないかと思います。
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