ギャグ路線でもラストはいい話系へ
話が突如としてぶっ飛ぶ
これは短い。そうなると思っていた。かわいくたって手に負えない感じの女子と、不良でどうしようない男子が出会っていい感じで終わる。そんな物語になるだろうと。
ところが……20巻を優に超えて続いた。7人の魔女と言いながら、すぐに次の7人の魔女が出てきて。もう訳が分からない。しかも、キスで入れ替われるのは白石さんと山田だけだと思ってたのに、とっかえひっかえどんどん入れ替わるから、こりゃーギャグだろう…?「銀魂」みたいにたまにでいいのに、だいたいいい話系を持ってくるからどうしようかと思った。
それでも、登場する女の子たちがかわいいのでついつい読んでしまうこの不思議。女の子の悩み・対人トラブル・学校で巻き起こる数々の謎…しょうもないこともあったが、みんな山田に恋する。そりゃー必死に助けられたらイチコロだよ。鈍感な山田、愛すべきキャラクターだった。「一生懸命やってたら女子に好かれる」っていう淡い幻想を抱く男子たちの心をつかんだことだろう。
魔女という名のもとに特殊な能力を発動させて迫ってくる敵。いつも敵が仲間に変わっていくのでそれほど心配することなく読み進めるも、山田と白石さんの恋が全然進展しないからイライラもした。少女漫画ではないし、あまりドキドキ展開を期待してもいけないだろうが…マガジンに咲いた少女漫画だったと思っている。いい話系多すぎるんだもの。方向性はたびたび見失ってきたが、いつかは2人はうまくいく、と思って読み進めることができた。
当初、山田はカッコいいわけじゃなくて、どっちかというとダサさがあった。白石さんも暗くて怖い感じ。でも徐々に仲良くなり、協力していくうちに、なんだか山田がどんどんイケメンになって、白石さんもまぁ「ニセコイ」ヒロインによく似た人物へ…
考えさせるから良かったのかも
ギャグだと思わせないような、推理戦があったことが長続きの秘訣だったのではないだろうかと思っている。割と楽しく読み込むことができるだろう。山田は女嫌いだったはずだが、関わりを持つことで否応なく女慣れしていくのが怖かった。扱いを覚えた鈍感イケメンは本当に手が付けられない。ケンカに強く、女に優しく、ハートが強いときたらもはや完璧か?バカでも勘はかなりのもので、気遣いも一流。山田って本当に何者?
キスで入れ替わることが常態化してしまうので悲しいが、これはロマン。こんなハーレムに住みたい。山田たちが高校を卒業するときには魔女がすっかり消え去ってしまったが、あれはいったい何だったのか、もはや謎状態で終わっている。散々推理していろいろ苦労したのに、山田が白石さんに記憶を注入して全部力使い切っちゃったのかなと思う。
推理したあとの解決方法はずさんなものが多かった。力づくで、山田の天然くんで、その他ハートに訴える方法がよく使われる。あれだけ知的な考察も、解決方法は単純なんだな、というシュールさもおもしろい。山田と白石さんにとどまらず、朱雀高校全体と数々の魔女たち、超常現象研究部のメンツがみんな右往左往しながら、毎日がんばっていた。始まりは堂々とキスできる場所がほしくて部屋を探しただけだった。そこから広がったたくさんのつながりは、一生に残る財産になった…いい話。
話が終わらないんですけど
7人の魔女って言ったじゃないか。なのになんで14人、21人って…いったいどうした?人気だったんだろうなー…。山田のハーレムはとにかく終わらないのである。山田が高校1年生、2年生、3年生と進んでいくからね。魔女はどの学年にも存在するのだ。よくもまぁこれだけの女子の個性を描くなーと感心。いったいどうやって情報収集しているのだろうかと気になる。でもさすがに27巻、28巻と続くのは長すぎやしませんかね。
しかも、不良だった山田がなぜか生徒会秘書にまで上り詰める。白石さんがテスト受けてくれたりしたおかげもあるだろうし、貢献度が高いことも要因の一つだろう。女子の人気が高いかどうかは、どの時代・どの学校においてもかなりのウェイトを占める。女の子たちの悩みを解決することは、まさに学校全体をリフレッシュすることに繋がっているのだ。女の子ってこれだから怖い。
キスで入れ替わって能力をもらったり移したりしながら改革。なんて楽しい。こんなおいしいことってないと思うよ。夢だわー。もはやなぜ山田は不良だったのだろうかと思うほど、卒業にたどり着いた山田は好青年に生まれ変わっていた。キスも自然にできる、紳士…罪な男である。お友だちも…何この数?多すぎない?キャラクター増えすぎじゃない?
ついにゴールを決めた山田
山田がみんなから忘れられる事件が発生したと思ったら、終わり間際には白石さんが山田との記憶をなくす、というイベントが発生した。記憶喪失好きだねー。そりゃー「キス」が最初から最後までテーマだったのだし、復活する方法も同じだろうとは思ったけど…ひねりがなくその通りだった。
何か大切なことを忘れている気がする…うん、よく聞くセリフ。何なんだろうねこの朱雀高校。魔女って何のためにでてきたんだろうね?そこを解決してくれないのは何なんだろう…。
まぁ、山田が白石さんにしたプロポーズはとても素敵だったので良しとしよう。宮本くんと練習しているときに白石さんが部屋に入ってくるというアクシデントだったけれど、割と正直に、ストレートだったのが好印象だった。回りくどくなくていいじゃない。最終回はそのまま結婚式の時にとび、幸せそうーに幕を閉じる。
誓いのキスで何かが起きるわけでもなく、本当に良かった。ここでまたギャグに戻されたら、それこそ収拾つかない事態になっていたと思う。あれだけツンデレで、山田のことを大事に想っていた白石さん。報われて本当に良かった。鈍感で不良だった山田。恋して良かったね。最終回前に何起こしてくれてんだよって焦ったけど、うまくまとめてくれてよかった。幾度となく告ってきた山田の想い、通じてよかったよ。まさか「ヤンキー君とメガネちゃん」状態になったらどうしてくれようかと思った。
物語の構成的に、いつ終わってもおかしくないような内容になっていたと思うが、これだけ長く引っ張られたのは、マガジンの中でこんな甘い話がなかったからだろうなーって思う。ジャンプに対抗した、似たような恋物語であった。
妙にエロいキスシーンだった
もはやこの物語の背景、朱雀高校の謎はすべて置いておこう。これはキスをいろいろなパターンで楽しめる漫画なのである。妙に背景が凝ってて不覚にもドキドキしてしまったり、数々の女子、はたまた男子ともキスを交わしてきた山田。そして女同士もあり。なんかキスって…興奮するんだね。個人的にはそんなもん、って思っていたのが変わった気がするよ。大事にしたほうがいいね。
山田にはまったく関わりのなかったがり勉に始まり、女の子との関わり、誰かを好きになるということ、そして好かれるということ…いろいろなことを学習した山田であった。ただのハーレム漫画ではなく、いい話を多くしたのは、「ヤンメガ」からの反省だろうか?高校生活を楽しみながらも成長していく、そんな山田たちは愛すべきキャラクターだ。男子でもおもしろいが、女子でもすんなり読める内容。これは「ヤンメガ」のぶっ飛び具合からは想像もつかない。次回作にも期待したいところである。
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