山田と白石の恋
物語の鍵であるキス。その有用性と効果。
この作品のポイントとなるものがカスである。この作品中の学園では魔女と呼ばれる生徒がいる。主人公の山田はひょんなきっかけからあの女子生徒とキスをして入れ替わりの魔女の能力を得た。その後も様々な魔女の能力をキスをすることで得ていくのだが、様々な美女とキスをすると言う一見品のないような設定だが、この作品の中ではキスはそのようなものとしては描かれておらず、そこまで気にならなかった。初めの頃は、魔女を探していくのだが、その時の緊張感がたまらない。7人目の魔女に見つかったら記憶を消される。その設定のおかげで、物語に緊迫感が生まれたと思われる。
何度も蘇る、そして話の厚みが増していく7人の魔女の設定。
物語は7人の魔女を見つけて生き、魔女についての真相を解明していくのだが、山田は7人目の魔女を見つけ!また魔女の真相について知ることになる、
そして、魔女の儀式を行い、学園から魔女を消すようにと儀式により、魔女を消す。しかし、その結果、また別の7人の魔女が誕生することとなる。一回目と異なり魔女のすべての能力がわかっているため、簡単だと思われた魔女探しだが、一回目とは異なる能力が生まれていたりなど、前の内容を知っている読者をさらにハラハラさせてくる設定にドキドキしながら話を読むことができた。また、その中で各魔女にもそれぞれ闇があるのだが、そのうちの1人の話について語りたい。その少女はいじめにあっていた、
そのせいで、今自分の周囲にいる数人との関係を守るため魔女の能力を使い、他のものを寄せ付けなかった。しかし、主人公山田はそのことを知るや否や、その問題を解決しようとした。自分の周囲との関係をこれ以上壊されたくない少女とそのような少女の考え方を壊したい山田、
その両者の葛藤がとても共感でき、こころにひびいた。
このように魔女と山田のやりとりがこの話の見ものである。
山田とちょうけんぶ。のメンバーの絡み。またヒロインの魅力。
山田とちょうけんぶ。のメンバーの絡みは見ていて面白い。また、山田がみんなから忘れられるのだが、そのようなシリアス設定ちゅうも、話に緩みをつけてくれて、いいアクセントになっていたと思われる。山田と入れ替わった白石と、キスをする男子がいるのだが、見た目上、それは男子と男子のキスであり、少し不気味であり、また、少し笑える。そのほかにも、オカルト大好き少女や、部室で天ぷらを揚げ出す帰国子女の男子、勉強しかしないヒロインなど、個性豊かであり、おもしろい。
山田がみんなから忘れられた時も、本当はそれ以前の山田の記憶は誰にもない。しかし、それでも山田のことを歓迎し、少しでも暖かく迎えようとするちょうけんぶ。のメンバーの態度には涙腺が緩む部分がある。
孤独な山田の帰る場所として、記憶がなくともあり続けようとするその姿勢は実にいい友情物語だ。山田と白石の恋のストーリー。
また、その一員でかつ、山田の彼女である白石について。白石はこの物語のヒロインであり、また最後の方でわかるのだが、始まりの魔女という、この物語のキーマンでもある。白石は幼少の頃より、親の愛に恵まれず、孤独であった。そのせいでか、性格も内向的で、学校でもいじめにあっていた。そんな時に出会ったのが山田である、山田は無自覚であったが、白石は助けてくれた山田に密かに恋をしたのだ。そして、山田と付き合うため、始まりの魔女となり、山田と階段から落ちて入れ替わるという出来事を起こし、山田と接点を持つようになる。白石と山田の恋は、ラブストーリーものの漫画にしてはとてもスローペースで進んでいく。しかし、それぞれの表情など些細な描写からすれ違いながらも徐々に2人の間が近づいていくのが読み取れる。この辺りはさすがと作者を褒めたい。
このようにゆっくり進む恋だが、物語の終盤。山田とあと1人を除いて、白石の記憶を全員が失うという事件が起こる。その理由が始まりの魔女が白石だったということなのである。初めの頃より続いてきた7人の魔女探し。そのすべてのげんきょうが、その魔女探しの始まりであった階段転落からの入れ替わりだったというこの大きな伏線。また、白石がヒロインが、彼女がそうであったという衝撃は呼んでいて鳥肌がだった。そして、全員から白石の記憶が消えたように、白石からも全員との記憶が消えていたのである。しかし、白石が記憶が帰る前、自分のノートに、山田に当てた自分の取説を残していた。たとえ記憶を失おうとも、2人は結ばれる運命にある。その強い運命があれば大丈夫という思いだったのだろう。そして、無事記憶も戻り、ハッピーエンドとなった。2人の愛はとても強かったのだろう。
最後の結婚のシーンなど登場人物のその後が見られて実によかった。
実に読者サービスの良いことだと思った。
最後になるが、結婚して山田と白石の子供に山田が絵本を読み聞かせているシーンなどとてもよかった。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)