お金と人間の本質 - 闇金ウシジマくんの感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,136件

闇金ウシジマくん

4.104.10
画力
3.50
ストーリー
4.30
キャラクター
4.40
設定
4.20
演出
4.10
感想数
5
読んだ人
10

お金と人間の本質

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.5
設定
3.0
演出
3.0

目次

人とお金から繰り広げられるドラマが実は日常的に起こっている現実だった

お金に支配された人間のありのままの姿を描いている漫画です。

非現実的なようで、普通にあり得る話が多いと思います。

お金から生み出される「疑念、憎しみ、幸せ、裏切り」が全てごった煮にされた人間ドラマは

一見地獄絵図のようにも見えますが、実は普段何気なく生きている日常生活だったりします。

もはや、お金があってもなくても奴隷は奴隷なんだということを心に「ずずい」と突きつけられます。

そんな奴隷たちの「奪い合い」そのものを生業としている主人公ウシジマくんは、とてつもなく冷酷ではありますが、なぜかお金よりもっと大切な物を教えてもらっている気がしてきます。

お金は考えてみれば不思議な物質です。

衣食住には、もちろん必要ですし、目に見えない商材にも使い、祝い事、ご不幸、離婚、紛争等にも使われます。

そもそもお金が原因で人と人が傷つけあったり、助けあったり、企業においては商談成立の重要なポイントにもなり、争うのにも繋がるのにもお金が関わってきます。

このもの自体はただの紙切れであり、そこに色んな感情を勝手に乗っけているのは、すべて人間ということになりますね。

このように、人間のありとあらゆる感情を乗せて運用することが可能で、時には人の命も左右するような動きも見せるツールは他に類を見ません。

一体お金とは何のでしょうか?

その一片がウシジマくんでは表現されているように思います。

闇金はお金を貸す仕事で、返せば何も文句なしです。

どんな手段でもお金を返せば闇金にとっては正義となり、どんなに美談を語っても返せなければ闇金にとって悪となるので、債務者の身を滅ぼすような、とてつもない手段に出ます。

ウシジマ社長はこの事を純粋に一片の曇りもなく遂行していくので、一見すれば冷酷非道人間のように思いますが、その奥から感じるのは「人を認める」「人をナメていない」という事です。

債務者でも立派な人間なんです。(当然ですが。。。)

借りたものはどんな事があっても返させる!

これはウシジマくんが債務者を立派な人間として認めている証拠です。

日本は借金している債務者には、色々と甘い法律が存在し、自己破産、個人再生、特定調整等、少し手続きをすれば借金を0にする事が出来てしまう国です。

これは裏を返せば人を骨抜きにして「幸せ」を奪っている行為です。

お金がない人は、お金の正体をよく分かっていない人たちなので、貯め方が分かりませんから、使い方や運用の仕方も分からないのです。

そんな人たちに、いくらお金を与えても、おそらく幸せに生きることは出来ないでしょう。

債務者に甘い国のシステムは、そんな人たちを無限に生み出していくだけのように感じます。

都市伝説ではないですが、国レベルでの洗脳って当たり前に持っているお金の概念を植え付けるような壮大なプロジェクトとして動いているのではないでしょうか。

もし、そんな事が行われているのだとしたら、ウシジマくんは漫画を伝って国へ一矢報いている事になるのです。

まぁ、すべてウシジマ社長が素晴らしいとは思えませんが、そんな事を改めて勉強させてもらうと言うことには変わりません。

そもそも、はるか昔は物々交換でした。

でも、物々交換だと物によっては腐って交換できない状態になります。

需要がない時に作物がとれて、いざ需要が出そうな時に作物がとれない、と言う状況をお金が解消してくれるのです。

とれた物を換金することで、長期にわたって安定した生活を送ることができるツールなのです。

今は何でも便利になったので、この辺の本質が非常に見えにくくなっているのも事実ですが、そんな時代だからこそ、今一度俯瞰的に世界を見渡せば色んな「当たり前」が見えてくるんだと筆者は感じます。

ウシジマくんのストーリーは敢えて、理屈っぽい話は抜きで、まさに今のリアルをありのまま見せつけてくれています。

しかしながら、突き詰めれば突き詰めるほど、どん底になればなるほど、お金の正体へ近づいていくのが読みながら分かってくる作品です。

あぶり出される人間の色んな感情と本質からみる本当の「幸せ」

人が人として堕ちていくときは「建前、嫉妬、蔑み」がからまり合い、それに足を取られてズルズルひきずり込まれてしまいます。

でも、どん底に落ちきってしまった時にこそ見えてくる人間の本質は、実は素敵なことが多いようです。

人間が悪いことをするのって、何かを渇望している現れであり、その「何か」を求めるあまり色んな武器を使ってそれを求めさ迷います。

往々にしてお金がその的になることが多いようですが、実はお金が最終的な目的ではないことを、この漫画から暗に伝わってきます。

ストーリー中の「奴隷くん」では、中流家庭を必死に守るあまり財産に執着する母と、そんな親に嫌気が差しつつも思いっきり利用してぬるま湯に浸かりきった息子が描かれています。

いつ、なくなるか分からないお金の恐怖から逃げるためにギャンブルに没頭し、勝てば一瞬の悦に浸り、負ければ見せかけの覚悟をする様はリアルとしか言いようがありません。

ウシジマ社長の手中に入ってからは、家もなくなり、主人公は昼夜働き詰で借金を返済してくことになるんですが、どう見ても幸せな家庭にしか見えません。

人間は何かに向かって生きることが人生そのものであり「幸せ」なんだと、改めて痛感します。

どれだけ貧しくても、過重な労働をしても、これさえあれば元気で幸せに人生を送ることができるのではないでしょうか。

「お金がすべてだ」と言う言葉にはいろんな意味で考えさせられます。

この言葉があっているか間違っているかは、発言する人によって異なってくるような気がしてなりません。

人はお金で動きますが、やりたくない事には、どれだけ積まれても限界があり、強行突破しようものなら、その人は不幸な人生を送っていく事になります。

実は人ってお金を見ているようで、お金の「先」を見ているんですね。

その「先」は人によって違い、自身も気づいていない事が多いものです。

でも、それこそが幸せであり、人間の最終目的であり、終着駅のように思います。

その「先」は、実のところプラスレスである事、ちょっとした工夫と、妙なプライドを捨てることで、すぐにでも実現できることに気づいている方は少ないです。

ちょうど世界の富裕層と同じぐらいの割合でしょうか笑

そして、その「先」を手に入れてからお金が勝手によってくることを知っている人たちも少ないですね。

これも、ちょうど世界の富裕層と同じぐらいの割合になるかと思われます。笑

お金は大事に使いたいものです。

だって世界中の人間のありとあらゆる感情が乗っているし、これからも色んな人に渡って色んなドラマを刷り込んでいくんでしょうから。

読んだあと現実に戻った時の安心感と恐怖感

人間卑しく、浅ましいもので、この漫画を読み終わったときに感じる最初の気持ちは「安心感」です。

悪夢から覚めたような「自分はまだマシ」と下を見て、自分はまだ大丈夫と思わせるダメな感情です。

でも、正直に言って下を見れば誰でも安心しますよね。

この作用も人気の一つかもしれませんが、恐ろしいことに、この感情こそが漫画に出てくるキャラクターの感情そのものだったりします。

これは決して作者が狙ったものでないことを願うばかりなんですが、たかが漫画、されど漫画と侮れないです。

この漫画を読んだ瞬間から読み手自身が、すでに登場人物となってしまっているようなものですから。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

こわい、こわすぎるよ…『闇金ウシジマくん』

色のないマンガ山田孝之さんが主人公で『闇金ウシジマくん』のドラマがスタートしたころ、原作がマンガだと知り、ちょっと読んでみたいなと思ってた。でも、表紙がクスリでラリってるっぽい色使いと線だったから、単行本の購入をいつも躊躇しちゃってたんだよね。読むきっかけになったのは、某中古本販売店。その当時はまだ立ち読みが可能で(今はビニールかかってしまったけれど)、他に気になる作品もなかったし、ちょっと目を通してみて、良ければ何冊かまとめて中古本を買って行こうと思ったわけです。パラパラ~のつもりだったけど、あっという間にのめり込んだ。でも話がディープすぎて怖くて、結局買わなかったんだよね。最初の印象は「色のないマンガ」。私の場合、大抵どんな作品のモノクロページでも「色」を感じる。たぶん、大抵の人が私と同じじゃないかな? 例えば、肌の色にしても健康そうな人は血色の良い肌色だったり、逆に不健康そうな人...この感想を読む

4.54.5
  • かおるさんかおるさん
  • 291view
  • 2103文字
PICKUP

裏社会を描いたリアルな漫画

初めて読んだときは衝撃的でした。ハッピーエンドで終わらない後味の悪い漫画です。でも何故か読んでしまい引き込まれていきます。1巻に出てくるベラ。頭から離れません。見栄を張る為カウカウファイナンスからお金を借りたのが運の尽き。みるみるうちに幸せな人生が崩れていきます。最後は原型を留めていません。現代社会をしっかり押さえています。借金はもちろんのこと、水商売、薬、風俗、交友関係、殺人、援助交際などなど。現代人が紙一重の状況にあるからこそ引き込まれていく内容なのではないかと思います。ニュースでよく耳にすることが多いワードだからこそ、裏社会の話で普段生活している人には無縁のお話しなのに引き込まれていく部分があるのではないでしょうか。登場人物は兎に角ダメ人間が多いです。ウシジマくんはダメ人間になると分かっていてお金を貸します。どんな手段を使ってでも返済してもらうのです。ウシジマくんの収入源はここなの...この感想を読む

4.04.0
  • ともたんともたん
  • 88view
  • 532文字

リアル感がたまらない!

このマンガの内容はタイトル通りで闇金業務を行っている主人公の話でアングラ。しかし妙にリアル感があるところが面白い。もしかしたら実話に即している部分もあるのではないかと思われる。主人公のウシジマは物静かでケンカが強いが堅気、ペットにウサギを飼っている。また以外と部下思いな所もある。序盤はウシジマが金を貸した債務者がどのような運命をたどるかという話。ダメ人間で結局金を返す事ができなくなりタコ部屋に連れてかれて行く者。闇金は違法なので法律上は返済しなくても良いので初めから踏み倒すつもりで金を借り、最終的にウシジマに捕まり落とし前をつけさせられる者。だめな彼氏のためにフーゾクで稼ぐ女など、とても想像力だけでは描く事ができない世界観が面白い。しかしアングラな仕事なゆえに仲間からの裏切りやヤクザとの抗争に巻き込まれ窮地に追い込まれて行く。この本はある種、自己啓発的な側面があると思う。この本を読んだ...この感想を読む

4.04.0
  • イワンタイラーイワンタイラー
  • 62view
  • 501文字

感想をもっと見る(5件)

関連するタグ

闇金ウシジマくんを読んだ人はこんな漫画も読んでいます

闇金ウシジマくんが好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ