お金と人間の本質
人とお金から繰り広げられるドラマが実は日常的に起こっている現実だった
お金に支配された人間のありのままの姿を描いている漫画です。
非現実的なようで、普通にあり得る話が多いと思います。
お金から生み出される「疑念、憎しみ、幸せ、裏切り」が全てごった煮にされた人間ドラマは
一見地獄絵図のようにも見えますが、実は普段何気なく生きている日常生活だったりします。
もはや、お金があってもなくても奴隷は奴隷なんだということを心に「ずずい」と突きつけられます。
そんな奴隷たちの「奪い合い」そのものを生業としている主人公ウシジマくんは、とてつもなく冷酷ではありますが、なぜかお金よりもっと大切な物を教えてもらっている気がしてきます。
お金は考えてみれば不思議な物質です。
衣食住には、もちろん必要ですし、目に見えない商材にも使い、祝い事、ご不幸、離婚、紛争等にも使われます。
そもそもお金が原因で人と人が傷つけあったり、助けあったり、企業においては商談成立の重要なポイントにもなり、争うのにも繋がるのにもお金が関わってきます。
このもの自体はただの紙切れであり、そこに色んな感情を勝手に乗っけているのは、すべて人間ということになりますね。
このように、人間のありとあらゆる感情を乗せて運用することが可能で、時には人の命も左右するような動きも見せるツールは他に類を見ません。
一体お金とは何のでしょうか?
その一片がウシジマくんでは表現されているように思います。
闇金はお金を貸す仕事で、返せば何も文句なしです。
どんな手段でもお金を返せば闇金にとっては正義となり、どんなに美談を語っても返せなければ闇金にとって悪となるので、債務者の身を滅ぼすような、とてつもない手段に出ます。
ウシジマ社長はこの事を純粋に一片の曇りもなく遂行していくので、一見すれば冷酷非道人間のように思いますが、その奥から感じるのは「人を認める」「人をナメていない」という事です。
債務者でも立派な人間なんです。(当然ですが。。。)
借りたものはどんな事があっても返させる!
これはウシジマくんが債務者を立派な人間として認めている証拠です。
日本は借金している債務者には、色々と甘い法律が存在し、自己破産、個人再生、特定調整等、少し手続きをすれば借金を0にする事が出来てしまう国です。
これは裏を返せば人を骨抜きにして「幸せ」を奪っている行為です。
お金がない人は、お金の正体をよく分かっていない人たちなので、貯め方が分かりませんから、使い方や運用の仕方も分からないのです。
そんな人たちに、いくらお金を与えても、おそらく幸せに生きることは出来ないでしょう。
債務者に甘い国のシステムは、そんな人たちを無限に生み出していくだけのように感じます。
都市伝説ではないですが、国レベルでの洗脳って当たり前に持っているお金の概念を植え付けるような壮大なプロジェクトとして動いているのではないでしょうか。
もし、そんな事が行われているのだとしたら、ウシジマくんは漫画を伝って国へ一矢報いている事になるのです。
まぁ、すべてウシジマ社長が素晴らしいとは思えませんが、そんな事を改めて勉強させてもらうと言うことには変わりません。
そもそも、はるか昔は物々交換でした。
でも、物々交換だと物によっては腐って交換できない状態になります。
需要がない時に作物がとれて、いざ需要が出そうな時に作物がとれない、と言う状況をお金が解消してくれるのです。
とれた物を換金することで、長期にわたって安定した生活を送ることができるツールなのです。
今は何でも便利になったので、この辺の本質が非常に見えにくくなっているのも事実ですが、そんな時代だからこそ、今一度俯瞰的に世界を見渡せば色んな「当たり前」が見えてくるんだと筆者は感じます。
ウシジマくんのストーリーは敢えて、理屈っぽい話は抜きで、まさに今のリアルをありのまま見せつけてくれています。
しかしながら、突き詰めれば突き詰めるほど、どん底になればなるほど、お金の正体へ近づいていくのが読みながら分かってくる作品です。
あぶり出される人間の色んな感情と本質からみる本当の「幸せ」
人が人として堕ちていくときは「建前、嫉妬、蔑み」がからまり合い、それに足を取られてズルズルひきずり込まれてしまいます。
でも、どん底に落ちきってしまった時にこそ見えてくる人間の本質は、実は素敵なことが多いようです。
人間が悪いことをするのって、何かを渇望している現れであり、その「何か」を求めるあまり色んな武器を使ってそれを求めさ迷います。
往々にしてお金がその的になることが多いようですが、実はお金が最終的な目的ではないことを、この漫画から暗に伝わってきます。
ストーリー中の「奴隷くん」では、中流家庭を必死に守るあまり財産に執着する母と、そんな親に嫌気が差しつつも思いっきり利用してぬるま湯に浸かりきった息子が描かれています。
いつ、なくなるか分からないお金の恐怖から逃げるためにギャンブルに没頭し、勝てば一瞬の悦に浸り、負ければ見せかけの覚悟をする様はリアルとしか言いようがありません。
ウシジマ社長の手中に入ってからは、家もなくなり、主人公は昼夜働き詰で借金を返済してくことになるんですが、どう見ても幸せな家庭にしか見えません。
人間は何かに向かって生きることが人生そのものであり「幸せ」なんだと、改めて痛感します。
どれだけ貧しくても、過重な労働をしても、これさえあれば元気で幸せに人生を送ることができるのではないでしょうか。
「お金がすべてだ」と言う言葉にはいろんな意味で考えさせられます。
この言葉があっているか間違っているかは、発言する人によって異なってくるような気がしてなりません。
人はお金で動きますが、やりたくない事には、どれだけ積まれても限界があり、強行突破しようものなら、その人は不幸な人生を送っていく事になります。
実は人ってお金を見ているようで、お金の「先」を見ているんですね。
その「先」は人によって違い、自身も気づいていない事が多いものです。
でも、それこそが幸せであり、人間の最終目的であり、終着駅のように思います。
その「先」は、実のところプラスレスである事、ちょっとした工夫と、妙なプライドを捨てることで、すぐにでも実現できることに気づいている方は少ないです。
ちょうど世界の富裕層と同じぐらいの割合でしょうか笑
そして、その「先」を手に入れてからお金が勝手によってくることを知っている人たちも少ないですね。
これも、ちょうど世界の富裕層と同じぐらいの割合になるかと思われます。笑
お金は大事に使いたいものです。
だって世界中の人間のありとあらゆる感情が乗っているし、これからも色んな人に渡って色んなドラマを刷り込んでいくんでしょうから。
読んだあと現実に戻った時の安心感と恐怖感
人間卑しく、浅ましいもので、この漫画を読み終わったときに感じる最初の気持ちは「安心感」です。
悪夢から覚めたような「自分はまだマシ」と下を見て、自分はまだ大丈夫と思わせるダメな感情です。
でも、正直に言って下を見れば誰でも安心しますよね。
この作用も人気の一つかもしれませんが、恐ろしいことに、この感情こそが漫画に出てくるキャラクターの感情そのものだったりします。
これは決して作者が狙ったものでないことを願うばかりなんですが、たかが漫画、されど漫画と侮れないです。
この漫画を読んだ瞬間から読み手自身が、すでに登場人物となってしまっているようなものですから。
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