ヒーローだって働いてる - スパイダーマン2の感想

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ヒーローだって働いてる

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

自己犠牲の上に輝き続ける人間の苦悩を描く

スパイダーマンって、初めて上演されたときはすごい流行ったよね。まさかのスーパーマンじゃなくてクモ男、今までにない戦闘スタイル、そして何より最強のようで最強ではない部分を持つこと。人を救うことでお金が得られるわけなんかない。でも、彼はやっぱり人を救う。そんな彼を誰もが褒めたたえ、感謝するのである。

しかし、ヒーローだって…生活している。実は苦学生で、お金ないけど大学通ってて、叔母さんにお世話になってて…彼女はいたようでいなくて、今でも踏み切れなくて、親友はいるのにスパイダーマンに父を殺された恨みから、心の底からぶっちゃけることができてたわけじゃなくて。どんだけ苦労してんだよスパイダーマン。特別な機械を使うわけじゃない。その身一つで、スパイダーマンスーツが体を強化してくれているだけ。そんな僕は、これからもスパイダーマンとして生きていくことができるのか?誰かを心の底から救いたいと思って行動し続けることができるのか?

彼の想いが痛いほどで、こんなヒーローの映画ある?って思う。「ハンコック」は彼なりに最強だったし、生き方に迷いながらも進んでいる感じがあったけど、スパイダーマンであるピーターは本当に苦労人だ。しかも、第1作で倒した敵キャラの家族と密接にかかわらなくてはならないという最悪の事態。関係性を絶つなんてそんなことはできるはずもなく、彼は日々を苦悩しながら、人を救っているのである。

親友であり続けることはできないのか

ピーターとハリー。彼らはどうして分かり合うことができないのか?父親を殺されたんだぞ、と憎しみしかもたないハリー。ピーターは相当気まずかったことだろう。だって自分が殺してしまったんだもの。善良な人を守るため、悪の人間を殺すことがヒーローの仕事。でもそれは、誰かにとって憎しみを生むものでもある。そうだとすれば、ヒーローなんて…やめちまえって思う。だったら、普通に生きてたほうがマシだって。

彼が普通を取り戻してからは、以前のように自信あふれる自分ではなくなってしまい、MJにがんばって気持ちを伝えたけれど理解されず、スパイダーマンのない自分に何があるのかを考え始める。世の中には犯罪がまた増えはじめ、死ぬ人が増えた。ハリーの恨みは消えず、何が悪くて何がよかったのかもわからない。この苦悩は、見ていると本当に苦しくて、どうしたらいいのかわからなくて、でも真実を知っている者から見れば、それはきっと逃げなのかもしれなくて。ピーターがスパイダーマンだったとハリーがわかったとき、彼は愕然とする。この苦しさ…もう観るのやめようかなと思うほど、悲しかったよ。親友なのに、ずっと仇だと思ってきた相手が大事な人だったら、どうしたらいいの?父親の「復讐しろ」という言葉が頭でこだまするハリー。そして彼が見つけるゴブリンの武器…もうスパイダーマン3のストーリー決まったじゃん。もう完全に悲しい話になる。どこまでピーターは苦しみながらヒーローやらなくちゃならないんだろうって胸が痛すぎた。

しかも男同士の友情の場合、女よりも落胆がすごいことになってるんじゃないかな。信用するまで時間がかかる分、きっと裏切られたと感じてしまったらもう戻れない。

叔母さん…!

夫を誰かに殺されたと思っていた叔母さん。ピーターにもよくしてくれて、育ててくれて…自分にお金がないってわかっていてもピーターの誕生日を祝ってくれて。こんな人を絶対に悲しませたくない。そうピーターは思っていたに違いない。でも、ここですらも、ピーターは嫌われなくてはならなかった。真実を知った叔母さん…引っ越すことを決めてしまった叔母さん…そんな叔母さんがピーターにくれた言葉は、最強だった。

過去の事はもういいの 告げてくれたことはとても勇気のあること…

これを善い人と言うんだ、覚えておけ!さらに、スパイダーマンであることの偉大さと苦しみをピーターに教えてくれる。それでも必要だと。

カッコ良すぎる。あらゆることの答えともいうべき、最強のメッセージだった。これこそ、ピーターが欲しかった贈り物。スパイダーマンに将来なりたいと願う子どもがいる。必要としてくれる人がいる。いらないという人がいる。そして、やっぱり自分自身がやりたいと願う。もうそれなら進むしかないんだよね、叔母さん。やるべきものが決まったら、後は進むしかない。悩んだって苦しくたって、進むしかないんだ。それを教えてくれて、ありがとう。この映画は、ただのヒーロー物語じゃない。アクションで魅せるだけのものでもない。人生を教えてくれているくらい、いい事言ってるんだよ。そこからMJのこともどんどん好転し始めるからね。彼がスパイダーマンであり続けると決意さえすれば、道は見える。要は、何事も決意なのだ。

すべてを吹っ切って進め

苦しくて、どうしようもなくて、それでも誰かを助けて…迷いながら進むスパイダーマンは、それこそ自分でつくったクモの巣にくっついて絡まり、動けなくなってしまった虫みたいだった。動けば動くほど絡まり、でも黙っていては誰も助けには来てくれなくて、あがいてあがいて体動かしまくって吹っ切れて、ようやくクモの糸から解放されたような。そんな印象の強いのがこの「スパイダーマン2」だと思っている。

途中、クモの糸が出なくなってまともに人を助けられなくなる事態があったね。何かの病気だったわけじゃない。それは精神的な要因だった。スパイダーマンスーツ、いったいどこまでリンクさせるんだよ…スーツを身にまとい、身体能力を高めてくれるだけがスーツじゃない。逆に、心が強くなくては、スーツの本来の強さを発揮できない構造なのだ…コインランドリーで洗えるスーツとは思えないその出来栄え。そのギャップはむしろシュールだ…。

すべてを吹っ切った時、MJはピーターを見てくれた。そして、ピーターがスパイダーマンだったと分かった時、一緒にいたいと願う。だけど、ピーターはスパイダーマンであるがゆえに、大切な人に危害が及ばないよう、一人で生きていくことを選ぶ。このシーンもね、すぐくっつかないのが憎い演出で、それくらい、ピーターがいい奴で、MJを想って行動しているってことがよく伝わってくるんだよ。

まさか結婚式をドタキャンしてまでピーターを選んでくれるとは思わなかったけど…そんな行動力あるMJは素敵よ。

これからをどう歩むか

オクトパスとの闘いは、なんだかんだ、心の闘いだった。彼にとっても、望んだ結果とならなかったことは悔しくて、夢を叶えたかったし、それが誰かを傷つけることになってもやり遂げたいと思っていた。その気持ちを、別の方向に使われてしまったことが残念でならない。スパイダーマンでは大事な登場人物(と言っても悪のほうだが)を余裕で殺してしまう。だから、悲しみがハンパないし、その分深みもハンパない。絶対次はハリーと戦わなくちゃならない。それが分かっているし、幸せがやってきてくれるのかもわからない。そんな中で、MJがピーターを選び、スパイダーマンであってもそうでなくても愛してくれる人がピーターの前に現れたことを心から嬉しく思った。ここまでよく引っ張ったなと思いつつ、主演のトビー・マグワイアもイケメンでついつい楽しんでしまった作品だ。

結局はね、迷ってぐるぐるしてるうちは進めない。でもその時間って決して無駄じゃないんだよね。それがあったから、これからが創れる。そう自分で言えるためには、やっぱりがんばって努力しまくるしかない。そういうやる気を引き出してくれる効果もあると思うよ。

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