超大作のラストが全然納得できなくて悲しすぎた - 輝夜姫の感想

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漫画レビュー数 3,135件

輝夜姫

4.134.13
画力
4.13
ストーリー
3.75
キャラクター
3.88
設定
3.75
演出
3.50
感想数
4
読んだ人
9

超大作のラストが全然納得できなくて悲しすぎた

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

ダークファンタジーのつかみはがっしり

最初が一番おもしろい。10年前まで、孤島で暮らしていた孤児たち。仲良く、楽しく暮らしていた彼らは、16歳になると引き取られていく。みな幸せそうであり、これからに期待を膨らませて旅立つ。なのに、その日はみんな見てしまったんだ。実は16歳になると殺されていたという事実を…

怖い。ホラーが待ってるんだって思ったらワクワクのドキドキだった。ここからサバイバルや!と思ったしね。でも案外と早く彼らはかぐや姫やそれに関わる人を殺して逃げることに成功する。大事なのはここからで、それぞれがそれぞれの10年間を過ごして、また集結しなければならなくなるというもの。10年越しのサバイバル…!なんて楽しそうなんだ。いや、実際にはそんな現場には居合わせたくはないが、物語の構成がとてもいい。絵が昭和であまり好みじゃないのについつい読んでしまったよ。

子どもたちはみんな成長して、主人公の晶も16歳目前だ。でも里親に同性愛の関係を迫られていて疲弊気味。ディープな人生送ってるなー見た目が完全に男だからね晶は。由と碧の関係は切ないものだったし、ミラーはなぜか秘宝を手にして発見。ノブオはスパイやらされていたりして、それぞれの背景は実に複雑。晶はかぐや姫の烙印とやらを押されてしまってさぁ大変。もしかして晶が殺されることに…?パニックサスペンスの気配を漂わせる第1巻だった。

それにしても、晶が5歳より前の記憶がないとか言ってた…それ別に不思議じゃないんですけど。

歪んだ愛が招くもの

とにかくね、晶を取り巻く愛がぐっちゃぐちゃのドロドロなのである。かわいそうすぎて、嫌になる展開だ。まゆの母親とレズ関係にあり、それから逃れたくて拒否しているのに、許してしまうときもあって…自分はそれを本当にやめてほしいと思っているのか、もはや嬉しく感じてしまっているのかがわからなくなっている。…このクソ親、マジで許せない。また、かぐや姫の設定でも、かぐや姫は百合の人だったってことで晶と完全にかぶっている。これはもう危険な香りしかしないよね。まゆもまた、母親からの遺伝なのかわからないけれど晶を独占しようとする。まゆに関してはキャラ的にだいぶ幻滅してたし、絶対まゆを選ばないで!!と願ってやまなかった。

かぐや姫の因縁を絶つ意味でも、晶には由とハッピーエンドを迎えてほしいと常に思っていたよ。そしてかぐや姫を否定し、同性愛ではない結末へ導いてほしかった。決してレズ自体を否定するわけではなくて、晶が心では自分を守ってくれる強い男の人を望んでいたからこそ、そう思う。

かぐや姫は帝によって月に帰れないように閉じ込められた存在。男どもとは契らず、子孫も残さず、月にも帰れず、もう地球人には恨みしかないと思う。だから、お互いが憎悪のかたまりだった。それを断ち切るには、両方を消滅させる勢いでぶっ壊すしかないと思うんだよね。いつまでも憎しみが続くより、終わってしまったほうがきっとつらくないじゃん。いつまでも呪い合って、関係ない人巻き込んで。マジで自己中やめてくれ。

方向転換は初めから考えられていたの?

秘宝探しだったはずなんだ。なのに、あの孤島にいた人間たちは、世界の要人のドナーだったとかいう訳の分からぬ設定が加わった。え?かぐや姫どこ行った…?十分ダークファンタジーでおもしろかったのに、まさか普通に人間の気持ち悪い欲望を見せられて憎しみ合う話に飛ぶとは思わなかった。神淵島のバトルロワイヤルじゃなかったらしい。いきなり晶とまったく同じ顔をした中国人が登場して、島を脱出して、ドナー(クローン)か本体か、どちらかの体の元気なほうが生かしてもらえるという話に。おーい、かぐや姫への生贄じゃなかったんですか?はぁ…

ここからはもうドナーたちの復讐劇になる。私たちは私たちの人格を持って今まで生きてきた。なのに、生きるか死ぬか、そして生きればその後の人生まで決められるなんて…ふざけてる。本体と入れ替わって生きることを選んだのが晶と碧、そしてミラー。他の人はもっと過酷で、本体に取り込まれたあとに意識から乗っ取るっていう…無理だってそんなの…。脳ではなく臓器から乗っ取るっていったいどうやるんだろう…そして、成功した人は成功し、失敗した人は失敗した。その消え方は実に切なく、苦しく、一番残酷だった。

消えたことに誰も気づいてくれない。

一番悲しいね、さっとん。誰も、悲しんでもくれないね。ここは思わずホロリ。そして、最初からいなかったみたいに、一人ずつ、死んでいく。誰か生き残ってほしい。もうそれだけを願いながら読む。

…ってそんな感動に惑わされそうになったが、最初のサバイバルゲームが見たかったんだっつーの。

幸せになってほしかった

由が死んじゃったことに動揺を隠せない。悲しすぎてやってられない。それなら晶も死ぬんかなと思った。そこでミラーが…晶を愛してくれることになった。というかずっと晶のこと好きだったんだけどね。晶はかぐや姫に関わることになって本当に女になったわ。今までが女から好かれていたのに、男からの求愛だらけになる。碧もいなくて、由もいなくて、望んだものはすべて手に入らなかったと言っても過言ではない。ミラーは晶を手に入れたけど、心が全部手に入ったわけじゃない。それでも、「由を愛する君ごと愛する」と決めた彼は相当かっこよかったし、一番幸せだったとも言えるだろう。

当初の生きていてほしかった人は死んでしまい、くっついてほしかった人は離れ、まゆは生きててもう最悪。ただただ人間怖い!ということと、不完全燃焼な気持ちが残って終わってしまった。ただ、世界観の壮大さは見事なもので、どうやったらこれだけファンタジーの世界を広げられるのか、すごい謎なくらいだった。昭和感のある絵が苦手だったけど、恐怖感・ダーク感を煽るのにはちょうどフィットしていて、何とも言えない空気を作り出していた。これはさすがと言える内容だろう。ストーリー・構成が良ければ、どんな漫画でも楽しめる。絵がうまいより、物語がうまい漫画のほうが実写化されやすかったりもするしね。絵が綺麗だと映画になった時キャストにがっかりすることがあるが、逆の場合はかなり嬉しいだろう。

どうせなら迎えに来るな

晶が死んで、ようやく由が迎えに来る…しかも月から。ここでかぐや姫復活?死んでからじゃなきゃ戻れなかったパターン?そしたらもう由が出てこないほうがまだ去り際つらくなかったのに、戻ってくるなよ!と言いたくなった。生きている間も、死んでからも、晶には由だけで、それもまたいいことなんだが、ミラーがせつなくてね…耐えがたいわ。出てくるなら、生きて戻ってきて、攫ってくれと思う。由ってそういう奴だろう?

結局、かぐや姫はいつでも人を惑わせるということね。地球に取り残されたかぐや姫も、死んでから月に戻れたりしたのかな…晶の血を受け継いだ子どもが、まさか因縁をつないでいるなんてことはないよね…?最後まで、その展開に納得できたわけじゃない。それでも、この壮大なファンタジーが最終回を迎えたことは感無量だなーと思っている。途中、かぐや姫がどっか行ってしまったんだと思っていたのに、最後の最後でちょい出しされた。悔しい終わりでもあるが、どうにかこうにか由と晶を引き合わせるための、苦肉の策だったんだろう。

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他のレビュアーの感想・評価

何とも言えないラストだが世界観は抜群

怪しき始まりなぜか5歳より前の記憶がない。いや、覚えていなくても当たり前な気がするが。そんなことを考えた私が読み始めたこの物語。ワケありな子どもたちの殺戮が起きるダークファンタジーの様相を呈した初めのころ、かなりおもしろかったです。10年前まで、孤島に孤児たちが集まって仲良く暮らしていた。16歳になると、きまって新しい親に引き取られるからといって施設を出ていく子どもたち。幸せそうに施設を旅立っていくので、残された幼い子どもたちは自分たちもいつかは…と思っていた。しかし、偶然にも目撃してしまった現場。実際には16歳になるとかぐや姫の生贄として捧げられ、殺されてしまうのだということがわかった…彼らが何とかかぐや姫や取り巻きの人たちを殺し、脱出することができたというあたりがなんか軽く流されていたことがちょっと気に食わなかったけど、そこからバラバラになったみんながもう一度あの忌まわしき孤島へ終結し、何...この感想を読む

4.04.0
  • betrayerbetrayer
  • 11197view
  • 3105文字
PICKUP

いろいろともう少し…

美しい静止画の数々文庫版の表紙折り返し作者紹介欄に「秀麗な絵」と書いてあるが、まさにその通りで、美しい絵に何度もページをめくる手が止まってしまう。人物も美しいが、背景がまたディテールまで美しく描かれている。登場する背景もイギリスの寺院だったり中国の宮殿だったりと、目をたのしませてくれる。美しさの一方でただ、人物は確かに美しいのだが、それはボディラインや姿勢の点で、顔は…似たような顔の人物が多い。特に物語の中で「イケメン」と称される人々は。サットンや楓と桂、ドナー時代の守や、それにもちろんマギー(そんな趣味はないのだがマギーのハイレグには見とれてしまう。そもそもあんな格好をしているのはおかしいのだが、絵が美しいので許してしまう)は個性的で、他の人物と間違えることはなく、サットンなどにいたっては体つきも他の人物と違って、巨体のアメリカ人らしいのだが、ミラーと由と昂は髪型を変えたら同じような...この感想を読む

3.53.5
  • revolurevolu
  • 640view
  • 2028文字

スゴイ作品

汚れか穢れか真っ向から衝撃を受けた作品でした。同性愛がまだ今日まで支持されていないときに売られていたと思うと。このような絵柄はあまり読まないことも多いのですが、思ったよりこの作者さんは絵が綺麗、というか美麗だったため、惹かれてしまいました。別作品も早く読みたいです。クローンというものにもスポットがあてられ、というかポイントの一つですね。このネタはよく見かけないこともないのですが、こちらでは使われ方が基調、作品の土台となっていますので、クローンネタが好きな人は純粋に面白く読めると思います。話が変わって、汚れを知らないというイメージを美しい人には抱くことが多いわけですが、そこまで汚れを知らないわけでもないんですよね、穢れとも言えるようなものに触れている面もあります(例えば主人公と育てのおばさんとか)。むしろ可愛かったり、美しいと、人の好奇を直に受けますから、間接的に色々な人の心に触れさせら...この感想を読む

4.54.5
  • ラビットランラビットラン
  • 468view
  • 1307文字

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