恐怖から生まれた美しさとは
1,とにかくエグい。
楳図かずおさんの代表作、漂流教室。
想像できないような展開が次々と待ち構えていて、読者を退屈させることなく精神的な恐怖を味あわせてくるのはもはや楳図かずお先生ならではの裏切りのない恐怖という素晴らしさ。恐怖の中にも希望があり、恐怖だけで止まることのない物語。
恐怖とは何なのか、本当の恐ろしさとは..人間の考えだすものが一番の恐怖なのかもしれない
2,主人公の強さとは
仲間と呼べる間柄の中でもだんだんと一人の人間としての思考が生まれ、次第に考え方や行動もすれ違っていくのが人間というものである。そんな中次々と問題は容赦なく起こっていくが、どうにかしようと先頭に立つ者がいてそこに力を貸そうとついていく人がそれぞれの立場で協力して切り抜けていこうとする逞しさ。仲間とは、信頼とは。小さな子どもたちの考えつく行動とは、一歩間違えれば恐ろしくもあり勇敢なる勇気の塊なのかもしれない。
3,光は必ず落ちている
絶望と呼べるような状況であっても、生きたいというつよい気持ちがあれば光はどこかにころがっているもの。
そこに気がつけるか気がつけないかで、人生には大きく差は出てたどり着ける場所が大きく違ってくるのだ。
だが、生と死はいつだって隣り合わせであり、ほんの小さな選択でどちらにでも転びゆくことがあるということ。
希望を持つものが必ずしも報われるということではないという現実のような世界を取り入れることでより一層、この物語は現実でも起こりうることなのではないかと錯角するほどである。
リアルな感情や表情でその場の空気感が伝わってくるようで、自分ならどうするであろうかと精神的にも追い詰められていく。
しかし、もうだめだと諦めてしまってはそこで命は終わってしまうのだ。
自分の命は誰も助けられはしない。
何よりもつよい力は、どんな時も自分自信の意思なのだ。
そして行動することは、光への一歩なのだ。
4,絵のタッチの美しさ
動き出すような絵のタッチはまるで映像の世界。
ひとつひとつに刻まれた線は生きているようで、細やかな息づかいも伝わってくるほどに繊細であり読者にも伝わってくるような緊張感さえもそのイラストからは感じられる。
所々に使われている擬音は恐怖や不安を煽り、早く次の展開を知りたいというドキドキ感がたまらない。
5,作品の最大の魅力とは
待ち構えてている恐怖に打ち勝とうとする主人公の真っ直ぐな思いは、読者をぐっと巻き込んでいくパワーがあり主人公と共に徐々につよい気持ちへとさせていき、映し出されるか細い光を共に目指し応援したいという心に芽生えてくる美しさなのではないだろうか。
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