シリーズの中でも異色であろう作品 - ルパン三世 風魔一族の陰謀の感想

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ルパン三世 風魔一族の陰謀

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映像
3.50
ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
2.25
感想数
2
観た人
2

シリーズの中でも異色であろう作品

3.03.0
映像
3.0
ストーリー
2.5
キャラクター
3.0
声優
4.0
音楽
3.0

目次

声優総入れ替えということ

ルパンのジャケットやネクタイの色などをシリーズによって区別できるほどのルパンマニアではないけれど、この「風魔一族の陰謀」の最も大きな特徴は声優が総入れ替えになっていることに他ならないだろう。いまさら言うことでもないけれど、ルパンの仲間たちの声優は山田康雄氏を始め、そのキャラクターといえばその声を思い出すくらい定着していた。それはこの作品が公開された1987年でもすでに定着していたことだろう。それを総入れ替えしなければならなかった理由として想像できるのは、コストと話題づくりくらいしか素人には思いつかないけれど、そこまでしなければならなかった意味もあまりわからない。実際声優が入れ替えられたのはこの作品だけだし、後の作品では全員元の声優に戻っている。恐らく苦情も多かったと思う。これほどキャラクターに声が定着しているアニメもそうそうないし、声優自体の年齢などを考慮して入れ替えるなどならしょうがないとして(「ドラえもん」の声優入れ替えはこれに当たる)、軽々しく交代するべきではなかったのかもしれない。

新しい声優たちの活躍ぶり

とはいえ、ルパン役の古川登志夫を始め、皆実力派ぞろいである。古川登志夫は「うる星やつら」の諸星あたるや「DRAGON BALL」のピッコロであまりにも有名だし(この両方のキャラクターを演じられるからこそルパンに抜擢されたようにも思える)、次元の銀河万丈は「北斗の拳」のナレーションだったし、五右衛門の塩沢兼人は個人的には大好きな声優だった(残念な亡くなり方をしたと今も時々思う)。不二子の小山芙美は今でこそバラエティ番組などのナレーションのイメージが大きいけれど、「Drスランプ」のアラレちゃんとか「シティーハンター」の美樹とか様々な声色の持ち主である。それだけ実力派勢ぞろいだったのにもかかわらず続かなかったのは、やはり熱烈なファンの猛烈なブーイングがあったのだろうと想像できた。
ブーイングはあったのだろうけれど、古川登志夫氏のルパンは全く悪くなかったし(山田康雄以外なら彼しかルパンは出来ないと思う)、他のキャラクターだって悪くないどころか全く新鮮で、私はその声を歓迎した。少し渋すぎるか?と感じた銭形警部でさえ、徐々に馴染んで違和感はほとんど感じなかった。
しかし長年ルパンたちをやり続けた声優たちにしてみれば自分たちに了解もなく事を進められて面白いはずがない。ましてや自分のライフワークになっているようなキャラクターなのだから思い入れも相当なものだっただろう。原作のモンキーパンチに伝えた山田氏の怒りはもっともだとも思った。

五右衛門の結婚に対しての違和感

3人の中でもっとも女っ気のない五右衛門が、紫という女の子(それもティーンにも見えるような少女)と結婚をするという意外な場面から始まる。伝統を重んじるような格式ある場所での式のようだから、そのような場所で結婚するのが五右衛門というのはある意味ぴったりなのだけど、どこか「今までの映画やアニメでそんな展開あったっけ?」となにか腑に落ちないような、どこかで大事な場面を見逃したような感覚になった。そのような複雑な思いで見ていると、式の最中に伝統の壺が狙われ奪還した後に花嫁がさらわれる。このようなルパンシリーズならではの鉄板の展開にはいつもワクワクさせられる。首をかしげながら見ていたことなど吹っ飛ぶくらいだった。
この映画には「カリオストロの城」のときのような切なさや寂しさなどは微塵もない。あるのはただ元気でのんきな紫と振り回される五右衛門で、今までとは少し違うラブコメ風なものも感じられた。それはとても新鮮で、新しい声優たちの声もあいまって、これからどうなるのかとドキドキした展開でもあった。

定番の忍者屋敷を彷彿とさせる展開

その後紫を奪還した後、皆は古の洞窟に入り(洞窟の鍵が見つからないところは「ホビットの冒険」を彷彿とさせた)様々な罠にであう。中でも一番の強敵は幻覚をもたらすガスだった。目の前の人間が怪物か幽霊に見えてしまう
このガスのおかげで五右衛門は錯乱してしまい紫を傷つけてしまう。彼が最後に修行の旅に旅立ったのは、このことが彼にかなりの衝撃を与え自身を未熟と判断したからだろう。
そのガスの入った壺を一つもったルパンはやはりここでも知能犯だと思った。ルパンシリーズを見る楽しみのひとつはルパンのその軽業と頭の良さと神経の鋭さだと思う。この「風魔一族の陰謀」はあくまでも主人公は五右衛門としてスポットが当たっていたので、ルパンの機敏さを感じられるところは少し少なく感じられる。今回のこの場面はルパンの魅力を感じられる数少ない場面のひとつでもある。
ただこのあたりになってくるとストーリー展開がどうしても子供っぽくなってきてしまっていて、少し集中力が切れてきたところでもあった。テーマは子供っぽくはないのに、展開をそう感じてしまうのはかなり残念なところだ。そう感じた一因に風魔一族があまりにも弱いところがある。仮にも風魔を名乗る以上例え下っ端でもある程度の強さは欲しい(そういう意味では「カリオストロの城」でルパンと次元を襲った伯爵の部下たちのほうがよっぽど強くて気持ち悪かった)。幻覚で自滅するような部下など数にもならないのではないのだろうか。しかもボスもあまりにも弱い。ただ図体がでかいだけの男で風魔一族を名乗る割りに武器がヌンチャクで忍者らしくないし、もっと絶対的強さを見せ付けてほしかったところだ。そのあたりの設定の稚拙さが子供向けと言う風に感じたところだと思う。

キャラクターのキャラクターらしからぬ行動

前述した幻覚に自分を見失った五右衛門の行動がそれに当たる。その行動を未熟と判断して旅立ったのは彼らしいと思えるけれど、あの時の行動は彼らしくない。普段の五右衛門なら幻覚を幻覚と即座に判断し、自身の目を覚まさせるため自らをためらいなく傷つけただろう。あそこは彼らしくないなと思ったところだ。言うなればルパン、次元、五右衛門の中で一番五右衛門が未熟でさえある。それは結婚するという幸せに彼らしくもなく浮かれたからだろうか。考えれば色々思いつけるけれど、それにしてもあの取り乱し様はあまりにも彼らしからぬものだと感じた。
これを言ってしまうとこの映画自体の根底をひっくり返してしまうかもしれないけれど、女が苦手として通っている五右衛門が、女子高生だった紫と徐々に親睦を深めていくようなことが果たしてできたのかどうか、そこも謎である。不器用な五右衛門をおませな女子高生の紫がからかったりする図は確かにラブコメっぽくていいのだけど、でも五右衛門でしょ!?とどうもしっくりこない。そこで結婚してしまう一途さは五右衛門ならではなのかもしれないが、やはりどうもしっくりこないなというのが正直なところだ。
キャラクターのキャラクターらしからぬ行動はもうひとつある。それは不二子の行動だ。いつもの彼女だとクールで知的でその欲深ささえも美しく感じてしまったものだけど、今回の不二子はあまり魅力的でない。ちょっとしたことでキャーキャーと騒ぎすぎだし、金の瓦を意地でも持ち帰ろうとする様はおばちゃんのようだし、風魔を追う様にもあまりカッコよさを感じないしで、全体的にどうも垢抜けない印象だった。もちろんそれは声のせいではないしキャラクターの見た目が変わったわけでもない。もしかしたら不二子自身風魔に操られているのではと一瞬思ったほどの違い様だった。

声優を替えたこととは関係のない評価をしたいけれど

今回声優を替えてみた新しい試みだったとは思うけれど、声優を替えた以外にとりたてて特筆すべき所はないということは皮肉な結果だと思う。私自身声優を替えたということを知らなかったら見ることがなかったと思うからだ。最初で最後のルパンたちは決して今までのルパンには負けていなかったけれど、ストーリーは大した展開を見せないままだったというのが正直な感想だった。とはいえ、あのルパンたちはもう見ることはできないのだから、それを見ることができただけでも価値はあったとも言える。

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『ニュー・ルパン』。その言葉ですでにおかしくなっていた『ルパン三世 風魔一族の陰謀』の大失敗。

ニュー・ルパンと謳い、作られた偽物のルパン三世。この作品は、ルパンと呼ぶにはふさわしくない作品かもしれない。その最たる理由は、声優陣一新を含む、大幅なスタッフの入れ替えにある。なんとあのルパン三世に、ルパン役の山田康雄も栗田貫一も、あの次元大介役の小林清志すらいないのである。これは決してパロディ作品でも実写でもない。まぎれもない長編アニメ作品である。なのに、彼らがいない。当然、描かれているルパンもまったくの別物になる。ルパンの格好をした男が、ルパンと思いたいファンの前で、まるで違う声で話している。当時、この作品に非難が飛び回ったのは、言うまでもない。決してルパンとは言い難いが、決して万的に駄作ではない。この際、はっきりしておくと、この作品は非常にルパン三世ファンを怒らせた駄作という位置づけを受けている。製作側の勘定の都合で、山田康雄らメインキャストを全て排除したキャスティングを行い、今...この感想を読む

2.52.5
  • augusuaugusu
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