正直言って大失敗! 元がダメなので作り直してもダメ! - 機動戦士ΖガンダムII A New Translation -恋人たち-の感想

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機動戦士ΖガンダムII A New Translation -恋人たち-

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映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
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感想数
1
観た人
1

正直言って大失敗! 元がダメなので作り直してもダメ!

1.01.0
映像
1.5
ストーリー
1.0
キャラクター
2.0
声優
3.0
音楽
2.5

目次

新訳? してないし…

2005年上映された一作目、「星を継ぐ者」に続いて同じ年に三部作の二作目として上映された。

一作目はそこそこ楽しめた。

相変わらずカミーユは理解しにくいが、ファーストキャラが上手くクローズアップされていて、シャアとアムロの再開で終わり、エンドロール後にフォウとベルトーチカの立ち姿で二作目の予告、この演出には正直かなりワクワクさせられた。

そこからの二部、サブタイトルも「恋人たち」、みんな大好きフォウ・ムラサメが中心かという期待感が大きかった。

結果はどうか…

正直なところ大惨敗であろう。興行的に、ではなく内容として、である。

一作目は新訳感もあったが、今回はつながりのない場面をだらだら見せられただけのダイジェストですらない粗悪映像。

途中で眠たくなるほど退屈だし、金払って劇場で見ていたらたぶん憤慨していたと思う。

以下、詳しく記す。

サラがだめ

さて、本作の一番のダメキャラは、間違いなくサラ・ザビアロフだろう。

そもそも何のために存在するキャラなのかわからないが、後半でやたらと登場シーンが多い。

テレビ版放送時、ベルトーチカは大変人気が無かったが、確かにアムロを鼓舞する役をこなしていたので、制作者が明確な役割を与えたキャラではあった。

しかし、サラの存在価値、役割って何だろう?

アーガマに月面へのコロニー落としを伝えるという役は、彼女である必要は全くない。

だって情報を伝えさえすればいいのだから、方法はいくらでもあるだろう。

少女が行った方が相手が信用する、という理論があるかもしれないが、単身で敵艦に乗り込むリスクを超えるメリットとは思えない。

更に月面に爆弾を仕掛けるって、何故サラだったんだろう?

そんなの工作員に行かせたらいいんじゃないか?

初めてのお使いに行くお子様か?シロッコってバカ?

例えば無能であったり、視聴者に好かれないキャラでも役割があれば存在は理解する。

ただ、サラの場合、特にパイロットとして優秀とか、参謀としてとか、強力なニュータイプであるとか、シロッコにとって有益な人物として描かれていないことが問題なのだ。

戦力でないとすれば、次は人間としての価値だ。

シロッコは新しい世界を支配するのは女性、というような思想を持っているので、一般より女性の存在意義を高く認めているのかもしれない。

即物的な価値を女性に求めるなど下らんことだ、とか言いそうな男ではある。

しかしそうだとすれば、危険な潜入任務や、専門でもない爆弾設置を命じたりはしないのではないか?

結局彼女の使われようは、大事にされているとは思えない。

では作劇場で失敗だとしても、物語を作る上で必要があったか?

彼女が物語の中で果たした役割は、カツに惚れられた、という以外になにかあるだろうか?

カミーユは彼女の気配にフォウを感じて追いかけるが(このシーンも全く意味不明だ。彼女が時にニュータイプとか強化人間として描かれている訳ではないし、性格や感じ方などでもフォウと被る所は見当たらない。何故カミーユは彼女の中にフォウを感じたんだろう?)実際にカミーユに何かを残すことはない。

彼女がカツの思慕の対象になったところで、そもそもカツが話に必要なキャラでないだけに、存在価値が全くないのだ。

サラ登場シーンを全部カットして、ホンコンでのフォウとのシーンをもっと増やすか、キリマンジャロでの再会を描くか、などしていれば物語に厚みが出来て、恋人たちというタイトルにも合うものになったのではないか?

実際にフォウはカミーユにとって最も大事な人のはずだが、今回の出番だけでは今一つ納得感が無い。

中途半端に出て来たロザミアも出なかったことにしてしまえば、かなりの尺が確保でき、フォウとの関係をもっと深めることが出来たと思う。

ロザミアもキャラとして全く決着を着けていないので、話としてはいらない子なのだ。

そもそもロザミアはこの劇場版三部作で死亡したシーンは描かれていないのに、シロッコとの最終決戦ではカミーユに力を貸す存在として現れる。

だってこの劇場版ではカミーユと全く接触してないじゃないか、と思う。

接触が無く、死んでもいない、ちょっと見かけただけの女性が出てくるなら、ステファニー・ルオとかクムだってあのシーンにいても良かったのだ。

そのような意味でこの新訳版は全くキャラやストーリーの整理が出来ていない。

カツがだめ

Zガンダムの話をする時、常に彼の話をしてしまうが、本当に彼は何のために出てきたのかさっぱりわからない。

眠っていたアムロを再び戦場に戻すため、だとすれば本作の前半で既に彼の役目は終わっている。

シャトルで宇宙に上がる直前に、彼はアムロから一年戦争で使ったという銃を渡される。

普通物語を作る上で、ベテランキャラから貴重なものを受け取る、という展開があった場合、その物体が現実に物語の上で役に立つか、あるいは精神的に何かを譲り受けるかのどちらかだ。

例えばシロッコにとどめを刺すのがこの銃であるとか、あるいは精神的にアムロの意思を次いでエースパイロットになるかニュータイプとして覚醒するか、あれは何かを暗示するシーンであるべきなのだ。

しかし彼は何もしない。

捕虜に簡単に騙されて取り逃がす。

実力は無いのに粋がってパイロットを目指す。

敵の女性パイロットに恋をして作戦無視の行動に出たり、モビルスーツを無断使用したりする。

それでも彼女を手に入れることは叶わず、結局何も果たすことなく犬死する。

このキャラ何のために必要だったのか?

そしてこれがトーレスかサエグサなら特に問題はない。

1stガンダムでニュータイプに目覚めたはずのカツだから問題なのだ。

今回の劇場版製作に当たりカミーユが穏便な性格に変更されたとはよく聞くが、変更すべきだったのはカツである。

早い時期に覚醒したニュータイプとしてエースになる、あるいは戦闘能力が低くても人格者としてエウーゴを支える、サラとの関係が悲恋に終わりアムロとララアの追体験をする、など無限の可能性を秘めたキャラだったのに、宇宙に上がってからの彼は何一つ物語に貢献しなかった。

こんなことなら出さなければよかった、1stファンの誰もがそう思っているに違いない。

恋人たちって…誰?

正直なところ、この話で恋人と呼んでいいのって誰だろう?

カミーユとフォウはまず恋人と言っていいだろう。

カミーユとファもそうかもしれない。

アムロとベルトーチカはぎりぎり呼べるだろうか? とは思うが本作では具体的にそういうシーンは少ない。もっと明確に恋人化しているシーンを書けばよかったのに!

それ以外は?

ヘンケン、エマは三作目ではそれなりの関係っぽいが、本作ではまだヘンケンの単なる片思いだ。

サラは明らかにカツと恋人と呼べるはずもない。

まさかレコアとクワトロは違うだろう。

一回キスをする演出はあったがそれ以外何もない。

ジェリドとマウアーはあまり描かれていないが最もしっかり付き合っている恋人かもしれない。

要するにこのサブタイトルは、完全に失敗であった。

そもそも、冒頭でベルトーチカがかなり印象的な登場をするんだから、もっとガンガン活躍させてやればいいのだ。

逆襲のシャアの時は主人公に子供がいるのはどうか、としてベルトーチカチルドレンというタイトルが却下された、という話があるが時代はもう2000年を過ぎている。

逆シャアの公開は1988年)

ベッドシーンを入れても良かったし、いっそその時果たせなかったアムロとベルトーチカに子供ができるという展開をここでやっても良かったかもしれない。

そうだ、それでこそ新訳ではないのか。

新訳でやるべきだったことと、やってはいけなかったこと

上記と重複するがやるべきたったのにやらなかったことと、やってはいけなかったことを整理しよう。

・フォウをもっと掘り下げるべきだった。ホンコンでの新しいシーンを増やすか、キリマンジャロを入れるか、どちらも可能だ。

・ロザミアは全部カットでよかった。

・サラも全部カットでよかった。

・カツは本作前半で退場でよかった。

結局、Zガンダムという作品は元のテレビ版が色々とっちらかった物だったので、再編集してもダメな作品しかできないのだ。

それを踏まえての新訳であるのかと思ったが、三作目のエンディング以外は目立った書き替えは無かった。

実に残念な作品であった。

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