犯罪者は必ずしも悪人ではない - 告発の感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

犯罪者は必ずしも悪人ではない

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
4.5

目次

正義は勝つ

刑務所で看守から虐待を受けていた男性を描いた作品で、本当に重い映画なのですが、大好きで何度も観ています。おそらく、最後は正義が勝つというところが救いになっているのだと思います。犯罪者ではない悪は、確実に存在しています。そういう人たちが、必ずしも炙り出されて報いを受けるわけではありません。特に、立場や権力を笠に着て悪事を働く人たちは、なかなか表に出てきません。お金を使って罪をもみ消すような人たちも、現実に存在しています。また、要領よく不正を働く人たちが結果的に真面目にやっている人たちよりも出世したり金持ちになったり、理不尽に他人を貶める人たちによって真面目で優しい人たちが潰されたり、そのようなことは世の中に溢れています。世の中は理不尽なもので、不正だらけです。それを嘆いていても仕方がありません。何も考えずにいたら、悪に流されてしまったり、正しいことをしても意味がないと卑屈になってしまうこともあります。そんな世の中だからこそ、正しい人が勝つという事例を知ることが救いになります。また、悪いことはやっぱり悪い、そっちの方が楽だからとかみんなやっているとか、そんな理由で悪い方に流されてはいけないと自分を戒める意味でも観ています。人間は良くも悪くも影響されやすいものです。だからこそ、正しくありたいと思えるような映画を観るのは大切なことです。

刑務所の役割とは、悪人とは

ヘンリー・ヤングは、飢えに苦しむ妹のために5ドルを盗みました。止むに止まれぬ事情でたった5ドル盗んだことで25年の刑を受け、刑務所に収監されます。ある日、仲間と共に脱獄を図りますが失敗し、地下牢に1000日以上も入れられ、看守から虐待を受けます。地下牢から出された直後に仲間の囚人を殺害してしまいますが、弁護士のジェームズはヘンリーを凶悪犯とは考えず、虐待をした看守たちに問題があるとし、刑務所を告発します。

脱獄を図ったのはヘンリーが悪いけれど、ヘンリーが悪人とは思いません。飢えが原因で5ドルを盗んだだけなのに25年の刑はおかしいし、そんなヘンリーに脱獄を図ったからといって虐待をする看守に良心があるとは思えない。止むに止まれぬ事情があって罪を犯してしまった人も、悪意があって罪を犯した人も、同じように刑務所に入れられ同じ扱いを受けることは、人道的に問題があります。刑務所は悪人の更生のための場所であるべきで、罪を犯した人を閉じ込める場所であっては意味がありません。何の解決にもなりません。ヘンリーのような人には、仕事を与えるべきです。仕事を与えるだけで、充分人としてまっとうに生きていけたはずです。その人の事情を考慮せず、ただ刑法に違反したから刑務所というのは安易なシステムだと思います。他人の事情を正確には把握できないから仕方がない部分もありますが。

ヘンリーは、他者によって人生を台無しにされました。それを考えると、看守たちは犯罪者です。看守によって暗く狭い地下牢に閉じ込められて暴力を受けて、精神状態がおかしくなったのです。これは、他人の財産を奪うことよりも重い罪です。ヘンリーの当初の罪はたった5ドルを盗んだだけです。明らかに、ヘンリーよりも看守の方が悪人です。同じように、他人に人生を壊されてしまう人はいつの時代にもどこの国にもいると思います。いじめもそうです。被害者はトラウマを抱えたり、何年も辛い経験が忘れられずその後の人生を過ごして、加害者は平然と生きます。世の中、理不尽なものです。

経済格差が争いや犯罪の原因になる

貧困は罪を犯す原因になります。しかし問題なのは、貧困そのものではなく経済格差です。使いきれないくらいのお金を持っている人たちがいる一方で、食べ物を買うことも出来ず、病気になっても薬を買うことも出来なくて困っている人たちもいます。裕福な人たちも貧困層のことは知っているはずなのに、平気でお金を貯めこみ、豪邸を買い、高級車を乗り回しています。もちろん、お金を持っている人にお金の使い道を決める権利があります。自分で稼いだお金は自分のために使っていいのです。しかし、貧しい人たちの存在を知りながら平気で度が過ぎた贅沢が出来る、痛くも痒くもない金額を気まぐれで寄付したりして良いことをしたと自己満足に浸る、そのような人たちに比べてヘンリーが劣っているとは思いません。お金をたくさん持っているから他人に大金をあげられる人が、お金がない中で何とか妹に食べさせようと必死になってお金を盗んだヘンリーよりも、優れているとは思いません。

中には、貧しい人たちを見下す人もいます。お金を持っているかどうかなど、人を量る尺度には絶対にならないのに、他人よりいい家に住むことが出来るから自分が優れていると勘違いしている人たち。お金持ちになったというだけで、人として立派になったと勘違いしている人たち。仕事に関して優れている人が、人として優れているわけではないし、真面目だから伸び悩む、頭が良いから伸び悩むということもあります。そのようなことに思い至らない思慮の浅い人が人を見下すのです。真面目な人ほど苦しむような社会に何の価値があるのか疑問です。でも、結局は社会などどうでもいいのです。自分が正しくあればいいのです。それが全てだと思います。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

告発を観た人はこんな映画も観ています

告発が好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ