夢に向かう情熱が人生には不可欠 - 遠い空の向こうにの感想

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夢に向かう情熱が人生には不可欠

4.54.5
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
5.0

目次

ロケットを作るという夢

高校生のホーマーは、ソ連が打ち上げた世界初の人工衛星スプートニクを見て感化され、ロケットを作ろうと思い立ちます。母や兄も呆れていましたが、特に父は強く反対しました。父は炭鉱で働いており、いずれはホーマーにも炭鉱で働いてほしかったのです。ホーマーはそんな家族の反応も気にせず、友達2人とクラスで孤立している秀才を誘って、ロケット作りを始めます。ロケットの本が手に入らなくても一から勉強し、ロケット研究者のブラウン博士に手紙を送るなど、その意欲は素晴らしいものでした。教師のミス・ライリーはホーマーに本を与えたりして夢を支えてくれます。

ロケット作りには自分たちには出来ない溶接の工程がありました。ホーマーは炭鉱の工場で働くバイコフスキーに溶接をお願いします。バイコフスキーは「ばれたらクビになる」と言いながらも、ロケットの溶接をしてくれます。何度も失敗して何度も改良して、ロケットの完成を目指します。一度は仲間3人が諦めかけますが、全米科学技術コンテストで優勝して大学の奨学金をもらうことを目標に、再び団結してロケット製作に取り掛かります。

ホーマーは、父が炭鉱事故で重傷を負ったことで、高校を辞め炭鉱で働き始めます。父に反発していたホーマーでしたが、炭鉱で働くことの大変さを思い知り、父に対する見方も変わります。ロケット作りを再開し、科学コンテストで優勝、NASAのエンジニアになり、ロケットを飛ばすという夢を叶えました。

才能よりも情熱

この映画を観て強く感じたのは、夢を実現させるためには才能以上に情熱が大切なんだということです。当たり前のことですが、たとえ才能があっても取り組まなければ何も始まりません。やる気がないと継続もできませんし、才能も発揮できません。「どうしてもこれがやりたいんだ」という強い熱意があるからこそ、何かを成し遂げられるのです。才能がないからと言って、夢を諦めてしまうのはもったいないことです。そもそも、才能というものは正確に量れるものでもありません。何かが出来ないのではなく、自分で自分の才能を決めつけて挑戦しなかったり諦めてしまうことで、可能性をゼロにしてしまっているのです。やってみれば出来るかもしれません。諦めずに続けていれば達成できるかもしれません。何かやりたいことがあるのなら、才能があるかどうかとか、自分に向いているかとか、余計なことは考えずに挑戦してみるべきなのです。仮に達成できなかったとしても、夢に向かって努力することは楽しいことです。それだけで人生が充実したものになります。結果を気にしてしまったら、萎縮してしまい能力も発揮できないでしょう。結果などどうでもいい、これをやってる時間が好きなんだという情熱が夢を実現するカギなんだと思います。ホーマーも、どうせ宇宙を飛ぶようなロケットは作れないだろうと現実的に考えていたら、あれほどのロケットを作れなかったでしょう。また、父の反対や様々な困難にぶつかりながらも、それを一つずつ克服していった粘り強さも素晴らしいです。

夢を応援できる人の素晴らしさ

主人公は高校生ですが、周りの大人たちも素晴らしいです。人は一人では生きられないのと同様に、夢を実現するためにも、周りの協力は大切です。溶接を手伝ってくれたバイコフスキーさんや、ミス・ライリーのように、具体的に何かをして子供の夢を応援する大人はあまりいないような気がします。特に、ロケットを飛ばすというような一見無謀である夢を本心から応援できる大人がどれだけいるでしょうか。おそらく多くの大人は、無責任な言葉で応援するふりをするだけで、内心ではどうせ無理だと決めつけて手助けしようとまでは思いません。

夢がありながら最大限の努力もせずに諦めた大人は沢山いることと思います。そういう人たちは、心のどこかで子供たちもどうせ同じだと決めつけています。あれになりたい、これになりたいと言っていても相応の努力をせず、最終的には人と同じ人生を送ることになると思っています。その思い込みが子供たちの足枷になることもあります。敏感な子供は、大人の態度からそのような決めつけを感じ取ってやる気を失ってしまうかもしれません。真面目な子供ほど親の言いなりになります。空気を読んでしまう、物わかりのいい子供ほど、大人に可能性をつぶされます。その程度の情熱だったんだと言ってしまえばそれまでですが、子供の情熱を評価する前に、まずは自分たちが子供たちの夢を応援できる大人になるべきです。どんな夢でもいい、夢を持つことは素晴らしいことだと教育でき、子供の夢を心の底から応援できる純粋な大人になるべきです。そのような人が、人の才能を引き出せるのです。

何かを悟ったつもりになって、子供たちの夢を軽んじる大人が立派な大人だとはとても思えません。中には、夢を持つこと自体を非難する人たちもいます。夢を諦めて、会社に勤めて、堅実に生きることがまともな大人の生き方だと思っている人たちは、働きながらでも夢を追っている人たちを「いつまでも夢にしがみついて」と非難します。夢や生きがいがなかったら生きている意味もありません。特に楽しい時間もなく淡々と働いて一生を終える、そんな人生でいいのでしょうか。夢を持つのに年齢は関係ありません。子供たちだけでなく、大人や高齢者でも堂々と夢を持って、明るい人生を歩んでほしいです。

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若さと熱意があふれる名作

思春期ならではのひたむきさの描写この物語の主人公はジェイク・ギレンホール演ずるホーマーという男子高校生で、厳しい父親とフットボール選手の兄に気圧されながら窮屈そうに生きている。そういうときにロシアが打ち上げた衛星スプートニクを見て、ロケットを打ち上げようという夢を抱くようになる。この時にもともとの仲間以外に科学オタクのクェンティンを仲間に引き入れようとするのだけど、こういう多感な時期はオタク呼ばわりされているような同級生と一緒にいるところを見られるのはかなり恥ずかしいと感じる年頃だと思う。実際ホーマーの仲間たちがそう言っていたところもある。そういうものを通り越していけるほどの熱意というのは、今大人が想像できる以上の勇気とひたむきさがあってこそなのだと思う。クェンティンを仲間に入れて様々な実験を繰り返していくシーンがある。たくさんのロケットを打ち上げては失敗し、それを繰り返しながらも楽し...この感想を読む

4.04.0
  • miyayokomiyayoko
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