しっかりした画力で描かれた動物たちと魅力的な登場人物に、つい読み進んでしまう! - 椎名くんの鳥獣百科の感想

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椎名くんの鳥獣百科

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しっかりした画力で描かれた動物たちと魅力的な登場人物に、つい読み進んでしまう!

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目次

リアルに描かれた動物たちが魅力的!

登場する動物たちは、ペンギンなど比較的よく知られたものからハシビロコウやコンゴウインコ、センザンコウなど、ちょっとマニアックなものまでさまざまですが、いずれも非常にリアルに描かれています。その種類の動物が好きな人も、思わず納得してしまうほどの画力です。どの動物も瞳の光の反射まで細部に渡って丁寧に、活き活きと描かれていて、家にいながら本物の動物を見ているような気分にさせられます。

動物が頻繁に登場する漫画はたくさんありますが、動物の見応えはこの作品が一番だと思います。特に鳥類がたくさん出て来ます。各動物についての詳しい解説が随所に織り込まれているのも、動物好きには堪らない魅力です。タイトルに「鳥獣百科」とある通り、動物図鑑や百科事典的な楽しみ方もできる作品です。

日がな1日、ペンギンに付きまとわれている花准教授が羨ましい!

一癖あるキャラクターも、実はとても魅力的

主人公の椎名くんの周囲には、さまざまな人物が登場します。一癖あるキャラクターたちも登場しますが、どのキャラクターも物語が進むにつれて、魅力の片鱗を垣間見せて来ます。

演出上の都合だと思いますが、写実的に描かれた動物に対して、人物は漫画的な絵柄になっています。おそらく、人物をある程度デフォルメ化することで、必要以上に画面がゴチャ付くのを防ぐ目的もあったのではないでしょうか。人物の描き方も設定などがしっかりしていて奥深く描かれており、現在の性格や人間関係を納得させられます。

読み始めたばかりの頃、「花准教授はか弱いヒロインと言うポジションのキャラなんだろうけど、それにしちゃ、ちょっと肩幅がいかついような…?背も高すぎるような…?」と思っていたら、何と男性でした(笑)。えー(笑)。でも、妙に納得。。花准教授のキャラクターを考えれば、初見の読者に女性と間違われるのは、作画的に大成功と言えるでしょう。何しろ、女性キャラなら誰もが認める、ふんわり癒し系女子でしょうから(笑)。

病弱なため子供時代をずっと病院で過ごしたことに加え、色素を持たない特殊な外見のせいで友達のいない花と、彼の(花准教授を「彼」と呼ぶことに抵抗があるのはなぜでしょう)唯一の友人として子供時代を過ごした椎名くんの2人を軸に、物語は進んで行きます。

椎名くんが実在したら絶対モテる!

ところで、椎名くんが実在したら確実に女性にモテるだろうと思っているのは、きっと私だけはないと思います。理性的で温厚な性格に加え、周囲の人をとても大事にしていて非常に好感が持てるキャラクターです。無口で人に媚びるようなところが全くないのに、それでいて対人スキルが高い愛されキャラでもあります。そしてさりげなく外見もキレイ。

本人は、自分がイケメンであることにはまるで無頓着そうですが、そこも魅力的です。外見については、「清潔感があってTPOをわきまえているか」と言うくらいのことしか考えてなさそうな気がします(笑)。少なくとも、女性ウケについては全く考えていないでしょう。

ですが、持って生まれたセンスみたいなものはよさそうな気がするので、変な柄のシャツを着たりはしなさそうな気がします。「特にファッションの勉強はしたことがないけれど、自分に似合うものをごく自然に選べる人」なのではないかと、勝手に想像しています。もっとも女性キャラが少ない作品なので、男性にばかりモテてますが(笑)。

周りの人を大切にするのも、特に損得を計算するでもなく、ごく当たり前にやっていますが、その辺りもわりと無自覚にやっているように見えます。自分に似合うファッションを自然に選べる人のような気がしたのは、他人に対してごく自然に善なる選択ができる人物だからなのかもしれません。すごく中庸なキャラですよね。

椎名くんは天性の人格者!?

椎名くんが目指している「動物はかせ」になるには、知識や経験はもちろんのこと、勘のよさも非常に重要な要素になるかと思われますが、椎名くんは動物に対する勘だけでなく、人に対しても非常に鋭い勘を持っているようです。先入観や風評で相手を判断することなく、その人の本当の姿を公平に見ていると言いますか。そして優秀なのに常に謙虚さを忘れず、誰に対しても敬意をもって接しているのが、人間的に非常に優れていると思います。

どう言う育ち方をしたキャラクターなのだろうなぁ、と思いながら読んでいましたが、幼稚園の頃にはすでに現在の優しく礼儀正しい人格が形成されていたようなので、どうやら天性の人格者のようです。幼稚園時代に眼科で初めてのメガネを作るシーンで、お友達の剛田君にメガネのことをからかわれて、論理的に諭し、平和的に解決するエピソードが印象的です。

生活態度がきわめてきちんとしているのも、見習いたいところです。生物学科助教となると相当忙しいはずですが(何しろ動物相手の仕事だと、不測の事態がしょっちゅう起こりますので)、自宅の部屋もキレイに片付いていてスゴイと思います。頭脳の明晰さが、時間の使い方や家事の手順などにも活かされているのでしょう。

白衣なども洗濯のたびにピシッとアイロンを掛けていそうな気がします。マメに自炊もしているようですが、花准教授の健康を気遣ううちに料理も上達したのだろうと思うと、微笑ましいです。

これだけ、何事も中庸にこなせる優秀な人物として描かれていながら、現実離れした架空の人物であることをあまり感じさせないのも、なんだかすごいです。あ、それは椎名くんじゃなくて作者さんがすごいんですね(笑)。小さい頃から一つのことを貫き通しているのも、とてもカッコいいですね。

綿密に練られた設定と予想外の展開

動物漫画にカテゴライズされるような漫画は、日々の小さな出来事を描いた作品がほとんどではないかと思います。この作品も、舞台となる大学の日常の出来事を描く漫画なのだろうと思って読み進めて行きました。飛鳥教授たちの若い頃のエピソードが登場した辺りで、「この手の漫画にしては設定が綿密で、キャラクターの相関図も複雑だなあ」とは思いましたが、大学の乗っ取りの話が物語の軸になっているとは思いもしませんでした。

画力も高いですが、そう言う複雑なストーリーやキャラクターの心情をきちんと描けているのも、目が離せない理由の一つです。

椎名くんが子供の頃から大切に持っていて、病弱な少年だった頃の花准教授との交流のきっかけとなったアダムミルの著書である動物図鑑も、ごく自然な流れで登場するので全く気に留めていませんでしたが、あれも重要な伏線になってました。最新刊ではまさかの展開に「やられた!」と思いました。

椎名くんが長年憧れ続けたアダムミルこそが、花准教授の父親だと判ったときの衝撃たるや…。椎名くんも相当驚いたでしょうが、傍観者の私もかなり驚きました。そこまで複雑な設定は全く想像していなかったので、いい意味で期待を裏切られました。花准教授の少年時代の病院での様子を見るに、親にほとんど構ってもらえていないらしいことは分かりましたが、本人の身の安全と幸せのために構えなかったのですね。

今後どうなるのか、次巻以降も目が離せませんが、花准教授の生い立ちが明かされるところまで来たので、この後はそんなに長くないのかな…と淋しい気持ちもしています。

椎名くんは素晴らしい動物はかせになれるであろうと言うだけでなく、夫や父親としても適任に思いますが、はたして花准教授以上に大切に思える女性が現れるかしら?と余計な心配もしています。この作者さんの、他の作品もぜひ読んでみたいですね。違うジャンルでもいいですが、できればときどき、また動物漫画も描いて欲しいです。

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