殺人鬼か救世主か、善か悪か
「新世界の神となる」
成績優秀な高校生である夜神月は、校庭でDEATH NOTEと書かれたノートを拾う。表紙の裏には「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」という、ノートの使い方が書かれていた。最初は半信半疑であった月だが、試しにニュースで報道されていた犯罪者の名前を書き、直後にその犯罪者が死亡したことで本当に人を殺すことができるノートであると確信する。そして月は、DEATH NOTEを使って世の中の犯罪者を裁くことを決意する。善良で心の優しい人だけの世界を作り、新世界の神となることを決意する。死の制裁は、警察が捕まえられなかった悪人や法では裁かれなかった者にまで及んでいる。
次第に世の中も、誰かが犯罪者を殺していることに気付き始め、月はキラと呼ばれるようになる。そして、キラを殺人犯として捕まえようとする警察側に数々の難事件を解決してきたLという人物が協力し、キラvs Lの天才同士の頭脳戦へと発展する。世間では徐々にキラに賛同する者も現れるようになる。
殺人鬼か救世主か
キラは単なる殺人鬼なのか救世主なのか、善か悪か、意見が分かれて当然である。更生が難しいサイコパスのような人の命を奪うことが許されるかどうか。人の命を奪った殺人鬼の命でも、罪のない人と同じように尊いものなのか。要は、死刑制度の賛否を問うものである。
私個人の見解としては、キラは必要悪である。人を殺すことは悪である。何の罪もない人の命を奪った殺人犯を殺すのも、同様に悪である。しかし、その悪を誰かが犯すことによって、救われる人も確実に存在する。悪人ではなく、悪人から被害を受けた善良な人たちが救われるのである。悪人の命を救うよりも、被害を受けた人たちの心を救うことの方が絶対に優先されるべきである。よって、キラは必要悪である。極論になってしまうが、他人の生きる権利を奪った者に、生きる権利を与えるべきではない。またキラの存在は、軽犯罪や故意に他人に迷惑をかけるような者に対しても抑止力になる。特に、この程度なら大事にならないと高を括っていじめるような人に対して、戒めになればいい。犯罪者や他人を陥れる人間の生きる権利よりも、善良な人が快適に生きることができる環境を守るべきである。
罪を犯した人が必ず捕まるわけではない。逮捕されないまま犯罪を重ねる人もいる。捕まって刑務所に入ったとしても、刑期を終えれば更生しているかどうかに関わらず世に放たれる。人を殺して、他人の最も大切な生きる権利を完全に奪った人間に対して、「~年は刑務所に入りなさい。そのあとは自由です。」という法律の方が、キラよりもよほどおかしい。刑期を終えて、まともに社会復帰して、それなりに幸せになることが許されるのだろうか。まともに社会復帰することができなかったとしたら、再び罪を犯すこともあり得る。その両方を、法律は許していることになる。
たとえば、殺人によって大切な人を失った人たちは、その犯人がキラに裁かれることによって救われるのだろうか。気持ちが軽くなる人はいるだろう。しかし、完全に救われることはないと思う。殺人犯のしたことは、それほど重いことである。死んでも償いにならないほどの、許されざる悪である。だから殺人犯を殺しても意味がないのではなく、何をしても償いにならないのなら、せめて犯した罪を自分も被るべきである。
キラの存在による世の中の変化
刑務所の外にも悪人は溢れている。そのせいで真面目な善良な人たちが生きにくくなってしまうとしたら、それは決していい世界ではない。刑法を犯した者だけではない。愚かな行いで他人に迷惑をかける人は山ほどいる。近隣住民に迷惑をかける人や、店員などに理不尽なクレームをつけて怒鳴る人、パワハラなど自分よりも弱い立場の人を追い込む人。そのような人達のせいで、真面目な人がつぶされる。真面目だからこそ、そんな理不尽な言動をまともに受け止めてしまって、病んでしまう。善良で優しくて本当に世の中に必要な人達が、頭のおかしい人につぶされる。愚かな人間がはびこって、まともな人が追いやられる、そのような世界に存在価値を見出すことは出来ない。このような現状はなかなか変わらない。キラの存在が少しでも抑止力になれば、善良で心優しい人が生きやすい世界になる。
キラが存在することによって、むしろ弱い者いじめは増えてしまうかもしれない。法を犯さなければキラに殺されることもないと愚かな人間が認識してしまったら、弱い者いじめは増えてしまうかもしれない。それでも私は、キラの存在によって重犯罪が減少することを望む。キラの思想は、「善良で心の優しい人だけの世界を作る」ことである。重犯罪が減ったら軽犯罪を裁く、そして最終的に善良な人だけの世界が実現したら、それが一番いいと思う。単純に殺人犯を殺すことが善か悪かではなく、キラが存在することによる世の中の変化を想像してほしい。もしキラが実在したら、必ず世界は変わる。それを良い変化と捉えるか悪い変化と捉えるか。人の心までは変わらないかもしれない。心までは善良にならないとしても、悪を行うことがなくなればいい。悪人を一掃したら人口は減るが、弱者や善良な人が悪におびえることなく、平和に暮らすことができる。世界はそのようにあるべきだと思っている。
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