やさしい弁護士と面白い依頼
百瀬の心の声が面白い
ストーリー中に、たびたび出てくる百瀬の心の声に癒されたり、笑わせられたりします。
例えば七重と靴を買いに行き「助けてくれ」と叫ぶ心の声。
大福さんに電話した時に後輩春美が電話に出て、鈴のような声だと喜び「30連敗男」とあだ名で呼ばれ落胆するところなど、百瀬の心情がリアルに感じられた。
最後のテヌーとの別れのシーンでは、本当にいなくなるのが寂しいという百瀬の心情が良く現れていたと思います。この心の声があることで、ストーリーが盛り上がっていると思う。
無関係のような事件や人物が1本に繋がっていく
百瀬の法律事務所に持ち込まれてきた依頼や登場する人物たち。
霊柩車ジャック、マンションの規約や結婚相談所、大福さんや一番初めの世田谷猫屋敷事件まで。
こんな一見するとバラバラで関わりのない依頼や登場人物たちが、少しずつ関係していき1本に繋がっていくところが面白かった。
霊柩車をジャックして遺体がないと分かり、百瀬の靴を片方だけ磨いてくれた靴磨きのおばあさんが会長だと言うことは分かりやすかった。
しかし、マンション規約の依頼人美里と大河内社長が実は夫婦、世田谷猫屋敷事件と大福さんが関係者だったところなど、「実は関係者だった」と思わないところで繋がっていたのは驚きました。
中でも一番驚いたのは、大福さんが百瀬のことを昔から知っていて、なお好意を持っていたことです。
結婚相談所でありながら、合わない相手を紹介したり妨害していた、と告白する場面は驚きがあり、そして大福さんを応援する気持ちでいっぱいになりました。
大福さんが単なる登場人物ではなく、一番大事な登場人物だったことに驚き、気持ちよくキッチリとパズルがハマった瞬間でした。
見た目とは違ってキレ者
推理小説にはよくあるパターンですが、見た目とのギャップが良かったです。
百瀬はボサボサの頭、時代遅れの眼鏡にヨレヨレスーツといった見た目は残念な印象です。
でも学校を首席で卒業するくらいの頭の良さで、職業は弁護士というギャップが良い設定だと思いました。また、結婚をしたくて結婚相談所に通い詰めているというのも良かったです。
さらには、30連敗中だというのも良いギャップでした。
登場人物ごとの構成
少しづつ明かされていく真実を、読者にも分かるように心の声などを使ってパズルのピースを散らし、形を作っていくのが気持ち良かったです。
始めは大阪弁の2人の目線で始まりましたが、次には百瀬であったり、また時には野呂さんだったりなどなど・・・あらゆる人の目線で描かれていて、事件が少しづつ明らかになっていくのが楽しめました。
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