アメリカン・ニューシネマの輝ける金字塔 「俺たちに明日はない」 - ボニーとクライド/俺たちに明日はないの感想

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アメリカン・ニューシネマの輝ける金字塔 「俺たちに明日はない」

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.5

アメリカン・ニューシネマの夜明けを告げる、アーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」は、残酷さと美しさに満ちた、不思議な魅力を持つ作品だ。

この映画は、1930年代に実在した二人の若いギャングが主人公だ。アメリカ南部の田舎町で、刑務所帰りの若者クライド(ウォーレン・ベイティ)とウェイトレスのボニー(フェイ・ダナウェイ)が知り合い、気ままな強盗の旅を開始する。

ボニーは、けちなかっぱらいにすぎなかったが、可愛い金髪娘に"ええカッコ"をして見せたくて、次第に犯行はエスカレートしていくのだった。といっても、アメリカ中に千数百万人の失業者があふれていた、どん底の大不況の時代だ。破産した農民は、短銃を突きつけられても怖がらないし、凄んで押し入った銀行でさえ、倒産していて金庫の中は空っぽなのだ。

映画は、そうした暗い世相を背景にして、この幼稚なチンピラ強盗の無軌道ぶりを、ユーモラスにとらえて見せる。だが、ガソリン・スタンドで拾った感化院出の少年C・W(マイケル・J・ポラード)や、クライドの兄夫婦(ジーン・ハックマンとエステル・パーソンズ)を仲間に加えてからは、銀行強盗も本格化していくことになる。

機関銃から手投げ弾まで使って、追跡し包囲する警官隊と、バリバリやり合うのだ。舞台の演出家出身の精力的なリアリズム派のアーサー・ペン監督の強烈な演出が見ものだ。その一方で、映画は追いつめられ疎外されていく若者たちの、"惨めな青春像"を鮮やかに描き出していると思います。

実は性的不能のクライドと、でも離れられないボニーとの、切ないまでに求め合う、いたましい愛の姿------。無知で衝動的で、まるで罪悪感を持たず、だが追われる恐怖と孤独に怯えて、はかない平和な生活を夢見る二人のいじらしさ。

危険を冒して、ボニーが老母や家族たちと野外で再会する場面は、荒涼とした風景に、"冷たい詩情"が吹き抜けて、あまりの切なさに、私の心の琴線を震わせます。

そして、ラスト。ようやく結び合えた二人が、澄み切った日射しの郊外で、やにわに警官隊の機銃の猛射を浴びて絶命するショッキングなシーンは、凄みのある美しさに満ちていて、映画史に長く残り、語り継がれていく名シーンになっていると思います。

アーサー・ペン監督は、彼らを弁護も賛美もしていません。だが、病める時代の底辺の人々にとっては、いわば"時代の代弁者"であった"哀れな英雄像"を、見事に浮彫りにしていると思います。

懐古趣味と新鮮な映像感覚との奇跡的な調和が実現したこの映画は、まさしく、アメリカン・ニューシネマの輝ける金字塔になったのです。

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