男目線でも女目線でも楽しめる逸品 - ハレ婚。の感想

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漫画レビュー数 3,135件

ハレ婚。

4.504.50
画力
5.00
ストーリー
4.00
キャラクター
4.75
設定
4.50
演出
4.00
感想数
2
読んだ人
2

男目線でも女目線でも楽しめる逸品

4.54.5
画力
5.0
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
4.5
演出
4.5

目次

夫婦の概念を覆す制度

少子化対策のために一夫多妻制を推奨するハーレム婚、略してハレ婚なわけですが。昔は日本も一夫多妻制で、それは男性が戦死することが多いという時代背景があったからこそ成り立っていた制度で、今現在草食系男子、絶食男子が増える中、喜ぶ人は一定の人数で留まり鼻で笑われそうな制度です。実際無茶苦茶だな、と思いました。設定がありきたりで、借金があるから仕方なく身売りのようなハレ婚をするところから始まります。しかも、主人公の小春は不倫相手という立場が嫌になって地元へ帰ってきたにもかかわらず、結局は不倫のような人間関係に至ります。もうそういう運命だった小春は純粋馬鹿で、恋に夢見る女の子です。そして、その純粋さがあるからこそ一夫多妻制という複雑な夫婦関係を受け入れ、納得し、自分の気持ちとも向き合うことができたのだと思います。街コンのテレビ番組をみたことがありますが、人気の男性には十数人女性が家に集まります。選り取り見取りです。しかし、選ぶのはたった1人。海外では一夫多妻制を認めている国がありますが、日本では一途や添い遂げることを美徳としています。その中でハレ婚という未来的な制度を作り出すなんてやっぱり漫画だなと思うと同時に、もしかしたら男性の減少が進んでこの先あり得る画期的な条例で、もう少し強制力のある制度になるのではないか、と想像してしまいます。しかし、やはり今この時にその条例が発表されれば、不倫を肯定するとんでもない条例だなあと、多くの既婚女性は夫の動向が気が気じゃなくなったと思います。

龍之介の変態イケメンっぷりがたまりません。

12年間の片想いを実らせ、小春の父親の願いも叶え、小春自身のコンプレックスも克服させてしまい、かつ、ゆずを満足させてまどかの人生に寄り添った変態イケメンの龍之介は、実はただのイケメンだなあと読み進めていくうちに思いました。夫婦の営みはそれはそれはお盛んで、今時珍しいほどの肉食系です。さすがヤングマガジンと思うほどサービスカットふんだんな漫画です。しかし、それだけではないところが人気の要因だと思います。一人ひとり伊達家に集まった人たちの人生が複雑で深みがあります。ギャグ的要素とシリアスな要素がいい塩梅で流れる上っ面だけのエロ漫画ではないなと。ゆずの言葉ではっと我が身を振り返させられたシーンがありました。小春がハレ婚に納得できず、龍之介との夫婦生活も拒んでゆずに愚痴を言う場面があるのですが、ゆずは小春を叱ります。妻である努力も必要だと、もしこれが逆の立場で、働くのも抱かれるのも出ていくのも嫌で何もしない妻なんていらないだろうと。ハッとしました。確かに、妻の立場でしか夫婦を見つめることしかしてきませんでした。しかし、夫婦は妻もいて、夫もいて初めて成り立つもので、龍之介は小春のために借金を肩代わりし、小春が大丈夫だと思うまで抱くことを我慢します。時々意地悪をしますがそれはもう夫婦のスパイスとして呑み込みます。働かないでも生活が成り立っているので、龍之介は夫としての役割を果たしています。いつまでも子供のように拗ねている小春を大事にしています。新婚初夜のときも、たまらず獣になりかけたところで居間へいく龍之介でものすごくときめきました。私は変態でもなんでも100%愛情をかけてくれる龍之介が好きです。たまりません。

夫婦というよりかは恋人同士に近い家族

作者さんが女性なので、エロティック満載ですがとても登場人物の感情が丁寧に描かれています。女性目線だからこそ女の子の感情の動きが細やかで、どこでどう言う風に嫉妬してそれを飲み込もうとして、切なくて悲しくて、それでも寄り添いたくて、こう言う時に男の人にこうしてほしいという場面がふんだんに盛り込まれています。女性でもこんな風に抱きとめられたら心を許しますよ、と始終龍之介と小春の愛情の育みにキュンキュンさせられっぱなしです。まさにツンデレの申し子。素晴らしいほどに単純で純粋で無鉄砲で、龍之介は心配しています。ゆずは男と遊んでも大丈夫だけど、小春は心配だと常に目をはっています。小春が家出した時に同級生の武田が危険な雰囲気をかもし出します。それをキタローのように感知し、小春を守ろうとする龍之介はだいぶかっこよかったですね。そして晴れて両想いとなるわけですが、告白の仕方も、大感激をして涙する龍之介を見る小春の嬉しそうな表情も、可愛くて可愛くてたまりません。男性は小春のような女の子がいいのでしょうか。少しくらいお馬鹿ちゃんで危なっかしい方が男性にとっては目が離せないいつまでも刺激的でいいのでしょうか。NON先生のキャラクターはどれも生き生きしていて素晴らしいですね。

消えない傷跡をこの世から消し去ることで消えない過去

好きな人から離れるときの身を裂かれるような気持ちも、子どもが欲しいのに埋めない自分の臓器を摘出すると決断したときの気持ちも、誰にも言わずに自分の中に収めている。まどかはどこで休めるんだろう、どうしたら報われるんだろうと彼女のこれからがどうか安らかであるようにと願わずにはいられない。自分を傷つけて、苦しめて、やっと龍之介という存在を見つけたのに、彼は自分だけのものにはならない。ハレ婚で一番辛いのはまどかで、でも、龍之介の望んだことだからと自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先させてしまう。これからは、自分の気持ちをまず第一に考えて、自分が幸せになるように進んでいって欲しいです。これはもう誰もが思っていると思います。エヴァンゲリオンの綾波レイのような存在感だったまどか。どうかこれからたくさん幸せを掴んで欲しい。自分の感情を表に出して欲しい。嫉妬して疲れたと、もっとたくさん甘えて欲しい。龍之介はまどかを愛していたと思うけど、どこか保護者のような一面があって、この2人の関係だけ特殊で、だからこそ続けることが困難で離れなければならなかったんだと思います。私を自由にしてほしいと願ったまどかは、ハレ婚で自由さがなかった。自分の気持ちが窮屈で辛くて、どうしようもなかったんだなあと。もし、龍之介と普通の一夫一妻の夫婦だったら、きっと今度は龍之介が過去に縛られたまま手足を伸ばせない人生を歩んでいたんだろうなと思いました。どっちにしろ、出会い方に影があるので、どうしたってそれを拭えない関係だったんだろうなと。

うららかな女子高生

まさかまさかの美少女まで出てきます。そしてこのうららちゃんに限っては普通のラブコメディのように話が進んでいきます。そして叶わぬ恋を抱いて前に進みます。ハレ婚は夫婦、結婚が主軸なので、やはりうららちゃんの相手も既婚者です。ましてや高校の担任の先生です。禁断中の禁断を相手にしてしまったわけです。若さは眩しいですね。今時の高校生がどんな恋愛をしているかは知りませんが、先生に憧れのような恋愛感情を抱いたことがあるので、その無謀さもわかります。自分に勝ち目がなくて、叶わぬ恋をしていると自分自身よくわかっています。その中で、相手にまっすぐに気持ちを伝えて、最後はうららちゃんなので腹黒さはないものと思いたいですが、先生を好きなまま結婚しますと宣言します。これはなかなか出来たことじゃないですよ。相手には告白だけでも強烈な印象を与えるのに、自分を好きなまま結婚して死ぬまでこの恋を貫き通すなんて言われてしまっては、世の男性陣いかがでしょう。この言葉は美少女に限ると思いますが、男性の妄想炸裂している話だったと思います。それでも女子目線で胸キュンで、文句なしの話でした。

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魅力的なヒロインたちについて好き放題考察

現在11巻まで読破していますので、11巻時点での内容の考察です。ハレ婚。ですがとにかく、絵が美しく魅力的ですね。途中まで作者さんが女性であることを知らなかったのですが、どうりで、と納得しました。皆が取り合う主人の描き方も絶妙で、女性から見ても「これは取り合いになるな」と魅力的な存在だと感じます。これが、よくあるダメでさえなくて女性経験もあまりないけどいい人キャラみたいな男性を美女が取り合うとかだったら、非現実的すぎて惹きこまれなかっただろうなと思います。 それでは、順を追って魅力的なヒロインたちについても考察していきましょう! 自分の人生を自分で引き受ける凛々しいまどかが刺さった個人的にわたしは、まどかさんのことが大好きだったのですが、本当にもう出てこられないのでしょうか?やっぱり行くところなくて戻ってきちゃったなんてことにならなさそうなところが、またかっこよくて彼女の魅力なのですが、登場...この感想を読む

4.54.5
  • バタークリームバタークリーム
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  • 2135文字
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