ヤマトナデシコ七変化への見識
ヤマトナデシコ七変化のコンセプト
いわゆる女の子のあこがれの、シンデレラストーリー、マイフェアレディストーリーではなかろうか。さえない女の子が、美しく変身していく物語は、一般的に、女の子ならば、心の底のどこかで願望として、秘めているのかもしれない。皆、誰かの手で、自分を美しく変身させてほしい。みにくいアヒルの子が、美しい白鳥に変身して、飛び立ちたい。そんな想いを、女に生まれついたのならば、持っている人も、少なくはないかと、思われる。この漫画は、失恋後、ゴースト少女となったスナコが、4人の美男の手によって、美しく変身してゆく姿が描かれているのだが、主人公スナコは、ゴースト少女と設定されているものの、昔の日本の怪談に出てくるような、陰湿さは感じられず、映画のゴーストバスターズのマシュマロマンのように、ユーモラス、かつ、パワフルであるよう、演出されている所に、作者の創意工夫が、見えてくる。中々手ごわいシンデレラで、周囲を手こずらせ、レディーへの道のりは、遠く感じられ、美しくなっていくどころか、いつも4人の美男を、手玉に取って、いつものマイペースな、ゴースト少女に、還っていく、というストーリー建てに、なっている。スナコ自身が、このままの自分でいたいという、想いが強く、かなり強情なシンデレラであるのだが、普通の女の子も、変わりたいが、今の自分を、否定出来ない、変わっていく事に、抵抗を感じる。などのジレンマに、おちいる方も、いなくはないかと思われる。女子にとっての、不変のテーマである。読後は、一話完結方式なので、毎回のスッキリ感があり、続きを読まなくてはという、ストレスから解放され、その観点からも、長期連載へと、つながったのではないかと、見受けられる。すでに、完結しているのだが、作品の建築・構成が、しっかりと、考え込まれているので、今読んでも、安定、かつ、見る者を引き込む面白さを、提供してくれる、秀作である。
主人公と脇役を反転
通常、少女漫画のヒロインは、美しく、明るく、強く、前向きで、その上、ガッツもあり、と、読者がこうなりたい姿を、描く事が多い中、そのヒロイン型を、脇役の乃依に持ってきている。そして、そのヒロインの、引き立て役かと思える、暗く、過去の失恋を、引きずり、ゴースト化した少女、スナコを主人公にしている所、この辺の着眼点が、新しい。通常の少女漫画だと、主人公の明るい乃依が、脇役のスナコを、励ます設定が多いかと、思われるのだが、このゴースト化した主人公スナコは、非常に強く、たくましく、どちらかと言うと、男性的に、女の子の憧れ、男装の麗人のように、ヒロインではなく、ヒーローのように、カッコ良く描かれている。見ようによっては、ヒロインが乃依で、ヒーローがスナコと、2人で1つ、もしくは、2人でかみ合って、この物語を支え合っているかのようにも、見受けられる。途中で、蘭丸の恋愛の相手、お嬢様のたまちゃんも、ヒロインの1人として、含んで登場している。本来ならば、この、蘭丸と、たまちゃんでの、ラブストーリーでも、立派な物語が出来るのでは、なかろうか。通常のヒロインが脇役、脇役がヒロインに。逆転の発想が成功している、良い事例である。
主人公が2人
主人公スナコは、ゴースト少女と、一般的なヒロインには無い、特異なキャラクターで、登場している。そのままだと、呪いの物語、暗闇一色になってしまい、単に恐ろしいだけで、人を引き付ける魅力に欠けているかと思われるのだが、そこでスナコは、2体に、描き分けられている。大きいスナコと、小さいスナコ。大きいスナコの方は、暗闇の中で生き抜く、シリアスさと、かつ、男性的な魅力、パワーを併せ持つ、しかしながら、今の自分を否定出来ない、今の自分のままでいたい。変わっていく事に、抵抗を持つ。人の心にありがちな繊細な面も、重ねて持っている人物であり、より人間的なスナコに見える。反して、小さい3頭身のスナコは、全く別のキャラクターで、描かれている。大きいスナコの暗闇を、吹き飛ばす様な、見ただけで、思わず笑える様な、姿かたちで登場し、物語を一変させる。そして、ほのぼのとした、あたたかさ、手をかざして感じる、人肌のぬくもり、プラス、アホっっぽく笑える点、そうした、全く性格の異なった、大きいスナコと、相反する、小さい3頭身のスナコ。このコンビで、一人二役の、掛け合い漫才のように、入れ代わり、立ち代わり登場し、ズッコケコンビ、凹凸コンビのようでもある。そうした、1体を2体に、描き分ける事により、まるで、主人公が2人いるように見え、ユーモアあふれる、作者の意図が、見えてくる。副主人公は、4人の美男なので、2:4での、話の展開となり、その事によって、話の層に厚みが増し、大きいスナコと、小さいスナコ。この2人と、行きつ戻りつ、4人の男子との、からみに、毎回、愛と笑いと、怨念に満ちた、ユーモラスな物語に、新鮮な感動を、感じられる点、こうした事から、読者に飽きられる事なく、長きに渡って、愛された物語に、成長していったかと思われる。
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