菊池亜希子好き、本好きには、たまらない - 森崎書店の日々の感想

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森崎書店の日々

3.003.00
映像
3.75
脚本
2.75
キャスト
3.50
音楽
3.00
演出
4.00
感想数
2
観た人
3

菊池亜希子好き、本好きには、たまらない

3.03.0
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
4.5
音楽
3.0
演出
4.0

目次

菊池系女子の神映画

主人公を演じる菊池亜希子ちゃん、文化系・喫茶店系・大福系、女子のカリスマだ。そんな菊池信者には、神保町の古本屋という似合いすぎるスポットでゆるりと過ごす、まるで普段の彼女を見ているようなこの映画は最高にウケるだろう。

菊池系女子のための映画。逆にいえば、大きなできごとは起きないし、流れる時間はゆったりだし、神保町の日々をのぞいてみたいという人じゃないと、少し退屈かもしてない。でもそれでいい。そうゆう映画なのだし、キレイめOLと付き合いたい男子、菊池亜希子みたいな子と付き合いたい男子、どちらにも好かれることなんてできないし、しないほうがいい。

要は再生映画

森崎書店の日々は、八木沢里志の同名小説を映画化したもの。主人公がそんな菊池系女子ということ、舞台が神保町ということをのぞけば、まあよくある困難や後悔や悲しみを乗り越えて、一歩新しい自分をスタートする再生映画でもある。そんな物語には、再生のきっかけとなる人との出会いが不可欠であって、森崎書店の日々の場合は、それがいい歳して結婚もせず古本屋をやっているオジであり、オジの暮らす神保町に住み集まる人々だったということだ。

オジのところに来る前の菊池亜希子は、どうやら本には無縁の生活をしていたらしい。職種こそおしゃれだけれど、いわゆる普通のOLだ。神保町で暮らすようになって、私たちの知る菊池亜希子らしい彼女になっていくのだ。菊池亜希子を多少知っている人にしてみれば、神保町に来る前の彼女は少しいムリしている感があり、古書店で過ごす彼女のほうが断然しっくりくる。

オジの存在

いうまでもなくこの物語のキーパーソンはサトルという内藤剛志演じるオジだ。親類の間では変人として通っていたオジは、ひょうひょうとして、つかみどころがない。彼女がこれまで社会で接してきた人々とは、まったく違う。浮世離れ感が漂っている。そして若い頃、自分だけの人生を探し求めて世界中を旅していたという。そしてとにかく優しい。表情も仕草も行動も。

このオジと神保町での暮らしにじょじょに影響され、居心地の良さを感じるようになるのだけれど、最後は本屋になる!とか喫茶店で働く!とかしたところもいい。彼女は彼女なりの人生を見つけるのだ。

最高の人生のひとやすみ

今までの場所と距離を持つというのは、再生にうってつけの方法だ。人によってそれは海外だったり、田舎町だったり。菊池系女子には、神保町は理想の場所に思えた。きっと誰もが神保町にあんなすてきな本屋をやっているオジがほしいなと思うし、会社を辞めてしばらく居候して、近所の喫茶店の常連になって、文化的な友人をつくって、日々あの界隈をふらふらとしたい。そこに来ることになったきっかけが誰がどう見てもダメ男との別れというのはしゃくだけれど、ある一定の女子たちの理想の休息がつまった物語だ。


それにしてもなぜ、彼女はあんなダメ男を好きになってしまったのか。そんなこと彼女にもわからないと思うけれど、観ているほうもわからない。「あんな男」過ぎることに気がついて、そんな男になぜ私が…と悲しさよりも自分への情けなさ勝ってしまったのだろう。そう、菊池系女子は不器用なのだ。

神保町に行きたくなる

菊池亜希子好きにもたまらないけれど、もちろん本好きにもたまらない映画だ。買い付けの様子などふだんは見られない古書店の裏側を見ることができるし、映画の中で古書店を訪れる本好きの本好き話も魅力だ。そこに私のオジはいないのだけれど。そこで森崎書店の日々が続いているような気がするし。ああやって天井まで本に埋まった部屋がどこかにある気がするし、菊池亜希子ふんする主人公に会えるような気がしてくる。観終わると神保町に行きたくなる。

お客さんにまったく干渉せず好きなだけ居させてくれる古本屋のように、この映画のこの街には誰かが誰かを気にし過ぎず自分のペースで日々を暮らす空気が流れている。東京の真ん中にあるのに、ぜんぜん東京らしくない。不思議な街だとつくづく思った。恋に失敗した女子に限らず、今日も神保町に趣きひと息いれいている人々がいるだろう。

オジが言った、「神保町という街は本と同じ。開けてみるまではすごく静か。でも開いてみるとそこには途方もない世界が広がっている。そして読み終えて閉じると、またシンと静かになる。」という言葉もこの街をそしてこの物語をとてもいいあてている。本は読む人のペースで読み進めることができる。進むのを待ってくれる。そして本を開くという誰でもできる行為だけで、別の場所へ行き、はじめての経験をし、閉じると少し新しくなった自分の場所(心)に戻ってこれる。彼女にとっても森崎書店の日々のような効果があるともいえるかもしれない。神保町に行って、お気に入りの古書の見つけて、喫茶店で読みふけりたくなる。地味で誰でもできそうな休日の過ごし方が、とてもかっこよくてキラキラしたものな気がしてくる。

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